なづ

辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 他動詞 ① 手のひらなどで、軽くさする。物の表面にそっとさわり、静かにこする。さする 万葉集(8C後)二〇・四三五六「我が母の袖持ち奈弖(ナテ)て我がからに泣きし心を忘らえぬかも」
故旧忘れ得べき(1935‐36)〈高見順〉一「水の上を渡ってくる爽かな風が痩せた彼の頬を撫でながら」
撫・摩
② 上位の者が下位の者を精神的に愛撫する、かわいがる。君主などが人民をいつくしむこと、子どもや小さな動植物をかわいがることなどをいう。 万葉集(8C後)二〇・四三〇二「山吹は奈埿(ナデ)つつ生(お)ほさむ有りつつも君来ましつつ挿頭(かざ)したりけり」
神皇正統記(1339‐43)上「国を治め、民をなで給し道なれば」
③ 髪をとかす。櫛(くし)を使って髪の毛をとく。くしけずる。なでつける。 字鏡集(1245)「櫛 ナヅ」
腕くらべ(1916‐17)〈永井荷風〉三「化粧鏡を取出し鬢を撫でて」
④ 斎宮(さいぐう)の忌み詞で、「打つ」ことをいう。 皇太神宮儀式帳(804)「人打つを奈津(ナヅ)と言ふ」
⑤ ひき砕く。 日葡辞書(1603‐04)「コメヲ nazzuru(ナヅル)〈訳〉米を搗く」
広辞苑 他動詞 ものの表面を心をこめてさする意。
①手のひらでやさしくさする。
万葉集20「わが母の袖持ち―・でてわが(から)に泣きし心を忘らえぬかも」。
平家物語5「よに暖かにかうばしき御手をもつて―・でくだし給ふ」。
「子供の頭を―・でる」
撫づ
②物が他の物に触れ、静かに動く。 「風が頰を―・でる」
いつくしむかわいがる。大事にする。 万葉集18「老い人も(おみな) 童児 (わらわ)もしが願ふ心足らひに―・でたまひ治めたまへば」。
平家物語5「朝夕ひまなく―・で飼はれける馬の尾に」
くしけずる。髪をとかす。 福富長者物語「烏帽子の塵はらひて髪―・でつけ」
⑤ひきくだく。 日葡辞書「コメヲナヅル」
⑥(斎宮の忌詞)打つ。 斎宮寮式「打を(なづ)()ふ」
大言海 他動詞 長閑 (ノドカ)ノのどノ活用〕
(一){掌ニテ、ナダラカニ(サス)ル。ナデル。ナゼル。
倭名抄、八 十五 備中國「都宇郡、撫河、奈都加波」
名義抄「育、ナヅ、摸、ナヅ、撫、ナヅ、摩、ナヅ」
華嚴經私記音義「撫、奈豆」
靈異記、中、第一緣「摩、ナデ」
字鏡 四十七 「𣏓、塗者也、槾也、奈豆」
拾遺集、五、賀「君ガ代ハ、天ノ羽衣、マレニ着テ、なづトモ盡キヌ、イハホナラナン」
後拾遺集、七、賀「思ヒ遣レ、マダ鶴ノ子ノ、生先ヲ、千世モトなづる、袖ノセバサヲ」
萬葉集、廿 廿三 「我ガ母ノ、袖持チ 奈弖 (ナデ)テ、ワガカラニ、泣キシ心ヲ、忘ラエヌカモ」
(二)イツクシムアハレムイタハル撫恤 孟子、梁惠王、上篇「莅中國、而撫四夷也」
續紀、一、丁酉年八月、詔「天下ノ、公民ヲ、惠賜ヒ、撫賜ムトナモ」
萬葉集、廿 十二 「山吹ハ、 奈埿 (ナデ)ツツオホサム、アリツツモ、君キマシツツ、 插頭 (カザ)シタリケリ」
同、六 廿六 長歌「 皇朕 (スメラワガ)、ウヅノ御手モチ、搔撫ゾ、ネギタマヒ、打撫ゾ、ネギタマフ」
(三)齋宮ノ忌詞ニ、うつ(打)ヲ云フ。卽チ、刑罰ニ、笞杖ニテ打ツノ反語。
動詞活用表
未然形 なで ず、らゆ、らる、む、じ、さす、しむ、まほし
連用形 なで たり、き、つ、ぬ、つつ、たし、ても
終止形 なづ べし、らし、らむ、ましじ、まじ
連体形 なづる も、かも、こと、とき
已然形 なづれ ども
命令形 なでよ

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附箋:下二段 他動詞

最終更新:2025年09月20日 14:55