あだ(徒・空)

辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 形容動詞 表面だけで、実のないさま。まれに「の」を伴う用法もある。
① 空虚なさま。むだなさま。実を結ばないさま。
※古今(905‐914)物名・四六七「のちまきのおくれて生(お)ふる苗なれどあだにはならぬたのみとぞきく〈大江千里〉」
② 一時的でかりそめなさま。はかなくもろいさま。 ※古今(905‐914)哀傷・八六〇「露をなどあだなる物と思ひけむわが身もくさにおかぬばかりを〈藤原惟幹〉」
※徒然草(1331頃)一三七「あだなる契をかこち、長き夜をひとり明かし」
③ いいかげんでおろそかなさま。粗略なさま。 ※源氏(1001‐14頃)葵「たしかに、御枕がみに参らすべき、祝ひの物に侍る。あなかしこ、あだにな」
※浮世草子・好色一代男(1682)六「中にも今にわすれねば、かく置所までをうず高く、仮にも化(アダ)には思はず」
④ 浮薄なさま。不誠実で浮気っぽいさま。 ※古今(905‐914)仮名序「いまの世中、色につき、人のこころ、花になりにけるより、あだなるうた、はかなき事のみいでくれば」
[語誌]「徒」との同音語のうち、「仇討ち」など「自分に害を加えるもの・敵」の意の「あだ(仇)」は上代から使われているが、古くは清音で「徒」とは別語。また、「あだ名」の「あだ」は、「徒」と同源かともいわれるが、「別、他」の意である。
広辞苑 名詞 (じつ)のないこと。浮気。いたずら 伊勢物語「―なる心なかりけり」 徒・空
②はかないこと。かりそめ 古今和歌集哀傷「花よりも人こそ―になりにけれ」
大言海 名詞 (アヒダ)ノ約カ( 閒籠 (アヒコメ)、あこめ(衵)。 襲齒 (オソヒバ)、おそば)〕
(一)空シキコト。實ノナキコト。
字鏡 廿二 𧮑、伊豆波利己止、阿太己止」
伊勢物語、百三段「イト(マメ)ニ、 實樣 (ジチヤウ)ニテ、あだナル心ナカリケリ」
玉葉集、十九、釋敎「明日ヨリハ、あだニ月日ヲ、送ラジト、思ヒシホドニ、今日モ暮シツ」
(アダ)言」(アダ)箭」
徒・空
(二)ハカナキコト。カリソメナルコト。 後撰集、三、春、下「久シカレ、あだニ散ルナト、櫻花、瓶ニサセレド、ウツロヒニケリ」
古今集、十六、哀傷「花ヨリモ、人コソあだニ、ナリニケレ、何レヲサキニ、戀ヒムトカ見シ」
「あだナ浮世」
(三)イタヅラナルコト。浮キタルコト。浮空 菅家萬葉集、下、春「咲ク花ハ、 千種 (チグサ)ナガラニ、(アダ)ナレド、誰レカハ春ヲ、惜シマザリケル」
古今集、四、秋、上「女郞花、多カル野邊ニ、宿リセバ、アヤナクあだノ、名ヲヤ立チナム」
新勅撰集、十二、戀、二「高クトモ、何ニカハセム、吳竹ノ、ヒトよフタよノ、あだノふしヲバ」

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附箋:名称 名詞 形容動詞

最終更新:2024年11月17日 21:53