あく(明(自動詞ロ))

辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 自動詞 ① 隔てや覆いなどが、とり除かれる。閉じていたものが開く。 ※竹取(9C末‐10C初)「たてこめたるところの戸、すなはちただあきにあきぬ」 明・開・空
② そこを占めていたものがなくなる。
(イ) 詰まっているものが除かれたり間が広がったりして、空間ができる。
※竹取(9C末‐10C初)「あける隙もなくまもらす」
※更級日記(1059頃)「穴のあきたる中より出づる水の」
(ロ) 中にはいっているものがなくなる。からになる。 ※天草本伊曾保(1593)蜜作りの事「ウツワモノノ コトゴトク aitauo(アイタヲ) ミテ」
(ハ) 官職、地位などに欠員ができる。 ※源氏(1001‐14頃)行幸「ないしのかみあかば、なにがしこそ望まんと思ふを」
(ニ) 収入より支出が多くなる。欠損になる。 ※浮世草子・懐硯(1687)二「二度の節季の帳まへたび毎に三五の十八はらりと違て次第ましの不足、積れば大きに虚(アク)ところありて」
③ 差し止められていたことが、してよいことになる。解禁になる。→方(かた)あく ※蜻蛉(974頃)中「方あきなばこそは、まゐりくべかなれと思ふに」
④ ある一定の期間が終わりになる。 ※蜻蛉(974頃)中「ものいみも、けふぞあくらんと思ふ日なれば」
⑤ (時間、場所、品物などについて用いる) 使われない状態になる。
(イ) 仕事をしないでいられる時間ができる。
※日葡辞書(1603‐04)「ヒマガ aqu(アク)〈訳〉時間を持つ。または、場所があく」
(ロ) 使われていない状態になる。必要でなくなる。 ※洒落本・仕懸文庫(1791)二「うつくしゐのが二三人、あいてけへりやしたが、すぐにでやした」
⑥ (入り口が開く意から) 人が出入りできるようになる。多く、商店などが営業を始める、また、営業していることにいう。→口があく ※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)前「ヲヤままだ明(アカ)ね、明ね、明ねか。あ、あひやね(朝寝)なべやぼ(べらほう)だぜ」
⑦ 壁や建物などにさえぎられないで、外が見える。また、見通しのいい状態になる。 ※行人(1912‐13)〈夏目漱石〉兄「其処(そこ)は南と西の開(ア)いた広い座敷だったが」
⑧ (「らちがあく」の意) 物事がうまくいく。かたがつく。→あかぬあかん ※浮世草子・好色二代男(1684)二「大かたは八つの鐘がなれども、あかずすぐにはかへらず」
他動詞 ふさいでいるものや閉じているものなどを開く。 ※ロドリゲス日本大文典(1604‐08)「メヲ aqumo(アクモ) フサグモ コチノ ママデ アル」
[語誌]この語は、下二段自動詞「あく(明)(→下一段「あける」)」と同源と考えられているので一項で扱ったが、「明く」は明るくなる、「開(空)く」は閉じているものが開いてすきまができる、が原義であること、また、前者は四段他動詞「あかす」と対になるのに対し、後者は下二段他動詞「あく(→下一段「あける」)」と対になる点などによってこれを疑問視するむきもある。確かに「あく(明)」は「くる(暮)」と対義語であり、これは「あか(赤)」と「くろ(黒)」との対に対応しており、さらに明度にかかわる「あかる」「あかるし」「あきらか」「あきらけし」「あきらむ」などと関係する点でも、「開(空)く」とは差があるようである。
広辞苑 自動詞 ①そこを塞いでいた物が除かれ、通り抜けができるようになる。 竹取物語「立て籠めたる所の戸、即ちただ―・きに―・きぬ」。
日葡辞書「ハレモノノクチガアイタ」。
「門が―・く」「箱の蓋が―・く」
明く・開く・空く
②そこにあったものが無くなり、空白部ができる。また、からになる。
㋐間にへだたりやすきまができる。
竹取物語「―・ける隙もなく守らす」。
日葡辞書「イエ、イレモノナドガアク」。
「1着と2着との間が1メートル―・く」「―・いている部屋」「グラスが―・く」
㋑官職・地位に就いていた人がやめ、そこに人がいない状態になる。欠員ができる。 大鏡師尹「小一条院式部卿にておはしまししが、東宮にたち給ひて―・くところに」。
「社長の椅子が―・く」
㋒収入・支出にへだたりができ、欠損になる。 懐硯 (ふところすずり)「節季の帳まへたびごとに、…次第ましの不足、積れば大きに―・くところありて」
㋓(日常の行為・勤めなどに関して)禁制・束縛などが解かれる。解除になる。 源氏物語松風「今日は六日の御物忌―・く日にて」。
梅津政景日記「女房四人年季―・き候ひて」。
「喪が―・く」
㋔する事がない状態になる。ひまになる。 日葡辞書「ヒマガアク」。
「手が―・く」
③(幕開きなどの意から)物事が始まる。また、営業が始まる。 「芝居が―・く」「店は11時に―・く」
④(らちがあくの意)物事がうまくゆく。否定形でのみ用いる。 好色二代男「八つの鐘がなれども―・かず」。
「そりゃ―・かん」
他動詞 あける ロドリーゲス大文典「目を―・くも塞ぐもこちのままである」
大言海 自動詞 (一){オノヅカラ開ク。 竹取物語「閉テコメタル所ノ戶、スナハチ、タダあきニあきヌ」
(二)官職ニ任ジタル人、無クナル。 今鏡、上、司召「匡房、云云、藏人ノ式部大夫トテナム、あきタルニヒテ、中務少輔ニゾ成リ侍リケル」
發心集(鴨長明)二、禪林寺永觀律師事「東大寺別當ノあきタリケルニ、白河院、此人ヲ成シタマフ」
(三)(ヒマ)ニナル。()(アキ)ニナル。成暇 「手ガあく」當番ガあく」
(四)空シクナル。(カラ)ニナル。一空 入物 (イレモノ)ガ」住家ガあく」行ク道ガあく」
(五)始マル。開始 「芝居ガあく」商賣ノ口ガあく」
動詞活用表
未然形 あか ず、ゆ、る、む、じ、す、しむ、まほし
連用形 あき たり、き、つ、ぬ、つつ、たし、ても
終止形 あく べし、らし、らむ、ましじ、まじ
連体形 あく も、かも、こと、とき
已然形 あけ ども
命令形 あけ

検索用附箋:自動詞四段
検索用附箋:他動詞四段

附箋:他動詞 四段 自動詞

最終更新:2025年02月23日 21:52