など(抔)

辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 助詞 〘 副助 〙 ( 「なにと」が「なんど」を経て変化したもの ) ほかにも同類のもののある中から一例として示す意を表わす。
① 体言または体言と同資格の語句を受けて用いられる。
(イ) 体言を受けて、類例を例示または暗示しつつ、代表として指し示す。
竹取物語(9C末‐10C初)「殿の内の絹・綿・銭などある限り取り出てて」
蓼喰ふ虫(1928‐29)〈谷崎潤一郎〉九「めったに旅行などしたことのない要は」
等・抔
(ロ) 引用文を受けて、おおよそのところを示す。 竹取物語(9C末‐10C初)「此の度はいかでか辞び申さん、人さまもよき人におはすなと言ひゐたり」
閑居友(1222頃)下「仏の御心にとほざかるかたもあるべし、なとさまざまにおぼえ侍りき」
② 体言・形容詞連用形・副詞などを受け、漠然とさすことによって表現をやわらげる。 土左日記(935頃)承平五年一月一三日「ゆあみなどせんとて、あたりのよろしき所におりてゆく」
倫敦塔(1905)〈夏目漱石〉「其頃は方角もよく分らんし、地理抔(ナド)は固より知らん」
③ ある事物を取り立てて例示する。 大鏡(12C前)三「我などをばかくなめげにもてなすぞと、むづかり給ふ」
野菊の墓(1906)〈伊藤左千夫〉「女の事など許りくよくよ考へて」
[語誌]( 1 )根本的な意味は、他にも類例のある中から取り立てて指示するところにある。すなわち、その根本義にもとづく用法が①であるが、これから、②の漠然と指示する用法を派生する。③の取り立て用法も、同類のものが暗示されることによって可能となる。
( 2 )③は、暗示される事物を、種類としては同類と認めながら、価値としては相反するものと認めることによって生ずる用法であるが、価値の低いものが例示される場合が多いため、軽蔑を表わす用法などともいわれる。しかし、挙例の「大鏡」のように価値あるものが例示されることもある。
( 3 )語源が「なにと」(→なんど)にあるため、古くは①(ロ) のような引用の場合にも下に格助詞「と」の付かないのが普通であったが、語源意識が薄れると、「と」が付くようになり、中世末以降は付く方が一般的になる。
( 4 )中古の訓点資料には例が見られないが、それはこの語の成立が古くないからだといわれる。また、中古の和歌にも用いられていない。
広辞苑 助詞 (副助詞)(「何」に助詞「と」が付いたものの転。平安時代に使われだした語。本来なかった「などと」の例が鎌倉時代以後に見られる)
①ある語に添えて、それに類する物事が他にもあることを示す。…や何か。
源氏物語桐壺「御子たち―もおはしませば」「大殿ごもりすぐして、やがてさぶらはせ給ひ―、あながちにお前去らずもてなさせ給ひ」。
「花―で部屋を飾る」
等・抔
②それだけに限定せずやわらげていう。 枕草子1「火―急ぎおこして炭もてわたるも」。
「お祝いにはネクタイ―いかがでしょう」
③(引用句を受けて)「大体そんなことを」の意を表す。 土佐日記「日をのぞめばみやこ遠し―いふなることのさまを聞きて」
④その価値を低めていう。相手の言ったことをしりぞける心持で、特にとり立てて示す。否定的・反語的表現を伴うことが多い。…なんか。 浮世風呂2「あの島田くづしのかたち―は、役者の鬘同然さ」。
「僕―にはできません」「うそ―つかない」「疲れ―していない」
大言海 接尾辞 〔何とノ音便ナルなんどノ略〕
名詞ニ接キテ、正シク其物ニ限ラズ、外ニモ(ナホ)アル意ヲ云フ語。()。ナンド。
或ハ、他ノ種種ノ語句ニモ接キテ、餘事アルコトヲ示ス。
枕草子、十一、百三十三段「院ノ御サジキヨリ、千賀ノ鹽釜などヤウノ御消息、ヲカシキ物など、持テマヰリカヨヒタルなどモ、メデタシ」
源、二、帚木 廿三 「惡カメリなど言ヒテ」
同、同 十一 「心ヒトツニ思ヒアマル事などオホカルヲ」
「何事ゾなど問フ」悲シなど言ハムカタナシ」物ヲ食ヒなどシテ」馬ニなど乘リテ」

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最終更新:2025年09月20日 15:51