とも(雖)

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日本国語大辞典 助詞 〘 接助 〙 動詞および動詞型活用の助動詞の終止形、形容詞および形容詞型活用の助動詞の連用形を受ける。
① 逆接の仮定条件を表わす。たとえ…ても。ても。
古事記(712)下・歌謡「やたの 一本菅は 独り居り登母(トモ) 大君し よしときこさば 独り居り登母(トモ)」
平家物語(13C前)六「主が名をば知らずとも、尋ねてまいらせなむや」
坊っちゃん(1906)〈夏目漱石〉八「弁論を逞しくしやうとも、〈略〉おれを遣り込め様とも、そんな事は構はない」
② 確定的な事柄を、仮定的に表現することによって強調する。…しているが。たとえ…しても。 万葉集(8C後)一・三一「ささなみの志賀の大わだ淀む友(とも)昔の人にまたも逢はめやも」
歌舞伎・当龝八幡祭(1810)二幕「四十五匁、ちと重くとも持って下さい」
[語誌]( 1 )語源は引用の格助詞「と」に係助詞「も」が付いて成立したものと考えられる。接続助詞「と」に係助詞「も」が付いて一語化したもの、との説もあるが、上代において「とも」が多用されているのに対して、接続助詞「と」はいまだ用いられていない。従って「とも」から「と」が生じたと考えるべきであろう。
( 2 )上代から現代に至るまで用いられているが、近世以降、口語では「ても」が優勢となり、「とも」は文章語的表現としてのみ用いられる。
広辞苑 助詞 ➊(接続助詞)
①逆接の仮定条件を示す。たとい…しても。
㋐動詞型活用の終止形および形容詞型活用の連用形に付く。…ても。
万葉集5「わが盛りいたく(くた)ちぬ雲に飛ぶ薬はむ―また 変若 ()ちめやも」。
万葉集16「大野路は 繁道森道 (しげじもりみち)繁く―君し通はば道は広けむ」。
源氏物語桐壺「いみじき武士、仇敵なり―見てはうち笑まれぬべきさまのしたまへれば」。
「辛かろう―頑張れ」「早く―一年はかかる」
㋑連用形が古く終止形であったことから、奈良時代では上一段活用「見る」には「み」に接続する。 万葉集18「ひねもすに見―飽くベき浦にあらなくに」
㋒鎌倉畤代以後は、動詞型活用の連体形に接続した例がある。 太平記3「此城我等が片手に載て、投ぐる―投げつべし」
②後に続く否定・決意・推量などの気持を、いつまでも変わらぬものと強調するために、既に現実となっていることを仮定条件として表現する。既に…しているが。…してはいても。 万葉集1「ささなみの志賀の大わだ淀む―昔の人にまたも会はめやも」。
源氏物語帚木「まのあたりならず―、さるべからん雑事等は、うけ給はらん」。
歌舞伎、傾城仏の原「よしよし今一旦討洩す―重ねて本望遂げん」。
「何も無く―君といる」
③否定の意を受け、下の「よろしい」「差支えがない」などの意の語を省略する。 万葉集2「島の宮上の池なる放ち鳥あらびな行きそ君まさず―」。
史記抄「民を利するならば礼をへして修めず―ぞ」。
「何は無く―の気持である」
➋(格助詞)格助詞「と」に係助飼「も」の付いた形。同じ語を重ねて語意を強める時に用いる。 皇極紀「 太秦 (うつまさ)は神―神と聞え来る常世の神を打ち(きた)ますも」。
「くやし―くやし」
➌(終助詞)(口語で)活用語の終止形に付いて、事柄を強く断定・肯定する。 狂言、宗論「芋といふものを植ゆるは。おう、なかなか、植ゆる―」。
「全くそうです―」「出来る―出来る―」
大言海 天爾遠波 第三類ノ天爾波。とトノミモ云フ。上ノ語ノ意ヲ(ホン)スル意ノモノ。但シ未定ナルニ云ヒテ、旣定ノ意ノどもニ對ス。(篇尾ノ語法指南ノ天爾遠波ノ條ヲ見ヨ) 風雅集、十九、神祇「世世ヲヘテ、汲ムとも盡キジ、久方ノ、天ヨリ移ス、小鹽井ノ水」
玉葉集、六、冬「夕マグレ、フルとも見エデ、白雪ノ、ツモレバ靡ク、庭ノ吳竹」
「擊ツとも碎ケジ」善クとも惡クとも」

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最終更新:2025年07月20日 18:03