との(殿)

辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 名詞 [ 一 ] 建物。
① 身分の高い人の住む大きな邸宅。また、宮殿、社殿あるいは役所など公の建物。
日本書紀(720)崇神八年四月・歌謡「味酒(うまざけ) 三輪の等能(トノ)の 朝戸にも 出でて行かな 三輪の殿戸を」
源氏物語(1001‐14頃)桐壺「里の殿は、〈略〉二なう改め造らせ給ふ」
殿
② 建物としての邸宅と、そこに住む貴人をふくめていう。 万葉集(8C後)一四・三四三八「都武賀(つむが)野に鈴が音聞こゆ上志太の等能(トノ)の仲郎(なかち)し鳥猟(とがり)すらしも」
[ 二 ] 邸宅の意から、その邸宅に住む人をさしていう。
① 一般に、身分の高い人を尊んでいうのに用いる。
枕草子(10C終)二五「外(ほか)よりきたる者などぞ、とのはなににかならせ給ひたる、などとふに」
② 中古には、特に摂政・関白の地位にある人の敬称として用いる。 枕草子(10C終)一〇四「との・上、暁に一つ御車にてまゐり給ひにけり」
③ 中世以降、主君、主人をさしていう。 源平盛衰記(14C前)二〇「殿を見捨てて家安が生き残りては何にかせん」
④ 妻から夫をさしていう敬称。 宇治拾遺物語(1221頃)六「あまりに恋しくかなしくおぼえて、殿は同じ心にもおぼさぬにや、とてさめざめと泣く」
⑤ 女から男をさしていう。やや敬っていういい方。とのご。 虎明本狂言・二人大名(室町末‐近世初)「京に京にはやるおきゃがりこぼしやよ、とのだに見ればつひころぶ」
広辞苑 名詞 ①高貴な人の邸宅。みあらかやかた 万葉集18「橘のした照る庭に―建てて」 殿
②高貴な人を指し、敬っていう語。 源氏物語関屋「この―石山に御願はたしに詣で給ひけり」
③世の中の第一人者、また摂政・関白を指し、敬っていう語。 枕草子143「―などのおはしまさで後、世の中に事出で来」
④主君を呼ぶ称。 義経記3「あはれ―の御書かな。かくこそあらまほしけれ」
⑤妻がその夫を指していう称。 宇治拾遺物語6「かへり給ひて後、あまりに恋しく悲しくおぼえて。―はおなじ心にもおぼさぬにや」
⑥女が男を指して敬っていう称。殿御。殿方。 閑吟集「鳴子は引かで、あの人の―引く」
大言海 名詞 戶名 (トナ)ノ轉ニテ、諸殿、其名ニ因リテ分テバ云フカト云フ〕
(一){帝王、高貴ノ住マルル高大ナル家ノ稱。アラカミアラカオトド
倭名抄、十屋宅類「殿、止乃」
皇極紀、元年九月「欲宮室、可國國 殿屋木 (トノノ)
催馬樂、此殿西「コノ殿ノ西ノ、西ノ倉垣、云云」
殿
(二){居所ヨリ轉ジテ、直ニ、貴人、君主ヲ尊ビ呼ブ語。(代名詞ノ如クモ用ヰル) 源、四十九、東屋 三十四 「若ヤカナル御前ドモ、殿コソアザヤカナレト、笑ヒアヘルヲ聞クニモ、ゲニコヨナノ身ノ程ヤト悲シク」
(三)攝關ノ稱。殿下ナド云ハムガ如シ。關白ノ子、又ハ猶子ヲ、殿の中將、殿の法印、ナド呼ブモ、是レナリ。 海人藻芥(應永、惠命院宣守)下「於內裏殿ト人ヲ申ハ、執柄家之外不之」
紫式部日記「殿(關白道長)、若宮イダキ奉リ給ヒテ、御前ニ出デ奉リ給フ」
讚岐典侍日記「書ツケテ、殿(關白忠實)參ラセ給ヒテ、人人居直リナドスレバ」
更級日記「カラウジテ渡リテ、殿(關白道賴)ノ御領所ノ宇治殿ヲ入リテ見ルニモ」
同「殿の中將ノオボシ歎クナルサマ(殿ハ關白道長、中將ハ道長ノ子ノ長家)」
(四)中世、(ツマ) 良人 (ヲツト)ヲ呼ブ語。 狂言記、花子「オノレメハ、殿ハコハウテ、妾ハコハウナイカ、云云、ヤイ冠者、殿ノ姿ニ好ウ似タカ」
(五){轉ジテ、婦人ヨリ一般男子ヲ敬ヒ呼ブ語。 萬葉集、十四 廿 「稻舂ケバ、カガル我手ヲ、今夜モカ、殿ノ若子ガ、取リテ歎カム」
同、十六長歌「ワタツミノ、殿ノ御カサニ、飛カケル」
淋敷座の慰、忍びくどき「風モ吹カヌニ妻戶ノナルハ、カブロ出テ見ヨ、殿デハナイカ」
古俗謠「出雲崎見リャ殿ナツカシヤ、殿ノ住マシャル宿ヂャモノ」
「殿方」殿御」

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最終更新:2025年06月28日 15:51