なむ(嘗)

辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 他動詞 [ 一 ] 舌先で物にさわる。転じて、比喩的にも用いる。
① 舌の先で物にふれる。舌でなでてぬらす。舌先でふれて口にする。しゃぶるねぶる
日本書紀(720)神武即位前(北野本訓)「天皇徃(さき)に、厳瓮粮(いつへのをもの)を甞(ナメ)たまふて」
竹取物語(9C末‐10C初)「壺なる御薬たてまつれ〈略〉とてもて寄りたれば、いささかなめ給ひて」
嘗・舐
② 味をみる。あじわう 日本書紀(720)推古二九年二月(図書寮本訓)「悉に長老(おきな)は愛(めくい)児を失へるが如くして、塩酢の味口に在れども甞(ナメ)ず」
③ 男が女を、もてあそぶ。手をつける。 雑俳・柳多留‐一〇(1775)「伴頭がなめると御用触れ歩き」
④ つらい事や苦しい事を経験する。体験する。 花柳春話(1878‐79)〈織田純一郎訳〉一「僕、辛苦を嘗め艱難を経る既に数年、又何をか堪へざらむ」
⑤ 火が一面を焼き尽くす。 江戸から東京へ(1921)〈矢田挿雲〉五「本堂から出火、〈略〉駿河台に飛火し鞘町、茅場町、八丁堀、鉄炮洲、霊岸島から海中の船舶を渡って石川島に延び伝馬町の牢屋を䑛(ナ)め」
⑥ 製本で、本の端を、わずかに切りおとす。
⑦ 風や波や光が物の表面をなでるように吹いたり揺れたり照らしたりする。 女工哀史(1925)〈細井和喜蔵〉一「暖い風が地上をなめる頃になると広漠たる桑園は一声に笑ひ始め」
⑧ ビリヤードで、手球をついて第一の的球にかする程度に当てる。
⑨ 映画・テレビなどの撮影で、対象物を右から左へ、あるいは上から下へというふうに、視線が動くような感じでカメラを動かす。
[ 二 ] ( 「無礼」の字をあてても用いられる ) 人や物事を、軽く見る。あまく見る。馬鹿にする。みくびる 申楽談儀(1430)別本聞書「やうありかくなりと申せど、なまじいに、立合節(たちあいぶし)をなめたる者の書きたる也」
浄瑠璃・妹背山婦女庭訓(1771)四「この隣へ近頃来た相借屋の烏帽子折り、この井戸がへも立ち合はず、あんまりなめた奴ぢゃないか」
[補注][ 二 ]は[ 一 ]の比喩的な用法の範囲に含まれる点があるので、同一項目で扱ったが、形容詞「なめし(無礼)」の語幹が活用するようになったもの、あるいは形容詞「なめし」の語尾「し」が助動詞と混同されて、「なめ」が動詞化し、それまでの「なめる[ 一 ]」の用法の中に混入してきたものとも考えられる。
広辞苑 他動詞 ①舌の先でなでる。ねぶる 竹取物語「壺なる御薬奉れ…とてもて寄りたれば、わづか―・め給ひて」。
「皿を―・める」「傷口を―・める」
嘗む・舐む
②味わう。 翫味 (がんみ)する。 こんてむつすむん地「天の御国の甘露を―・め始むるものなり」。
「飴を―・める」
③(つらい事や苦しい事を)十分に経験する。 「辛苦を―・める」
④(比喩的に炎の舌先がふれて)焼き尽くす。 「炎が―・める」
⑤(「なめ(無礼)」の動詞化という)相手、または事を、頭から馬鹿にしてかかる。みくびる 浄瑠璃、夕霧阿波鳴渡「さても―・めたり―・めたり、この夕霧に足もたすは」。
「―・めたことを言いやがる」
大言海 他動詞 (一){舌ノ尖ニテ、撫デテ味ヲ試ム。 (ネブ)。又、アヂハフ 推古紀、廿九年二月「長老如愛兒、而鹽酢之味、在口不嘗」竹取物語「藥、云云、イササカなめ給ヒテ」
宇津保物語、俊蔭「花ノ露、紅葉ノ雫ヲなめテアリフルニ」
(二)轉ジテ、甘ク見ル。サゲシメテ見ル。 義殘後覺(文祿)立石と云ふ力士、比丘尼と相撲取りて負けたるに「立石口惜シク思ヒ、なめ過ギテ負ケケルト思ヘバ」
(三)經驗ス。 「險阻艱難、備サニ之ヲ嘗めタリ」薪ニ臥シ膽ヲ嘗ム」
動詞活用表
未然形 なめ ず、らゆ、らる、む、じ、さす、しむ、まほし
連用形 なめ たり、き、つ、ぬ、つつ、たし、ても
終止形 なむ べし、らし、らむ、ましじ、まじ
連体形 なむる も、かも、こと、とき
已然形 なむれ ども
命令形 なめよ

検索用附箋:他動詞下二段

附箋:下二段 他動詞

最終更新:2025年10月12日 14:39