あぢ(味)

辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 名詞 [一] 物事から感覚や経験で感じとるもの。味わい。
① 飲食物などが舌の味覚神経に与える感じ。
※虎明本狂言・瓜盗人(室町末‐近世初)「是ほどあぢのよひうりはなひほどに」
② 物事に接して、また、経験により感じとったもの。物の良し悪し、具合、調子。「切れ味」「書き味」のように熟語としても用いる。 ※玉塵抄(1563)一五「その中に一人さい下戸か、いへうな者があって、酒ものまいですみゑむいてをれば、満座の者があぢをわるうしてたのしみ喜ことないぞ」
※女難(1903)〈国木田独歩〉五「唐偏木で女の味(アヂ)も知らぬといふのは」
[二] (形動) 良い、好ましい、または、おもしろみのある味わい。また、そういう味わいのあるさまをいう。
① 物事の良さ、おもしろみ。持ち味。また、そういうさま。→味を占める
※史記抄(1477)四「如此てこそ始て文字の味は面白けれぞ」
※浄瑠璃・用明天皇職人鑑(1705)二「是は女筆のちらし書ことになまめく贈り物。いかさまあぢなことそふな、聞まほしし」
② 妙味のある行為や状態についていう。
(イ) 気のきいていること。手際のいいこと。また、そういうさま。→味にする味をやる
※評判記・難波物語(1655)「雲井〈略〉逢(あふ)時はさもなくて、文にはあぢをかく人なり」
※仮名草子・東海道名所記(1659‐61頃)二「黒き帽子にてかしらをあぢに包みたれば」
(ロ) 風流で趣があること。また、そういうさま。 ※俳諧・曠野(1689)員外「峰の松あぢなあたりを見出たり〈野水〉 旅するうちの心寄麗さ〈落梧〉」
(ハ) 色めいていること。また、そういうさま。 ※評判記・難波物語(1655)「若旦那とあぢあるよし」
※咄本・無事志有意(1798)稽古所「娘のあたっている中へ足をふみ込、ついあぢな心になって、娘の手だと思ひ、母の手を握りければ」
(ニ) わけありげなこと。何か意味ありげに感じられるさま。 ※浮世草子・傾城色三味線(1701)京「あぢな手つきして、是だんな斗いふて、盃のあいしたり、かる口いふ分では」
※洒落本・風俗八色談(1756)二「人と対する時は作り声をしてあぢに笑ひ」
(ホ) 囲碁で、あとになって有利に展開する可能性のある手。また、そういうねらい。
(ヘ) こまかいこと。また、そのようなさま。 ※咄本・楽牽頭(1772)目見へ「男がよすぎて女房もあぶなし、金もあぶなく、湯へ行てもながからうのと、あじな所へ迄かんを付て、いちゑんきまらず」
③ 人の意表に出るような行為や状態についていう。
(イ) 一風変わっているさま。
※浮世草子・好色一代男(1682)六「あぢな事共計、前代未聞の傾城くるひ」
(ロ) 意外なさま。奇妙なさま。 ※歌舞伎・四天王十寸鏡(1695)一「やあかもの二郎殿、是はあぢな所でたいめんをいたす」
※多情多恨(1896)〈尾崎紅葉〉前「柳之助は其を聞くと、〈略〉異(アヂ)に胸が騒ぐやうな心地がした」
(ハ) 不思議なさま。 ※浄瑠璃・摂州渡辺橋供養(1748)一「サア縁といふ物はあぢな物ぢゃ」
④ 取引所における売買取引の状態、または相場の動き具合などをいう。 〔取引所用語字彙(1917)〕
広辞苑 名詞 ①飲食物が舌の味覚神経に触れた時におこる感覚。 「うすい―」「塩―」「―をみる」
②体験によって知った感じ。 「貧乏の―を知る」
③(かみしめて知るような)物事のおもむき。面白み。 日葡辞書「ガクモンノアヂニノル」。
「―のある絵」
④(一風かわって)快いさま。気のきいているさま。おつ。 浄瑠璃、八百屋お七「―な趣向があつたもの」。
「―なことを言う」「―な気持になる」
⑤手ぎわのよいこと。 浄瑠璃、心中二枚絵草紙「親父が手前を―にして」
⑥相場の動きぐあい。 「場―」
大言海 名詞 〔假名遣ハ、萬葉集ニ、紫陽花ヲ「(アヂ) 狹藍 (サヰ) 安治佐爲 (アヂサヰ)」日本釋名(元祿)下 五十三 味「あぢハ、甘キ()也、乳味ハ、食ノ始ニテ、甘キ物也」乳ヲ元トスル語トス、イカガアルベキ〕
(一)食物ノ、舌ニアタリテ生ズル甘キ、辛キ、苦キ、酸キ、鹹キ、ナドノ(カンジ)アヂハヒ
「砂糖ノ味」鹽ノ味」
(二)轉ジテ、物事ノ、人ノ(スキ)ニ感ズルコト。オモムキ。((ウマ)き意カ)趣味 「讀書ノ味」
(三) 趣味 (オモムキ)アリゲナルコト。オツナコト。 「あぢヲ()ル」あぢナ物」あぢナ氣ガスル」
(四)あぢを()めるト云フハ、利益ヲ占メ得タルヲ云ヒ、狃レテ、再ビ得ムトスル意ヲ含ム。 俚言集覽、味をしめる「余師、赤尾夫子曰、狃、あぢをしめる也」
狂言記、瓜盜人「ユフベノデ、あぢを得テ、又、今夜モ、取リニ參ラヌコトハアルマイ」
左傳、桓公三十年「莫敖(チウス)蒲騷之役
玉篇「狃、(ナルル)也、 復也 (フタタビスル)

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最終更新:2023年10月08日 18:39