なぐ(投・擲)

辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 他動詞 ① 空中に物をほうり出す。手の力で遠くへ飛ばす。なげうつほうる 日本書紀(720)神代上(丹鶴本訓)「此よりな過(す)ぎそとのたまひて、即ち其の杖を投(ナケ)ます」
② 体をほうり出す。倒れるように、寄りかかったりひれ伏したりする。また、身投げをする。入水する。 古今和歌集(905‐914)雑体・一〇六一「世の中のうきたびごとに身をなげば深き谷こそ浅くなりなめ〈よみ人しらず〉」
平家物語(13C前)一〇「五躰を地に投げ、発露啼泣し給ひしかば」
③ 持っている物を差し出す。提供する。投与する。 米沢本沙石集(1283)六「随分の資財をなけて、などか助成し給はざるべき」
④ その場所に向けて、ある作用が届くようにする。 何処へ(1908)〈正宗白鳥〉一三「月は木の間に洩れて、新しい光を縁側に投げてゐる」
春の城(1952)〈阿川弘之〉二「定まり文句を谷井に投げると、騒ぎながら外へ出て」
⑤ 放棄する。途中でやめる。また、手抜きをする。 洒落本・婦美車紫⿰鹿子(1774)夜中の口舌「さつまとあのやしきはむつかしい、なけなんすな」
黯い潮(1950)〈井上靖〉一「新聞記者としてのして行くやうなタイプではなかったが、担当した仕事は投げなかった」
⑥ 相手を拒否する。ふる 雑俳・柳多留‐一一(1776)「なげられもしやうかと初会片くろう」
⑦ 相場が下落することを見越して、損を承知で安く売る。⇔煎れる 新撰大阪詞大全(1841)「なげるとは 物をやすふうること」
⑧ 投節(なげぶし)を歌う。 浮世草子・風流曲三味線(1706)五「此辺(ここら)は気を替へ、一銚子あげ、一投(ひとなげ)なげて」
⑨ 建築用語で、一定の所から外の方へ出す。
⑩ 囲碁、将棋などで、負けを認める。投了する。
広辞苑 他動詞 ①(手に持って)遠くへほうる。 万葉集8「(たぶて)にも―・げ越しつべき天の川隔てればかもあまた(すべ)なき」。
万葉集13「―・ぐる()の遠さかり居て」。
源氏物語東屋「ただ荒らかなる東絹どもを、おしまろがして―・げ出でつ」。
「球を―・げる」
投ぐ
②柔道・相撲などで、腕・腰の力で相手を倒す。
③身をほうり出す。また、飛びこんで自殺をはかる。 源氏物語蜻蛉「俄かに消え失せにけるを、身―・げたるなめりとてこそ」。
平家物語10「五体を地に―・げ、発露啼泣し給ひしかば」。
天草本平家物語「昔から夫に後るるたぐひ多いと申せども…目の前に身を―・ぐることはありがたいためしぢや」。
「椅子に背を―・げる」
④すべきことを途中でほうりだす。あきらめる。棄権する。 「今度の試験は―・げた」「(さじ)を―・げる
⑤物を捨てる。
⑥(取引用語)買方が相場下落を見越して、高値買付の株を争って安価で売る。
大言海 他動詞 取リテ飛バセ()ル。射ル。ナゲウツ。ハフリダス。 萬葉集、十九 十四 長歌「梓弓、末振リオコシ、 投矢 (ナグヤ)持チ、千尋射ワタシ」
同、十三 三十 「鮎ヲ(アタラ)シ、投ぐるサノ、遠ザカリ居テ、思フ空、安カラナクニ、嘆ク空、安カラナクニ」
源仲正集「賤ノ女ガ、稻穗子なぐる、 連枷 (カラザヲ)ニ、打チソヒテ來ル、 鶺鴒 (ニハタタキ)カナ」
神代紀、下「取矢還 投下 (ナゲオロシ)
投・擲
動詞活用表
未然形 なげ ず、らゆ、らる、む、じ、さす、しむ、まほし
連用形 なげ たり、き、つ、ぬ、つつ、たし、ても
終止形 なぐ べし、らし、らむ、ましじ、まじ
連体形 なぐる も、かも、こと、とき
已然形 なぐれ ども
命令形 なげよ

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附箋:下二段 他動詞

最終更新:2025年09月13日 21:25