とこ(床・牀)

辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 名詞 ① 人の座する台。高さ一尺くらいで土間に用いる。 新撰字鏡(898‐901頃)「㯓 止己」
延喜式(927)三四「牀〈長八尺、広五尺、高一尺三寸、厚二寸四分〉長功十人」
② 寝所として設ける所。ねどこふしど 古事記(712)中・歌謡「をとめの 登許(トコ)のべに 我が置きし つるぎの太刀 その太刀はや」
源氏物語(1001‐14頃)末摘花「心やすきひとりねのとこにてゆるひにけりや」
③ ふとんを敷いたねどこ。また、男女の共寝。 評判記・野郎虫(1660)伊藤古今「床(トコ)にいりての後は、あぢものじゃといふ」
ゆか 読本・雨月物語(1776)蛇性の婬「然(さて)見るに、女はいづち行けん見えずなりにけり。此床(トコ)の上に輝輝(きらきら)しき物あり」
⑤ 畳(たたみ)のこと。現代では畳の心(しん)を、畳表と区別していう。 大乗院寺社雑事記‐寛正三年(1462)一月一三日「長床二帖」
⑥ 牛車(ぎっしゃ)の人の乗る所。車の床。車箱(くるまばこ)。 日本三代実録‐貞観一七年(875)九月九日「吾欲此牛不 一レ 行、乃以手拠車床、閉気堅坐不動」
⑦ =とこのま(床間)② 玉塵抄(1563)一一「軸の物と云が座敷のかざりに床(トコ)の上に台にのせておかるるぞ」
⑧ 桟敷(さじき)。涼みどこ。 俳諧・己が光(1692)四条の納涼「夕月夜のころより有明過る比まで、川中に床をならべて、夜すがらさけのみものくひあそぶ」
⑨ 葭簀(よしず)ばりにゆかを張るなどして、常時は人の住めない簡単な店。渡船場などの休息所。とこみせ。 浄瑠璃・鑓の権三重帷子(1717)下「床(トコ)の陰に身を潜め、甚平が爰に有からは、市の進も此辺にゐらるるはひつぢゃう」
⑩ ( 以前は「とこみせ」程度であったところから ) 髪結床(かみゆいどこ)。床屋。 浄瑠璃・夏祭浪花鑑(1745)三「床(トコ)の衆今日のお払ひ者いかふ遅うござるの」
⑪ 和船の最後部の船梁で、舵(かじ)を保持する床船梁(とこふなばり)の略称。 〔和漢船用集(1766)〕
⑫ 犂(からすき)の底の地面にふれる部分の名称。いさり 〔訓蒙図彙(1666)〕
⑬ 「なえどこ(苗床)」の略。
⑭ 「かなとこ(鉄床)」の略。
[語誌]( 1 )元来、土間に用いられた①が、住宅・寺院が板敷になるに伴ってその上に置かれ、室町時代には⑤のように畳を意味するようにもなった。
( 2 )床は一段高い所で、その上段の間には押板がつけられるのが普通であったが、茶室の発生とともに、上段と押板が縮小されて一つになり、今日いう⑦の「床の間」となった。
広辞苑 名詞 ①一段高く設けた平らな所。ゆか 新撰字鏡7「㯓、止己」
②寝るために設ける所。ねどこ。寝台。また、寝具。 万葉集5「明星の明くる朝は 敷𣑥 (しきたえ)の―の辺去らず」。
「―を敷く」
③畳のしん。↔畳表
④川の底。かわどこ。
⑤苗を育てるところ。なえどこ
⑥「床の間」の略。
⑦髪結床。床屋。
鉄床 (かなとこ)の略。
牛車 (ぎっしゃ)の屋形。くるまばこ
(すき)の底部。いさり
⑪和船の 櫓床 (ろどこ) 舵床 (かじどこ)などの総称。特に、舵床。
⑫船床、また船床銭・船税のこと。
大言海 名詞 (トコ)ノ義〕
(一){特ニ寐ヌルニ設クル所。ネドコネドコロフシド臥床
萬葉集、十三 廿五 長歌「奧床ニ、母ハ寢ネタリ、外床ニハ、父ハ寢ネタリ」
同、十四 三十二 「妹ガ寐ル、等許ノアタリニ、石クグル、水ニモガモヨ、入リテネマクモ」
同、十七 廿三 長歌「打チナビキ、等許ニ 反側 (コイフ)シ」
古今集、十九、雜、誹諧「枕ヨリ、アトヨリ戀ノ、()メ來レバ、セムカタナミゾ、とこ中ニ居ル」
曾丹集「秋ハテテ、ワガセナキミノ、絕エシヨリ、閨ノ夜床ヲ、トリゾタテテシ」
床・牀
(二){車ノ屋形。ハコ。車箱 倭名抄、十一 廿一 車具「車箱、車乃度古」
天治字鏡、七 十四 「㯓、止己」
榮花物語、廿五、峰月「御車ノとこカキオロシ給フ」
(三)(タタミ)(シン)。(たたみノ條ヲ見ヨ)
(四)床閒 (トコノマ)ノ略。
(五)髮結床 (カミユヒドコ)ノ略。
(六)鐵床 (カナトコ)ノ略。
(七)室床 (ムロドコ)ノ略。
(八)川ノ(ソコ)川床
(九)漆塗レル器ヲ納レテ乾カス箱。 「塗師ノ床」

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最終更新:2025年06月14日 18:55