る(被・所・見)

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日本国語大辞典 助動詞 (活用は「れ・れ・る・るる・るれ・れよ」。下二段型活用。四段活用・ナ行、ラ行変格活用の動詞の未然形に付く) 自発・受身・可能・尊敬の助動詞。
① 自発を表わす。ある動作、主として心的作用が自然に無意識的に実現してしまうことを示す。命令形は用いられない。
※万葉(8C後)一四・三三七二「相模道(さがむぢ)のよろぎの浜の砂(まなご)なす児らは愛(かな)しく思は流留(ルル)かも」
※徒然草(1331頃)一五七「筆を執れば物書かれ、楽器を取れば音をたてんと思ふ」
② 受身を表わす。他から何らかの動作作用の影響を受ける意を表わす。受身とともに迷惑や恩恵をこうむっている気持を、合わせて表現することが多い。 ※続日本紀‐天平勝宝元年(749)四月一日・宣命「男のみ父の名負ひて、女はいは礼(レ)ぬ物にあれや」
※徒然草(1331頃)二一八「狐は人に食ひつくものなり。堀川殿にて舎人(とねり)が寝たる足を狐に食はる」
③ 可能を表わす。…することができる。古代は、否定の表現を伴って不可能の意を表わすのに用いられるのが普通であったが、中世末以降、打消を伴わないで可能の意を表わすのにも用いられる。この意味では、命令形は用いられない。 ※万葉(8C後)二〇・四三二二「我が妻はいたく恋ひらし飲む水に影(かご)さへ見えて世に忘ら礼(レ)ず」
※源氏(1001‐14頃)桐壺「御胸つと塞(ふた)がりてつゆまどろまれず、明かしかねさせ給ふ」
④ 尊敬を表わす。他人の動作を表わす語に付いて、敬意を示す。「給う」などよりは軽いといわれ、多く本来敬意を含んでいる動詞に付く。中古以降の用法で、中古の漢文訓読、中古末の和漢混淆文などに例が多いが、かな文学作品では比較的少ない。現代では、他の尊敬表現に比べて文語的表現という感じが強い。 ※西大寺本金光明最勝王経平安初期点(830頃)五「善女天、若疑惑有らば、汝が意に随て問は所(レ)よ」
※大和(947‐957頃)御巫本附載「いな、気色取りつれば逢ふべくもあらず。早う帰へられぬ」
[語誌](1)「られる(らる)」と意味・用法は等しいが、未然形がア段となる動詞には「れる(る)」が付き、それ以外の場合は「られる(らる)」が付く、というように、接続に分担がある。ただし、近年「られる」を使うべきところに「れる」を代行させる例が、特に口語の可能表現に多くみられるようになっている。「『もう三年も生きれたら有難い』と云ってゐた」〔蟹工船〈小林多喜二〉一〕など。→ら抜き言葉
(2)上代では、「ゆ」の形をとることが多く、「る」は中古以降に多く用いられるようになる。中世には連体形「るる」が終止法として用いられるようになり、命令形には「れい」が現われ、やがて一段活用化して「れる」となる。
(3)「られる(らる)・れる(る)」の受身は、英語などの受身と異なり、単純な他動詞ばかりでなく、「肩を叩かれる」「酒を飲まれる」のように目的語を伴った他動詞に付く場合、また、「彌勒から雨に降られて閉口して了(しま)ひました」〔田舎教師〈田山花袋〉四〕のように、自動詞に付く場合もある。なお、「迷惑の受身」などと呼ばれるものは、自動詞に付いた場合が多い。
(4)サ変動詞に付く場合、現在では「愛される」のように、語尾「さ」に続くのが普通であるが、古くは、「愛せられる」「愛しられる」のように「せ」「し」に「られる」が付いた。
(5)動詞の活用語尾に準ずるものとして接尾語とする説もある。
広辞苑 助動詞 (活用は下二段型。[活用]れ/れ/る/るる/るれ/(れよ))四段・ナ変・ラ変の動詞活用の語の未然形に接続する。その他の動詞活用の語には「らる」が接続する。奈良時代には多く「ゆ」を用い、「る」は平安時代以後に多い。室町時代は終止形が「るる」となり、命令形「れい」が現れる。江戸時代に下一段活用型「れる」が現れ、浄瑠璃などには四段活用型の例もある。口語形は「れる」。→らる
①(動作の)自発を表す。
万葉集14「相模路のよろきの浜のまなごなす児らはかなしく思はるるかも」。
源氏物語須磨「殊に物深からぬ若き人々さへ、世の常なさ思ひ知られて涙にくれたり」
②可能を表す。主に否定表現として用いられた。 万葉集20「我妻はいたく恋ひらし飲む水に(かご)さへ見えて世に忘られず」。
源氏物語玉鬘「歩むともなくとかくつくろひたれど足の裏動かれず、わびしければせんかたなくて休み給ふ」。
徒然草「冬はいかなる所にも住まる」
③平安時代以後、尊敬を表す。他の尊敬表現の語と共に使うことも多い。 源氏物語若紫「御格子参りね。…人々近うさぶらはれよかし」。
平家物語10「君はいまだしろしめされ候はずや、あれこそ八嶋の大臣殿」。
洒落本、契国策「チトお休み遊ばされませ」
④受身を表す。 万葉集5「唐の遠き境に遣はされまかりいまして」。
源氏物語明石「たはぶれにても、心の隔てありけると思ひうとまれ奉らむは」。
平家物語11「敵はあまたあり、そこにてつひに討たれにけり」。
歌舞伎、今源氏六十帖「取り巻かるる上は是迄ぢや」
大言海 助動詞 他ヨリ働キ掛ケラレテ、我レ受身トナル意ヲナス助動詞。四段、奈行變格、良行變格ノ活用ノ動詞ノ未然形ニツク。四段ノ「打タ」押サ」奈行變格ノ「往ナ」死ナ」良行變格ノ「有ラ」ノ如シ。らる(被)ノ條ヲモ倂セ見ヨ。(篇尾ノ語法指南ノ助動詞ノ條ヲ見ヨ) 皇極紀、二年十一月「聞山背大兄王等、惣( レヌ) 上レ 於入鹿 被・所・見

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最終更新:2024年05月10日 22:06