つつ(乍)

辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 助詞 〘 接助 〙 ( 活用語の連用形を承けて )
① 同じ動作の反復や継続を表わす。
万葉集(8C後)五・八八〇「天離(ざか)る鄙に五年住まひ都々(ツツ)都のてぶり忘らえにけり」
古今和歌集(905‐914)雑下・九九一・詞書「筑紫に侍りける時に、まかり通ひつつ碁うちける人のもとに、京に帰りまうで来て遣はしける」
② 二つの動作が並行して行なわれることを示す。ながら。 古事記(712)上「佩(は)かせる十拳(とつか)劔を抜きて、後手(しりへで)に布伎(ふき)都都(ツツ)〈此の四字は音を以ゐよ〉逃げ来るを、猶追ひて」
平家物語(13C前)灌頂「上人是を給はって、何と奏するむねもなくして、墨染の袖を絞りつつ、泣々罷出でられけり」
③ 単純な接続を表わす。「て」とほぼ同じ。 大鏡(12C前)六「おほかたそのほどには、かたがたにつけつつ、いみじき人々のおはしまししものをや」
浄瑠璃・惟喬惟仁位諍(1681頃)四「いざ此上はいづ方へも一先御供申しつつ、時節を窺ひ申すべし、いざさせ給へ」
[語誌]( 1 )①の用法中の反復を表わす場合には、動作主体が複数であることによる反復も含まれる。「万葉‐八二八」の「人毎に折りかざし都々(ツツ)遊べどもいやめづらしき梅の花かも」、「土左‐承平五年二月七日」の「なかりしもありつつ帰る人の子をありしもなくてくるが悲しさ」など。
( 2 )反復・継続の用法が和歌の文末に用いられると、多く詠嘆が感じられる。「万葉‐四四五二」の「少女らが玉裳裾引くこの庭に秋風吹きて花は散り都々(ツツ)」、「古今‐春上」の「君がため春の野に出でて若菜つむ我衣手に雪は降りつつ〈光孝天皇〉」など。
( 3 )「つつ」に本来逆接の意があるわけではないが、前後の文脈から「…にもかかわらず」「…ながら」と訳される場合がある。「万葉‐四二〇八」の「吾が幾許(ここだ)待てど来鳴かぬ霍公鳥独り聞き都追(ツツ)告げぬ君かも」、「洒落本・猫謝羅子」の「しらねへおいらでもねへ。それをしりつつたのむのだ」など。
広辞苑 助詞 (接続助詞)(動詞および動詞型活用の語の連用形に付く。その付いた語の内容が幾つもあることを示すのが本義。反復・継続などの意味になる)
①同じ動作がくりかえされる意を表す。何度も…する。
万葉集17「春花の移ろふまでに相見ねば月日()み―妹待つらむそ」。
徒然草「さるべき日ばかりまうで―見れば」
②動作が継続または進行中である意を表す。現代語では「…つつある」の形となることが多い。ずっと…する。…し続ける。 万葉集5「梅の花散らくはいづくしかすがにこの城の山に雪は降り―」。
新古今和歌集春「大空は梅の匂ひに霞み―曇りも果てぬ春の夜の月」。
「事態は改善され―ある」
③それが続いている間に、次も行われることを表す。…ながら、また…もする。 古事記中「歌ひ―かみけれかも舞ひ―かみけれかも」。
平家物語灌頂「墨染の袖を絞り―泣く泣くまかり出でられけり」。
「道を歩き―本を読む」
④複数の人や物が同時に同じ動作を行う意を表す。それぞれが…する。あちこちで…する。 万葉集5「人毎に折りかざし―遊べども」。
伊勢物語「水の上に遊び―、魚を食ふ」。
源氏物語桐壺「上達部上人などもあいなく目をそばめ―」
⑤前を済ませて、続けて次をする意を表す。…しておいて、それから。…て。 平家物語10「念仏百反ばかり唱へ―、南無と唱る声と共に」。
浄瑠璃、公平誕生記「本望を達し―めでたく帰国おはしませ」
⑥先行する動作・状態に矛盾した事態になる意を表す。…ながら。にもかかわらず。 洒落本、猫洒落誌「それを知り―たのむのだ」。
「改善を望み―、こんな事態に到ってしまった」「悪心いと知り―も、つい手を出す」
大言海 天爾遠波 〔現在完了ノ意ヲ云フ助動詞ノつヲ重用セル語〕
(一)第三類ノ天爾波。動詞ノ閒ニアリテ、コノ事ヲシナガラ、彼ノ事ヲモスル意ヲ云フ語。ナガラ。
古事記、上 三十二 走乍讀度 (ハシリツツヨミワタリ)
神功紀、十三年二月「歌ヒ 菟菟 (ツツ)()ミケメカモ、コノ(ミキ)ノ、アヤニウタタノシ、ササ」
齊明紀、四年五月「飛烏川、(ミナギラ) 都都 (ツツ)、行ク水ノ、(アヒダ)モナクモ、オモホユルカモ」
源、十八、松風 十一 「イクカヘリ、行交フ秋ヲ、過シつつ、浮木ニ乘リテ、我歸ルラム」
後撰集、七、秋、下「モミヂ葉ヲ、ワケつつ行ケバ、錦着テ、家ニ歸ルト、人ヤ見ルラム」
「行キつつ見ル」
(二)同ジ動作ノ繰リ返サルルニ云フ語。卽チ、降リツ降リツノ類ノ如シ。 萬葉集、十四 廿一 「シマラクハ、ネ 都追 (ツツ)モアラムヲ、イメノミニ、モトナ見エ都追、アヲネシナクル」
(三)動作ノ現在進行形ヲアラハスタメニ用ヰラルル語。

検索用附箋:助詞

附箋:助詞

最終更新:2025年03月29日 15:30