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術伝流一本鍼no.15 - (2015/07/31 (金) 14:03:10) の編集履歴(バックアップ)


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術伝流一本鍼no.15 指の使い過ぎで動かしづらい

(1)先急一本鍼  (運動器) 指の使い過ぎで動かしづらい
 先回は、指周りの辛さを糸状灸で改善する方法を紹介しました。

 今回は、その応用で、バイトで重い物を持ちすぎて、指が動か
しづらくなってしまった状態の二人を、鍼灸で改善した例を解説
します。熱さが苦手な人もいるので、片方は、あえて、鍼のみで
試させてもらいました。

1.依頼の経過

 互いに症例などを相談し合うメーリングリストを開いています。
そこに、前に日曜講座1期に出ていた鍼灸学校生から、相談のメー
ルが来ました。

 クラスメートがバイトで重い物を上げ下げした結果、両手の指
が曲げづらく、握ったり開いたりの動きが、寒さでかじかんだよ
うな、ぎこちない感じになってしまったということでした。

 メールでやり方を伝えて、お灸をしてもらったのですが、改善
がイマイチだったようです。そこで、メールをなんどかやりとり
して相談し、そのクラスメートと、そのバイト先の同僚で似た症
状の人の二人を、日曜の鍼灸講座で施術してみせ、紹介者とクラ
スメートの人には、治療の仕方を覚えてもらうということになり
ました。

 事前に送ってもらった二人の症状は、以下の通りでした。

(1)Hさん(20代女性)、クラスメイトです。
主訴:手を握る動作がしづらい(両手)。動きもぎこちないです
し、痛むときもあるそうです。

 週に1回、飲食店のアルバイトで15,6キロのお釜を毎日5,6回
かなりの高低差を上げ下げしています。ただ、最近はアルバイト
の回数を減らしたので、辛さは軽減しているそうです。

(2)30代男性、Hさんのアルバイト先の人です。
主訴:腱鞘炎で、手を握る動作がかなり制限される(両手)。

 この人は毎日勤めています。整形外科で腱鞘炎の診断を受け、
ロキソニンを服用。「手を休めるしかない」と言われているそう
です。

2.鍼灸学校生を鍼で改善

 先ずは、比較的軽い鍼灸学校生から。講座の終わり際を使うた
め、二人で30分しか取なかったので、一番痛む所のみを改善し、
後は、本人や紹介の鍼灸学校生に施術してもらうことを了承して
もらいました。

 聞いてみたら、手を握るときに左手の中指の甲よりの関節が痛
くて、握る動作がしづらいということでした(写真1)。

写真1

 鍼灸学校生なので、鍼になれていると思い、鍼で治療しても良
いか聞いたところ、鍼でも良いということでしたので、鍼で治療
してみることにしました。

 先ずは、患部の左中指の井穴をツボ探し棒で押して比べてみる
と、薬指よりが痛いということでした。念のため、隣の薬指も調
べたら、中指よりの井穴も痛いということで、その2カ所の井穴
に鍼をしました。

 こういう井穴のように細かいツボに鍼するには、No.12にも書
きましたように、先ずツボ探し棒などで少し強めに押して痕(あと)
を付け、その痕に鍼先を置いてから鍼管をかぶせ、軽く彈入して
から、鍼管を取り去ります(写真2)。

写真2

それから、少し旋撚などの手技(写真3)をした後、素早く抜鍼
します。

写真3

 すると、この場合のように、経絡的に関係する所に炎症性疾患
が有る場合には、点状出血することがある(写真4)ので、アル
コール綿で拭いておきます。

写真4

 カゼなどで発熱しているときにも、井穴に上記のような感じで
鍼をすると、点状出血することがあります。

 それから、手を握る動作で、中指を動かしてもらい、その動作
で伸びようとしている筋肉と縮もうとしている筋肉を調べ、ツボ
を探しました。

 中指の場合は、伸びようとしている方は、前腕の一番太い辺り
の手小陽経に、縮もうとしている方は、前腕の一番太い辺りの手
厥陰経に、それぞれツボが出ていることが多いです。

 指を辛くない範囲で曲げたり伸ばしたりしてもらい、その時に
前腕の一番太い辺りで動いている部分を見付け、その辺りを探り、
凹んでいて押して痛い所を見付けます。

 陽経側(写真5)、陰経側(写真6)の順で刺鍼しました。

写真5
写真6

 その後、握る動作をして確かめてもらったら改善していたので、
仕上げに移りました。もちろん、重い場合には、日常生活に支障
がない程度になるまで繰り返す必要があります。

 仕上げは、中指の根元の八邪を比べ、痛かった方の薬指側の八
邪に引き鍼しました(写真7)。

写真7

3.バイト先の同僚の治療

 次は、バイト先の同僚の人で、こちらの人の方が重いのですが、
やはり時間がないので、一番辛い所だけにしてもらいました。

 手を握る動作(写真8)をしてもらったら、特に、右手の中指
と親指が痛いということでした。

写真8

 そこで、詳しく調べたら、中指は、鍼灸学校生とほぼ同じ辺り
の陽経側(写真9)と陰経側(写真10)にツボが出ていました。

写真9
写真10

 親指では、親指を握る動作の時に伸びる方は、前腕の太い部分
の陽経側(写真11)に出ていました。

写真11

 親指を握る時に縮む方では、前腕の太い部分の陰経側(写真12)
だけでなく、手の平の親指よりの膨らみ(母指球)のほぼ中央(写
真13)にもツボが出ていました。手の親指の屈筋は母指球にもある
ので、当たり前ですが。

写真12
写真13

 色々な方法を見てもらった方がいいし、指への鍼は初めての人
は痛がる場合が多いこともあり、灸で施術してみることにしまし
た。

 親指と中指の井穴をツボ探し棒で押してみて痛い方を選びまし
た。親指は外側、中指は示指よりでした。親指、中指の順で、灸
点墨を付けた手指用糸モグサを灸点に立て、灸をしました(写真
14、15)。

写真14
写真15

 その後、手の平の母指球に出ていたツボをツボ探し棒で押して
場所を特定してから、灸をしました(写真16)。

写真16

 それから、前腕のツボを施術したのですが、前腕のツボは、指
などに比べると深いことが多く、灸の場合、腕を置く位置によっ
て効果が出にくいこともあるので、鍼の方が確実なことを説明し
了解したもらった上で、鍼をしました。

 もちろん、灸でも丁寧に腕を置く位置を決めていけば効果が出
るのですが、この時は時間が無かったことも鍼を選ぶ要因の一つ
でした。

 陽経側、陰経側の順で、親指と中指を動かす筋の筋腹に出てい
たツボに順番に刺鍼しました(写真17,18,19,20)。

写真17
写真18
写真19
写真20

 途中で、確か1カ所、鍼先が当たったと思うのに効果が出ず、
鍼先の向きを変えたとたんに鍼の響きが出た所がありました。や
はり、灸でなく鍼を選んで、この場合は正解だったかなと思いま
した。

 手を握る動作をしてもらったら(写真21)、痛む所が無くなっ
たということで、仕上げに移りました。もちろん、痛む所が残っ
た場合には、日常生活に支障がない程度まで、動作鍼を繰り返す
必要があります。

写真21

 仕上げは、右手の八邪を調べ、一番痛かった中指と薬指の間に
引き鍼をしました(写真22)。

写真22

4.その後

 終わった後に来たメールでは以下の通りでした。

「先日はモデル患者を治療していただき、ありがとうございまし
た。帰り道での彼らの明るい表情が印象的でした」

 そこで、施術後に表情が明るいと予後が良いことが多いという
こと、紹介者やクラスメートの人が同じように鍼灸していけば、
たとえ仕事でぶり返してもどんどん改善すること、仕事の合間に
指を反らしたり揉んだりするとよいことを伝えました。

 その後に来たメールでは、手指用糸モグサ、灸点墨、ツボ探し
棒などをそろえ、養生を続けているようです。

 こういうふうに自分の周りの運動器系疾患の人を鍼灸させても
らうことで、鍼灸の技術を身につけ向上させてていくことができ
ますので、どんどん試してみてください。


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