なる(生・実)

辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 自動詞 [ 一 ] ( 生 ) なかったものが、新たに形をとって現われ出る。
① 動植物が、新たに生じる。
日本書紀(720)推古二一年一二月・歌謡「親無しに 汝(なれ)奈理(ナリ)けめや」 成・為・生
② 草木の実ができる。みのる。結実する。 日本書紀(720)天智一〇年正月・歌謡「橘は おのが枝々 那例(ナレ)れども」
[ 二 ] ( 成・為 ) あるものやある状態から、他のものや他の状態に変わる。
① あるものから他のものに変化する。
万葉集(8C後)五・八一九「世の中は恋繁しゑや斯くしあらば梅の花にも奈良(ナラ)ましものを」
方丈記(1212)「朱雀門、大極殿、大学寮、民部省などまで移りて、一夜のうちに塵灰となりにき」
② ある状態から他の状態に移り変わる。また、ある状態に達する。 万葉集(8C後)五・八一七「梅の花咲きたる園の青柳はかづらにすべく奈利(ナリ)にけらずや」
平家物語(13C前)七「矢だね皆射尽して、馬をも射させ、かちだちになり」
③ その時刻や時期に達する。その時に至る。また、時が経過する。 古事記(712)下・歌謡「君が行き 日(け)長く那理(ナリ)ぬ 山たづの 迎へを行かむ 待つには待たじ」
更級日記(1059頃)「十三になる年、のぼらむとて、九月三日門出して」
④ ある場所やある高さに達する。 更級日記(1059頃)「今は武蔵の国になりぬ。ことにをかしき所も見えず」
⑤ 官職に任ぜられる。任命される。 大和物語(947‐957頃)四「四位にもなるべき年にあたりければ」
⑥ みじめな状態になる。おちぶれる。→なれる果て 平家物語(13C前)二「入道かたぶけうどするやつがなれるすがたよ」
⑦ 将棋で、王将、金将以外の駒が敵陣の三段目以内にはいったり、そこで動いたりしてその性能が変わる。飛車は龍王に、角行は龍馬に、小駒は金将と同等の性能になり、駒を裏返すことによって表わす。 俳諧・犬子集(1633)一五「ならぬ間ぞたのみ成ける さか馬にいられて後はつめにくし〈貞徳〉」
⑧ 動詞の連用形に付けて、補助動詞のように用いる。…するに至る。 大和物語(947‐957頃)一五六「せめられわびて、さしてむとおもひなりぬ」
[ 三 ] ( 成 ) 行為の結果が現われる。
① 物事ができあがる。やっていたことがしあがる。
万葉集(8C後)一四・三五四三「室草(むろがや)の都留(つる)の堤の那利(ナリ)ぬがに児ろは言へどもいまだ寝なくに」
② 望んでいたことが実現する。思いがかなう。 竹取物語(9C末‐10C初)「思ふことならで、世中に生きて何かせん」
③ することができる。 浄瑠璃・義経千本桜(1747)三「死でくれな小金吾、そちが死るととと様に逢事がならぬは」
④ 特に、酒が飲める。いける。 虎寛本狂言・伯母が酒(室町末‐近世初)「此鬼も酒が一つ成るいやい」
⑤ さしつかえないとしてがまんできる。たえられる。 〔日葡辞書(1603‐04)〕
浄瑠璃・神霊矢口渡(1770)三「『座敷にならずば軒の下、木部屋に成り共たった一夜を』『イヤならぬ』」
⑥ 暮らしが立つ。 浮世草子・好色敗毒散(1703)五「夫婦となりて十二年、ならぬ世帯にしほたらと明かし暮らすも」
⑦ 物事がそれによって構成される。 春の城(1952)〈阿川弘之〉二「第一航空戦隊はこの時、大鳳、瑞鶴、翔鶴の三隻の正規空母から成っていた」
⑧ 三粒(みつぼ)ばくちで、六・一一・一六の目が出る。成り目ができる。 浄瑠璃・本朝二十四孝(1766)二「ここを一番当てたいが、南無骰子(さい)明神なり給へ当り給へ」
⑨ 貴人がある行為・動作をする。なさる。特に、ある所へおでましになる。 紫式部日記(1010頃か)消息文「殿なむ参り給ふ、御とのゐなるなど」
[ 四 ] 補助動詞として用いる。動詞の連用形や動作性の漢語名詞を、「お…になる」「ご…になる」の形ではさみ、動作主に対する尊敬を表わす。「お書きになる」「ご見物になる」→お(御)…になる・ご(御)…になる
広辞苑 自動詞 現象や物事が自然に変化していき、そのものの完成された姿をあらわす。
➊無かったものが新たに形ができて現れる。
①動植物などが生ずる。うまれでる。
推古紀「親無しに(なれ)―・りけめや」。
万葉集5「石木より―・りでし人か」
生る・成る・為る
②《生》草木が実を結ぶ。みのる 万葉集18「橘の―・れるその実」。
「蜜柑が―・る」
③なりわいとする。耕作する。 万葉集20「 防人 (さきむり)に発たむ騒きに家の(いむ)が―・るべき事を言はず来ぬかも」
➋別の物・状態にかわる。
①以前と違った状態・内容にかわる。
万葉集14「後れ居て恋ひば苦しも朝狩の君が弓にも―・らましものを」。
日葡辞書「ハダカニナル」「テキニナル」。
「病気に―・る」
②ある状態にいたる。 万葉集5「盛に咲ける梅の花散るべく―・りぬ」。
竹取物語「物思ふにはかた時になむ老に―・りにけると見ゆ」。
「大人に―・る」
③その時刻・時期にいたる。 万葉集3「かへるべく時は―・りけり」。
土佐日記「七日に―・りぬ」。
源氏物語桐壺「右近の司の宿直(もうし)の声聞ゆるは、丑に―・りぬるなるべし」。
「夜に―・る」
④あるものの用を果たす。また、ある役を演ずる。 「失敗がいい薬に―・る」「ハムレットに―・る」
⑤なり果てる。 平家物語2「当家傾けうとする謀叛の奴が―・れる姿よ」
⑥将棋で、王・金以外の(こま)が敵陣に入り、また敵陣から動いて裏返しになり、飛車と角行は元来の力のほかに金・銀の資格を併せ持ち、他の駒は全部金の力を得ることをいう。
➌行為の結果、完成する。
①できあがる。しあがる。
万葉集4「むろがやの都留の堤の―・りぬがに児ろは言へども未だ寝なくに」。
「研究が―・る」「なせば―・る」
②組み立てられている。成立する。 「3つの段落から―・る文章」
③望みがかなう。成功する。 源氏物語須磨「御門のお前に夜昼さぶらひ給ひて、奏し給ふ事の―・らぬはなかりしかば」。
「志が―・る」
④恋愛で成功する。 万葉集14「池の堤に刺す楊―・りも―・らずも汝と二人はも」。
好色一代女1「人なほ―・らぬに気をなやみてこがれ死もありける」
⑤できる。することができる。 狂言、(あかがり)「茶の湯などとあれば、掃除に気をつくるといふが、汝はさやうのことは―・るまいな」。
「辛抱が―・るほどならば」
⑥匹敵する。 狂言、八句連歌「扨も扨も見事な御手跡で御座るが、…こなたには、―・らせられますまい」
⑦差支えない。堪え得る。 狂言、笠の下「師匠より譲られた笠でござるによつて、雨露にうたせても、又は人に誘はれても―・りませぬほどに」。
日葡辞書「セイデナラヌ」
⑧暮しがたつ。 浮世草子、好色敗毒散「されども別れし女房が明暮しほたらと―・らぬ世帯に、世話をやき死にせし事を思ひ出せば」
➍(そのことが自然に生ずる意から)
①高貴の人の行為をあらわす。
平家物語1「上皇つひに崩御―・りぬ」。
平家物語6「かしこへ行幸―・つて紅葉を叡覧―・るに」
②(動詞の連用形、動作を表す漢語に、「お(御)…に―・る」の形で付いて)行為者に対する敬意を表す。 「お聞きに―・る」「御覧に―・る」
大言海 自動詞 (一)無カリシ物、新ニ世ニ出デ來。()ヒ出ヅ。 () (ウマ)(シヤウ)ズ。 古事記、上「於高天原(ナリマセル)神名」
大祓祝詞「 國中 (クニナカ)ニ、成り出デム(アメ) 益人 (マスビト)等」
推古紀、廿一年十二月「親ナシニ、(ナ%%%レ%%%)奈理ケメヤ」
芭蕉ノ句「成りニケリ、成りニケリマデ、年ノクレ」「生リ坐ス」
生・實
(二)草木、實ヲ結ブ。ミノル結實 名義抄「實、ナル、ミノル」
天智紀、十年正月「橘ハ、己ガ枝枝、那例例ドモ、玉ニ貫クトキ、オヤシ緖ニ貫ク」
神代紀、上 三十 「秋穀已 成則 (ナリヌルトキハ)亙以絡繩」「果生る」
動詞活用表
未然形 なら ず、ゆ、る、む、じ、す、しむ、まほし
連用形 なり たり、き、つ、ぬ、つつ、たし、ても
終止形 なる べし、らし、らむ、ましじ、まじ
連体形 なる も、かも、こと、とき
已然形 なれ ども
命令形 なれ

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最終更新:2025年10月26日 15:22