つみ(罪)

辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 名詞 ① 規範、法則を犯し、その結果とがめられるべき事実。また、そのような行為に対する責任の観念をいう。
(イ) 神祇(じんぎ)信仰上の禁忌(きんき)を破ること。神の怒りに触れ、その結果災いや祟(たた)りを招くような行為をすること。また、その行為。行為に対する罰。
古事記(712)中「生剥、逆剥、阿離、溝埋、屎戸、上通下通婚、馬婚、牛婚、鶏婚の罪の類を種種求ぎて、国の大祓為て」
万葉集(8C後)四・七一二「味酒を三輪の祝がいはふ杉手触れし罪か君に遇ひがたき」
(ロ) 法律、道徳、習慣など、社会生活の規範となる法則に背反すること。制裁を受けるべき不法、または不徳の行為があること。犯罪。罪悪。罪過。 日本書紀(720)白雉元年二月(北野本訓)「天の下に赦(ツミゆる)して、民の心を悦び使めたまふべし」
竹取物語(9C末‐10C初)「つみの限はてぬれば、斯く迎ふる」
栄花物語(1028‐92頃)月の宴「みかどを傾け奉らんと構ふるつみによりて」
(ハ) 天、国家、王、上長など、権威あるものの意志に従わないで、反抗すること。権威を冒して、とがめられる行為の事実。 日本書紀(720)雄略一三年三月(前田本訓)「狭穂彦(さほひこ)が玄孫(やしはこ)歯田根(はたねの)命、竊(ひそか)に采女山辺小(こ)嶋子(こ)を八(をか)せり。〈略〉歯田根命、馬八(やつ)匹大刀八口(やつ)を以て罪禍(ツミ)を祓除(はら)ふ」
(ニ) 仏教で、本来の道理に反し、または戒律の禁制に触れる行為で、それによって苦果を招く悪業をいう。また、過去世から犯してしまった悪業。罪業(ざいごう)。 仏足石歌(753頃)「大御足跡を 見に来る人の 去にし方 千世の都美(ツミ)さへ 滅ぶとぞいふ 除くとぞ聞く」
(ホ) キリスト教で、神の定めに反し、神に背を向けること。また、アダムの犯した原罪。 どちりなきりしたん(一六〇〇年版)(1600)三「比こころはあくじとつみをのがれ」
② ①を犯したために受ける制裁。罰。刑罰。しおき。 日本書紀(720)仲哀元年閏一一月(熱田本訓)「其れ天を慢り君に違(たか)て何ぞ誅(ツミ)を免(まぬか)るることを得む」
③ 他人に不利益や不快感などを与える行為によって、怒り、恨み、非難、報復などを受けるようなこと。人に対して悪い事をした事実、またはその責任。 古事記(712)下「故、此の歌を献りつれば、其の罪を赦したまひき」
④ 人、あるいはものごとのとがめるべき点。欠点。短所。 源氏物語(1001‐14頃)若菜上「宰相の君は、よろづのつみをも、をさをさたどられず」
⑤ よこしまな気持、考え、欲望など。悪についての自覚。また、そのために迷い苦しむこと。→つみ(罪)が無(な)い 蜻蛉日記(974頃)中「つみもなくさりげもなくいふ、いふかひもなし」
形容動詞 他人を悲しませたり、苦しめたり、まどわせたりなどするような要素をもっているさま。無慈悲なさま。 吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉六「罪ですから可成早く出して安心させてやりたいのですが」
[語誌]罪は意識的に犯す行為で、罰が付随するのに対し、咎(とが)は無意識に犯す過失、あるいは欠点であるとみられる。
広辞苑 名詞 ①悪・(けがれ)(わざわい)など、神の禁忌をおかし、その報いを受けるべき凶事。 古事記中「 生剝 (いきはぎ) 逆剝 (さかはぎ)…の―の(たぐい) 種々 (くさぐさ)()ぎて、国の 大祓 (おおはらえ)をして」
②社会の規範・風俗・道徳などに反した、悪行・過失・災禍など。また、その行いによって受ける罰。 竹取物語「かぐや姫は―を作り給へりければ、…―の限り果てぬれば」。
「―をつぐなう」「―に服する」
③刑罰を科せられる不法行為。法律上の犯罪。 「―を犯す」
④仏教で、その教法を破る行為。あるいは、その人の背負っている罪業。 紫式部日記「―深き人は、またかならずしもかなひ侍らじ、前の世知らるることのみ多う侍れば」
⑤キリスト教で、神の言葉にそむくこと。 「―を告白する」
⑥悪いことや行いに対する自覚、もしくは責任。 蜻蛉日記中「―もなく、さりげもなくいふ」。
「子どもに―はない」
⑦無慈悲なこと。思いやりのないこと。 「―な事をする」
大言海 名詞 (ツツミ)ノ約、(ツツシ)むノ意〕
(一){人ノ惡行、穢レ、禍ナド、スベテ、厭ヒ惡ムベキ、()シキ事ノ稱。
大祓祝詞「天津罪止、畔放、溝埋、樋放、 頻蒔 (シキマキ)、串刺、生剝、逆剝、 屎戶 (クソト)、云云、國津罪止八、生膚斷、死膚斷、白人、胡久美、己母犯罪、己子犯罪、云云、許許太久乃罪出武」
(二)專ラ、政府ノ法律ヲ破ル所行。 源、十三、明石 廿七 「罪ニオチテ、都ヲ去リシ人ヲ、三年ヲダニ過サズ、ユルサレンコトハ、世ノ人モ、イカガ言ヒ傳ヘ侍ラムナド」
(三)神ニ對シテ、恐ルベク愼ムベキコトヲ、犯シタルコト。
(四)又、佛ノ敎法ヲ破ル所業。後ニ、其罰ノ果ヲ受クトス。罪業 源、廿二、玉蔓「イトつみフカキ身ニテモ、カカル世ニサスラフラン」
金葉集、三、秋、下「イノチヲモ、つみヲモ露ニ、タトヘリ、消エバトモニヤ、消エントスラン」
(五)人ニ對シテ、道德ニ背キタル行爲。

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最終更新:2025年04月13日 14:10