とむ(止・停)

辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 他動詞 [ 一 ] 動きを停止させる。また、動こうとするものをおさえる。
① 動いているもの、動こうとするものを動かないようにする。進ませなくする。
万葉集(8C後)四・五三二「うち日さす宮に行く児をまがなしみ留(とむれ)ば苦しやればすべなし」
源氏物語(1001‐14頃)手習「道すがら行きもやらず、車とめて、湯まゐりなどし給ふ」
止・留・停・泊
② それまで続いていたものを途絶えさせる。 俳諧・春の日(1686)「連哥のもとにあたるいそがし〈冬文〉 滝壺に柴押まげて音とめん〈越人〉」
③ 特に、生命を断つ。殺す。 浄瑠璃・出世景清(1685)五「一人をとめんことは案のうち物こわきにかいごんで」
④ さえぎる。制止する。おしとめる。 万葉集(8C後)二・一七八「み立たしの島を見る時にはたづみ流るる涙止(とめ)そかねつる」
源氏物語(1001‐14頃)竹河「あまたの人におくれ侍りにける、身の憂へも、とめがたうこそ」
⑤ 禁止する。さしとめる。 歌舞伎・盟三五大切(1825)大詰「その代り一年分払って立たっしゃい、さもないと、貴様の諸道具をとめるから、さう思はっしゃい」
魔風恋風(1903)〈小杉天外〉前「それが為に四五日以来外出を禁(ト)められ」
⑥ 固定させる。つなぎとめる。 後撰和歌集(951‐953頃)秋中・三〇八「白露に風の吹きしく秋の野はつらぬきとめぬ玉ぞちりける〈文屋朝康〉」
[ 二 ] ある場所に、ある時間継続してとどめ置く。
① ( 泊 ) 宿泊させる。また、停泊させる。泊める。滞在させる。
万葉集(8C後)一五・三六二七「あが心 明石の浦に 船等米(トメ)て 浮寝をしつつ」
浄瑠璃・丹波与作待夜の小室節(1707頃)中「こりゃ小まん此旦那殿ちそうしてとめましや」
② 罰などとして、その場所を動かさずとどめおく。 滑稽本・浮世風呂(1809‐13)前「『おいらじゃねへよ、あの子だようヨ』『翌(あした)また留(トメ)られやうと思って、お師匠さんに云告てやらア』」
③ 香などを衣服にこもらせる。付着させる。 源氏物語(1001‐14頃)須磨「月影のやどれる袖はせばくともとめても見ばや飽かぬ光を」
浮世草子・日本永代蔵(1688)四「白むくの寝巻に留(トメ)らるるかほりに」
④ ( 「心をとめる」「目をとめる」の形で ) そのことに関心を持つ。注目する。 源氏物語(1001‐14頃)若紫「あらし吹く尾のへの桜散らぬ間を心とめけるほどのはかなさ」
[ 三 ] しるして後に残す。とどめて後に残す。
① その場所にとどめ残す。後に残す。
源氏物語(1001‐14頃)橋姫「命あらばそれとも見まし人知れず岩根にとめし松のおひすゑ」
② 足跡をこの世に残す。すなわち、生命を保つ。生きながらえる。 源氏物語(1001‐14頃)真木柱「みづからは、かく心憂き宿世今は見果てつれば、この世に跡とむべきにもあらず」
③ 書きしるして残す。書きとめる。 二人女房(1891‐92)〈尾崎紅葉〉中「腹の中の小言帳に委細留(ト)めて」
広辞苑 他動詞 ➊事物の動き・続きをやめさせる。
①進ませない。動かないようにする・
万葉集19「 渋渓 (しぶたに)をさしてわが行くこの浜に月夜飽きてむ馬しまし―・め」。
「車を―・める」
止む・留む・停む
②引きとめる。また、つなぎとめる。 万葉集4「うち日ささ宮に行く子をまがなしみ―・むれば苦しやればすべなし」。
後撰和歌集秋「白露に風の吹きしく秋の野はつらぬき―・めぬ玉ぞ散りける」
③やめさせる。禁ずる。制する。 万葉集2「御立たしの島を見るときにはたづみ流るる涙―・めそかねつる」。
「喧嘩を―・める」
④続いていたものをなくする。とだえさせる。絶つ。特に、生命を断つ。仕留める。 春の日「滝壺に柴押しまげて音―・めん」(越人)。
浄瑠璃、出世景清「一人を―・めんことは案の 打物 (うちもの)小脇にかいこんで」。
「痛みを―・める」
⑤動かないように固定する。 「髪をピンで―・める」
➋(「泊める」とも書く)そこにとどめ居させる。
①碇泊させる。
万葉集15「さ夜ふけて行方を知らに()が心明石の浦に船―・めて浮寝をしつつ」
②宿を貸す。とまらせる。 浄瑠璃、丹波与作待夜の小室節「泊らんせ、泊らんせ。 旅籠 (はたご)安うて―・めませう」。
「客を一晩―・める」
➌後にとどまらせる。
①とどめておく。あとにのこす。
源氏物語須磨「月影のやどれる袖はせばくとも―・めても見ばや飽かぬ光を」
②(この世に跡をとどめる意で)命を長らえる。 源氏物語真木柱「みづからは斯く心憂き宿世今は見果てつれば、この世に跡―・むべきにもあらず」
③心をよせる。留意する。(耳や目の働きを)その点に集中させる。 源氏物語夕顔「朝霧の晴れ間も待たぬ気色にて花に心を―・めぬとぞ見る」。
「気に―・めて下さって有難う」「人の話に耳を―・める」「目を―・める」
大言海 他動詞 (一){(スス)マシメズ。動カサズ。トドム 杜牧詩「停車坐愛楓林晚」
萬葉集、十五 十二 長歌「アカシノ浦ニ、フネ 等米 (トメ)テ、浮寢ヲシツツ」
竹取物語「カクヤ姬ヲ、エ戰ヒとめズナリヌルコトヲ、コマゴマト奏ス」
止・停
(二){抑ヘ支フ。禁ジ制ス。 史記、孔子世家「匡人於是、遂止孔子
萬葉集、四 廿 「ウチヒサス、宮ニ行ク兒ヲ、マ悲シミ、 留者 (トムレバ)苦シ、ヤレバスベナシ」
「他出ヲ止む」
(三)(ノコ)ス。トドム 論語、微子篇「止子路宿」
新古今集、七、賀「住ノ江ノ、濱ノ眞砂ヲ、フム(タヅ)ハ、久シキ跡ヲ、とむるナリケリ」
「功業ヲ留む」
(四)宿ス。宿
(五)()キコム。染ムル。(香ヲ) 繪合後集(延寳)遊女「涼ミノ床几、夕待ツラシ」亂シ髮、禿ニ匂ヒ、とめサセテ」
動詞活用表
未然形 とめ ず、らゆ、らる、む、じ、さす、しむ、まほし
連用形 とめ たり、き、つ、ぬ、つつ、たし、ても
終止形 とむ べし、らし、らむ、ましじ、まじ
連体形 とむる も、かも、こと、とき
已然形 とむれ ども
命令形 とめよ

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附箋:下二段 他動詞

最終更新:2025年07月19日 17:38