あら(荒)

辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 語素 主として名詞の上について、これと熟合する。
① 勢いのはげしいさまを表わす。
(イ) 勇ましい。たけだけしい。また、乱暴な。粗暴な。「荒馬」「荒武者」など。
※書紀(720)神功摂政前九月「荒魂。此をば阿邏瀰多摩(アラみたま)と云ふ」
※大鏡(12C前)二「荒三位(あらざんみ)道雅の君」
荒・粗
(ロ) 荒っぽい。激しい。「荒波」「荒海」「荒行」「荒療治」など。 ※万葉(8C後)一三・三二八〇「さ夜ふけて荒風(あらし)の吹けば立ち待てる我が衣手に降る雪は凍(こほ)り渡りぬ」
※保元(1220頃か)上「為朝が申す様以ての外の荒儀なり。年の若きが致す所か」
② 出来具合が精密でないさまをいう。
(イ) 人手の加わっていない、自然のままの。「あらたま」「あらかね」など。
※万葉(8C後)一四・三四四七「草陰の阿努(あの)な行かむと墾(は)りし道阿努は行かずて阿良(アラ)草立ちぬ」
※浄瑠璃・源平布引滝(1749)二「荒木を切て投出したり」
(ロ) 十分に精練されていないさま。粗製の。雑な。細かでない。すきまの多い。「荒妙(あらたえ)」「荒炭」「荒垣」「荒薦(あらこも)」など。
(ハ) ととのっていないさま。荒れはてたさま。 ※書紀(720)皇極四年正月(岩崎本訓)「板蓋宮の墟(アラところ)と為らむ兆なり」
(ニ) おおよその。大体の。あらまし。「あら削り」「あら筋」「あらづもり」「あら塗り」「あら彫り」など。
名詞 よい部分を大体取ってしまった残りをいう。
① 米などのぬか。もみぬかあらぬか
※観智院本名義抄(1241)「糠 ヌカ アラ」
② 魚鳥獣などの肉を料理に使って、あとに残った肉のついている骨や頭や臓物。粗骨(あらぼね) ※俳諧・江戸新八百韻(1756)「琴箱やまどろむ橋にかかるらん〈龍眠〉 麁(アラ)のすましを望む有明〈米仲〉」
※最暗黒之東京(1893)〈松原岩五郎〉二二「鰯、鯖、鮪等の敗肉(アラ)は皆一所に掃溜めて」
③ 粗製のもの。雑なもの。 ※梅津政景日記‐慶長一七年(1612)三月二九日「山田村御米五十六表之内、あら御座候米之由」
④ 欠点。おちど。特に人の小さな欠点。 ※政談(1727頃)三「親類・知人にも折々は出合ふて、話をも聞、下のあらも是に依て知り」
※黴(1911)〈徳田秋声〉五七「是迄に触れて来た女の非点(アラ)ばかりを捜して行った」
[語誌](一)は、動詞「あらく〔下二〕」「あらす〔四〕」「あらびる〔上一〕」「あらぶ〔上二〕」、形容詞「あらし」「あらけなし」などを派生し、「あらわ(は)」「あらあら」「あらまし」などをつくり、動詞と熟合して「あらだつ」などともなる。なお、上代では、「いそ(磯)」や「うみ(海)」と熟合する時は、「ありそ」「あるみ」の形となる。動詞の「ある(荒)〔下二〕」と同根の動詞「ある(生)」には、下二段活用で生まれる意、四段活用で産む意を表わすことがあり、それとも深い関係があろう。したがって、「あら(現)」、「あら(新)」は、ともに②(イ)の意を含んで連続しており、「あらわる」「あらわす」などの語とも共通の要素があると考えられる。
広辞苑 接頭辞 「あれはてた」「荒々しい」「こまやかでない」「くわしくない」「まばらな」「人工を加えぬ」「かたい」などの意を表す。↔にき(和) 「―えびす」 荒・粗
大言海 接頭辞 (アラ)ニテ、見テ驚嘆スル聲ニモアルカ〕
(一)(コハ)キ。堅キ。((ヤハラカ)キ、(ニゴ)ニ對ス。剛、柔ノ意)
「毛ノ 荒物 (アラモノ)、毛ノ 柔物 (ニゴモノ)」荒炭、(ニゴ)炭」
(二)(ハゲ)シキ。(タケ)キ。(ツヨ)キ。 荒御魂 (アラミタマ) 和御魂 (ニギミタマ)」荒神」 荒男 (アラヲ)」荒法師」荒(エビス)」荒馬」
(三)起リ立ツ。 「荒浪」荒海」(荒浪ノ海)荒磯」(荒浪ノ磯)荒潮」(荒浪ノ潮)

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最終更新:2024年05月06日 19:59