とく(解(自動詞))

辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 自動詞 ① 結ばれていたものがわかれ離れる。結び目がほどける。 万葉集(8C後)一四・三四八三「昼解けば等家(トケ)なへ紐のわが背なに相寄るとかも夜等家(トケ)やすけ」
枕草子(10C終)八九「赤紐のとけたるを、これ結ばばやと言へば」
② 腹立ち・不機嫌・恨み・悲しみなど、心のわだかまりが消える。 西大寺本金光明最勝王経平安初期点(830頃)三「一切の怖畏と煩悩と逼切とを、皆解(トクル)こと得しむるに、なりぬ」
浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉一「胸の鬱結(むすぼれ)も解けてむしゃくしゃも消え消えになり」
③ 心のへだてがなくなる。なれ親しむ。うちとける。 万葉集(8C後)一七・三九四〇「万代に心は刀気(トケ)てわが背子がつみし手見つつ忍びかねつも」
源氏物語(1001‐14頃)夕顔「六条わたりにもとけがたかりし御けしきをおもむけきこえ給てのち」
④ 安らかな心になる。安心する。 万葉集(8C後)九・一七五三「うれしみと 紐の緒解きて 家の如 解(とけ)てそ遊ぶ」
⑤ 役目・責任・契約・制限など、束縛となるものが除かれる。 古今和歌集(905‐914)雑下・九六三・詞書「左近将監とけて侍りける時に」
⑥ 防備・警戒・包囲などのためにとっていた態勢がゆるめられる。解かれる。 落語・出世の鼻(1892)〈禽語楼小さん〉「余が是を持って出で御固(おかた)めの解けるまで其の穴の中にもぐって居れ」
⑦ 組織されたものがばらばらになる。解散する。 黒い眼と茶色の目(1914)〈徳富蘆花〉四「兄の家塾が解けて以来、一人熊本に取残されて居たが」
⑧ 疑問や問題に対する答えが出る。また、よくわからなかった点がはっきりして了解される。 〔文明本節用集(室町中)〕
春潮(1903)〈田山花袋〉一一「この疑問は遂に解けた例しが無い」
広辞苑 自動詞 結ばれていたり、固まったり、閉じたり、不明だったりしたものが、ゆるめほぐれた状態になる意。
❶結ばれていたものがばらばらになる。
①結び目がほどける。
万葉集14「昼―・けば―・けなへ紐のわが背なにあひ寄るとかも夜―・けやすけ」。
「帯が―・ける」
解く
②しこりになっていた気持がさっぱりする。 万葉集2「磐代の野中に立てる結び松(こころ)も―・けず古思ほゆ」。
「誤解が―・ける」
③心がゆるむ。安心する。 万葉集17「よろづ世と心は―・けて吾がせこがつみし手見つつしのびかねつも」。
源氏物語空蟬「心―・けたる()だにねられずなむ」。
「警戒心が―・ける」
④制約や契約などの束縛が除かれる。 「禁が―・ける」
⑤警備などで固められていた態勢がゆるむ。 「包囲が―・ける」
❷職などから離れる。解任される。 源氏物語関屋「その弟の右近の尉―・けて御供にくだりしをぞ」。
「任が―・ける」
❸不明のものが明らかになる。
①答が出る。
「問題が―・ける」
②納得がゆく。解釈がつく。 「疑義が―・ける」
大言海 自動詞 (一){(ユヒ)()、分カレハナル。ホドクル。 萬葉集、十二 十五 「マ玉ヅク、ヲチコチカネテ、結ビツル、ワガ下紐ノ、 所解 (トクル)日アラメヤ」
詞花集、七、戀、上「心サヘ、結ブノ神ヤ、ツクリケン、とくるケシキモ、見エヌ君カナ」
伊勢物語、百十一段「戀シトハ、サラニモイハジ、下紐ノ、とけンヲ人ハ、ソレト知ラナン」
(二)職ニハナル。罷官 古今集、十八、雜、下「左近將監、とけテ侍リケル時ニ」
(三){思ヒ晴ル。散ル。霽意 源、廿一、少女「物ノ心モエ侍ラバ、ソノ恨ミハオノヅカラとけ侍リナン」
「疑解く」怒解く」怨解く」
(四){ 隔心 (ヘダテゴコロ)ナクナル。心置キナクナル。 源、二、帚木 三十三 「餘リ麗ハシキ御アリサマノ、とけ難ク、恥カシゲニノミ思ヒシヅマリ給ヘルヲ」
(五)入リ亂レタルガ(ヲサ)マル。 「髮解く」
(六)落ツ。サガル雷落 「雷ガ解く」
(七)ヤム。撤セラル。 「禁解く」
(八)離散ス。 「圍未ダ解けズ」
動詞活用表
未然形 とけ ず、らゆ、らる、む、じ、さす、しむ、まほし
連用形 とけ たり、き、つ、ぬ、つつ、たし、ても
終止形 とく べし、らし、らむ、ましじ、まじ
連体形 とくる も、かも、こと、とき
已然形 とくれ ども
命令形 とけよ

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最終更新:2025年06月14日 15:04