とて(迚)

辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 助詞 ( 語構成に関しては諸説がある。→補注( 1 ) )
〘 格助 〙
① 文または文相当の語句をうけ、「…と言って」「…と思って」の意を表わす。この場合の「て」はきわめて軽く、文法的機能は「と」だけの場合とほとんど変わらない。
伊勢物語(10C前)一六「年だにも十とて四つはへにけるをいくたび君をたのみきぬらむ」
② 名前を表わす体言をうけ、「…といって」の意を表わす。 宇津保物語(970‐999頃)忠こそ「あやきとて、めでたく形ある童を使ひ給ふ」
③ ( ①の用法から進んで ) 体言をうけ、
(イ) 理由・原因を表わす。
歌舞伎・傾城阿波の鳴門(1695)一「為慣れぬ業とて見つけられ巾着切の悪名を取り」
(ロ) 「…だって」「…もやはり」の意を表わす。 野菊の墓(1906)〈伊藤左千夫〉「これが生涯の別れにならうとは、僕は勿論民子とて、よもやそうは思はなかったらう」
〘 接助 〙 ( [ 一 ]の用法から転じて ) 仮定の逆接を示す。たとえ…としても。…ても。 史記抄(1477)一二「秦楚を合すればとて韓にあたらう用てはない」
浄瑠璃・心中天の網島(1720)中「いかにわかいとてふたりの子の親、結構なばかりみめではない」
[補注]( 1 )語構成に関しては、( イ )格助詞「と」に接続助詞「て」の付いたもの、とするのが一般の説であるが、( ロ )断定の助動詞「と」に接続助詞「て」の付いたもの、とする説もある。
( 2 )「と」によって引用された内容は、下の用言に対して理由・原因になることが多い。従って[ 一 ]の①の用例のあるものと③とでは、その間にたいした違いを認めることはできないし、また格助詞と接続助詞ともその点で連続する。
広辞苑 助詞 (格助詞トに接続助詞テの加わったもの)
①体言、それに準ずる語句、または文に付き、引用する意を表す。
㋐…と言って。
源氏物語桐壺「かくかしこき仰言を光にてなん―見給ふ」
㋑…と思って。 土佐日記「男もすなる日記といふものを女もしてみむ―するなり」
㋒…として。…ということで。…しようとして。 古今和歌集恋「起きもせず寝もせで夜を明かしては春のもの―ながめ暮らしつ」。
古今和歌集序「古りにしことをもおこしたまふ―、…のちの世にもつたはれ―」
㋓…という名で。 徒然草「行雅僧都―、教相の人の師する僧ありけり」
②(下に打消または反語を伴い)…としても。…といっても。とも。 源氏物語桐壺「我なくなりぬ―口惜しう思ひくづほるな」。
浄瑠璃、淀鯉出世滝徳「あいつ一人を切つた―お主の為には何になる」。
「悲しんだ―仕方がない」
③(体言に付いて)
㋐…だけあって。…なので。…であるから。
浄瑠璃、傾城阿波鳴門「しなれぬわざ―見つけられ巾着切の悪名を取り」。
「思いがけぬこと―処置に窮した」
㋑…もやはり。…だって。 浄瑠璃、平家女護島「入道殿の仰せは某―もそむかれず」
大言海 天爾遠波 (一)天爾波、第二類ノとト、第三類ノてトノ閒ニ、他語ヲ略セルモノ。と思ひて、と言ひて、として、ナドノ略。音便ニ、とッて。 伊勢物語、八十五段「ム月ナレバコトタツとて、オホミキ賜ヒケリ」
古今集、二、春、下「春ノ歌とて詠メル」
同、十三、戀、三「起キモセズ、寢モセデ夜ヲ、明カシ ハ、春ノモノとて、ナガメ暮シツ」
更級日記「匹布ヲ千ムラ萬ムラ織ラセ、晒サセケルガ、家ノ跡とて、深キ河ヲ舟ニテ渡ル」
「書ヲ讀マムとて机ニ凭ル」花見ニとて出デ行ク」
(二)(ドモ)。トイヘドモ。トテモ。 伊勢物語、百二段「ソムクとて、雲ニハ乘ラヌ、モノナレド、世ノウキコトゾ、ヨソニナルテフ」
「然リとて」然レバとて」才子ナリとて學バズバ」

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最終更新:2025年06月22日 13:17