辞書 | 品詞 | 解説 | 例文 | 漢字 |
---|---|---|---|---|
日本国語大辞典 | 名詞 |
[ 一 ] 天体の月。また、それに関する物、事柄。 ① 地球にいちばん近い天体で、地球のただ一つの衛星。半径一七三八キロメートル、玄武岩質で組成され、大気はない。二七・三二日で自転しながら、約二九・五三日で地球を一周し、その間、新月・上弦・満月・下弦の順に満ち欠けする。太陽とともに人間に親しい天体で、その運行に基づいて暦が作られ、神話、伝説、詩歌などの素材ともされる。日本では「花鳥風月」「雪月花」などと、自然美の代表とされ、特に秋の月をさすことが多い。太陽に対して太陰ともいう。つく。つくよ。月輪。また、ある天体の衛星のこともいう。→補注( 2 )。《 季語・秋 》 |
万葉集(8C後)一・八熟田津に船乗りせむと月待てば潮もかなひぬ今は漕ぎいでな」 | 月 |
② ①の神。日本の神話では月夜見尊(つきよみのみこと)をいう。 | ||||
③ ①の光。月影(つきかげ)。月光。 |
源氏物語(1001‐14頃)明石月入れたる槇の戸口けしきばかり押しあけたり」 長秋詠藻(1178)上月冴ゆる氷のうへにあられ降り心くだくる玉川のさと」 |
|||
④ ( 古くは、それが①の満ち欠けに関係があると信じられたところから ) 月経。月のさわり。月のもの。月水。 | 古事記(712)中汝が著(け)せる襲(おすひ)の裾に都紀(ツキ)立ちにけり」 | |||
⑤ 香木の名。分類は伽羅(きゃら)。香味は苦甘辛。六十一種名香の一つ。 | 建部隆勝香之筆記(香道秘伝所収)(1573)月(ツキ)、上々伽羅、聞いかにも古くかろく花やかに御座候」 | |||
⑥ 紋所の名。①をかたどり、また①に種々の物を配して図案化したもの。月に星、連子に月、半月、三日月、霞に月、月にほととぎす、月に水など。 | ||||
⑦ ( 「月の句」の意 ) 連歌、俳諧で、①や③をよんだ句。月の定座では、①や③の句をよむことが原則になっている。 | 俳諧・去来抄(1702‐04)故実卯七曰く、蕉門に宵闇を月に用ひ侍るや」 | |||
⑧ ( 「謡曲・松風」の「月は一つ、影は二つ満つ汐の夜の車に月を載せて」に拠ったしゃれ ) 下級の遊女である端女郎(はしじょろう)の等級を表わす名。近世、大坂新町で、揚げ銭一匁のものをいう。塩(しお)、蔭(かげ)より下位。 | 浮世草子・好色万金丹(1694)五難波にては、端の女郎も汐・影・月(ツキ)などやさしくいふに」 | |||
⑨ 江戸の吉原の主要な紋日(もんび)で、八月十五夜と九月十三夜とをいう。また、その夜の月。この夜の月見に多くの客を寄せようと、遊女は苦心する。 | 雑俳・柳多留‐三〇(1804)月の前かこち顔なるうれのこり」 | |||
⑩ 近世の菓子「最中月(もなかのつき)」の略。 | 雑俳・柳多留‐五一(1811)菓子屋には月女郎屋は朝日也」 | |||
⑪ 商人が用いる数の符牒。 (イ) ( 陰暦八月を月見月(つきみづき)というところから ) 八。 |
||||
(ロ) ( 「つきよこ(月横)」の略。宿屋・芸人仲間が用いる ) 四。 | ||||
[ 二 ] 時間の単位、暦法の月。 ① [ 一 ]①が地球を一周する時間。基準点の取り方によって朔望月(さくぼうげつ)・分点月・恒星月・近点月・交点月がある。ふつう一月と称するのは、朔望月。約二九・五三日を基準にしたものをいう。古来、種々の暦法があって、そのきめ方はひととおりでない。太陰暦では、大の月を三〇日、小の月を二九日とするが、大小の置き方は平朔法と実朔法とで異なる。太陰暦に二種あり、太陽年との調和を考慮しないものを純太陰暦、または太陰暦という。世界で広く用いられたのは太陰太陽暦で、太陽年との調和をはかるために閏月(うるうづき)を置き、その年は一三か月となる。日本の旧暦はこれであった。太陽暦では、朔望月とは無関係に一太陽年を一二分してひと月とする。今日世界で広く採用されているのは、一、三、五、七、八、一〇、一二月を大の月、三一日とし、四、六、九、一一月を小の月、三〇日とし、二月のみは平年二八日、閏年二九日とする法である。年と日との中間の単位。また、その一単位。「ひと(一)」「ふた(二)」「み(三)」などの和数詞につき、また古くは「いつか(一箇)」「にか(二箇)」「さんか(三箇)」などのあとにつけて用いる。「ひとつき」「さんかつき(三箇月)」など。 |
古事記(712)中あらたまの 年が来経(きふ)れば あらたまの 都紀(ツキ)は来経(きへ)ゆく」 サントスの御作業の内抜書(1591)二コウズイ jǔiccatçuqino(ジュウイッカツキノ) アイダ セカイニ タタエテ」 |
|||
② [ 二 ]①を一年に配し、それぞれに固有の番号または名称を与えたもの。 |
古事記(712)下其の年の其の月、天皇の命を被(かがふ)りて」 土左日記(935頃)承平五年二月一日このつきまでなりぬることとなげきて」 |
|||
③ [ 二 ]①のうち、妊娠一〇か月目の産月(うみづき)、八か月を期限として質物の流れる八か月目、あるいは喪(も)の明ける最後の一か月などのように、機の熟する期間。あることが起こり、またはあることが行なわれるのに適当な期間。 |
讚岐典侍(1108頃)下月も待たずぬげと宣旨くだるもあやし」 俳諧・犬子集(1633)九あらいとおしやながさるる人 有明の月にもたらぬ子を生て〈慶友〉」 |
|||
④ 毎月の忌日に行なう死者の供養。 | 讚岐典侍(1108頃)下三月に成ぬれば、例の月に参りたれば」 | |||
⑤ 「つきがこい(月囲)」の略。 | ||||
[補注]( 1 )月は、「つき」のほか、古来さまざまに呼ばれた。つく、つくよ、つくよみ、つくよみおとこ、つきひと、つきひとおとこ、ささらえおとこ、かつらおとこ、ののさま、つきしろ、月輪、月霊、月魄(げっぱく)、月陰、太陰、陰宗、陰魄、玉輪、玉魄、玉盤、月兎(げっと)、玉兎、陰兎、玉蟾(ぎょくせん)、蟾蜍(せんじょ)、蟾宮、蟾窟(せんくつ)、蟾兎、桂月(けいげつ)、桂輪、桂魄、桂窟、桂蟾、姮娥(こうが)、嫦娥(こうが・じょうが)、姮宮(こうきゅう)、嫦宮(こうきゅう・じょうきゅう)など。 ( 2 )現代では、地球以外の惑星(わくせい)に付随する衛星をもいい、「人工の月」の意で、人工衛星をさすこともある。 |
||||
広辞苑 | 名詞 | ①地球の衛星。半径1738キロメートル。質量は地球の約81分の1。大気は存在しない。自転しつつ約一カ月で地球を一周し、自転と公転の周期がほぼ等しいので常に一定の半面だけを地球に向けている。太陽に対する位置の関係によって新月・上弦・満月・下弦の位相現象を生じる。日本では古来「花鳥風月」「雪月花」などと、自然を代表するものの一つとされ、特に秋の月を賞美する。太陰。つく。つくよ。月輪。〈[季]秋〉。 |
万葉集1「 古今和歌集秋「―見ればちぢに物こそ悲しけれ」 |
月 |
②衛星。 | 「木星の―」 | |||
③月の光。 |
万葉集7「春日山おして照らせるこの―は妹が庭にも |
|||
④暦の上で一年を一二に区分した一つ。それぞれ各種の名称をもって呼ぶ。太陽暦では一・三・五・七・八・一〇・一二の各月を三一日とし、他は三〇日、二月のみを平年二八日、閏年二九日とする。太陰暦では二九日または三〇日を一月とする。 | ||||
⑤一カ月の称。 |
源氏物語松風「―に二度ばかりの御契りなめり」。 「―払い」 |
|||
⑥月経。 | 古事記中「おすひの裾に―たちにけり」 | |||
⑦紋所の名。月の形を描いたもの。 | ||||
⑧香の名。 | ||||
⑨近世、大坂新町で、揚げ銭一匁の端女郎。がち。 | ||||
大言海 | 名詞 |
〔次ノ義、光彩、日ニ (一){ |
萬葉集、十七
三十五
「ヌバタマノ、都奇ニムカヒテ、時鳥、鳴クオトハルケシ、里トホミカモ」 同、同 五十 「ススノ海ニ、朝ビラキシテ、漕ギクレバ、長濱ノ浦ニ、都奇照リニケリ」 |
月 |
(二) |
「木星ノ月」土星ノ月」 |
検索用附箋:名詞天文