累積: - ___ 昨日: - ___今日: -

鍼灸症例問答no.1 うつ熱の解熱

(1)はじめに

 ペンネーム「母さんの鍼」さんの鍼灸症例1つめです。

(2)「うつ熱」の解熱について

   ・20代後半の女性
   ・体調を崩し、休職中

1.患者さんの症状

   9月初旬の朝、「熱が39.5℃あり、グッタリして動けない」と
   の連絡を受けた。

   外気温33°の日。伺って話を聞くと、

  .1.今朝方、身体中が熱く体温を計ってみると、39.5℃あった。

  .2.冷え性なので、冷たい飲み物はさけて、温かい物を飲んでいた。

  .3.クーラーは苦手なので、かけないでいた。

  .4.高熱が出た原因については、思い当たることがない。

2.患者さんの身体の状態など

  .1.顔が赤く火照り、体幹・両下肢とも熱感があり、グッタリして
   動ける状態ではなかった。

  .2.風邪の症状(悪寒・喉の痛み・咳・鼻水・鼻づまり等)は、な
   かった。

  .3.部屋はかなり室温が高く、また湿度も高いため、ムッとした不
   快感があった。

  以上、発熱物質による発熱とは考えにくく、外的環境の高温・多
  湿・無風の中に長時間いたこともあり、熱の産生と放散のバラン
  スが崩れ、体内に熱がこもる、うつ熱を疑った。

3.実際に行ったこと

  (1)先ず、クーラーで除湿し、室温を下げた。

  (2)刺鍼

    1.座位
     .1.手の合谷に強く引き鍼
     .2.前頭部全体を散鍼
     .3.肩こりがあり、肩甲骨上角・肩甲間部にツボが出ていた
      ので刺鍼

    2.仰臥位
     .1.元々風邪を引いたりすると喉にくる方なので、中府に刺
      鍼したとたん、物凄い勢いで邪気が出てくる反応があっ
      た。
     .2.熱病の急性症状であるため、内関に刺鍼。
     .3.手の甲に引き鍼をして終了。

4.施術後の変化

   .1.施術中、瞬く間に熱が引いていくことが、患者さんにもよく
    分かったようだ。

   .2.体温は39.5℃から38.7℃に下がり、随分楽になったとのこ
    と。

   .3.表情は明るくなり、生気が出て、浅かった呼吸も深くなった。

   .4.手・足の熱感が大分取れた。

   .5.施術後、1時間程で顔の火照りも治まった。

   .6.その後の患者さんの話では、体温の上がり下がりはあったも
    のの、翌日は37.5℃に落ち着き、だるさは残るものの、元気
    になったとのこと。

5.感想

   .1.うつ熱の解熱に、鍼がこれ程効果があるとは思っていなかっ
    たので、正直驚いた。

   .2.患者さんも鍼で熱が下がったことに驚くと共に、身体が大そ
    う楽になり、喜んで頂けて、励みになった。

   .3.今回は、かなりの高熱に内心オロオロしながらの施術だった
    が、もっと手際良く出来るように努力していきたい。

   .4.目の前で「解熱」という結果が直ぐに出せて、鍼をやってい
    くことのモチベーションが上がった。少しずつ「出来ること」
    を増やしていき、自信へとつなげていきたいと思う。

 以上、長くなりましたが、読んで頂きありがとうございました。
 この症例では、教わったことを組み合わせて施術することで、
 結果を出すことが出来ました。


(3)遊風のコメント


 こういう例では、発汗しているかどうかを見たほうがよいです。

 うなじから手を入れて、首の後ろ側の付け根から肩甲間部上部にか
けて、汗ばんでいないか見ます。

 汗ばんでいなかったら、熱が出られない状況と判断します。本来な
ら、表位から汗が出て放熱するはずなのに、できてない状態。

 たしか漢方では「肌が閉じている」という表現をしたと思います。
その処置は「解肌(げき)」だったかな。

 カゼの葛根湯証系でも見られますが、それ以外でも熱中症や日射病
などでも見られますし、梅雨明け直後の老人にもおおいです。

 梅雨明け直後の老人の場合には、譫語といって、わけのわからない
ことをわめく症状が出ると昔の本にも出てたと思います。

 また、ご指摘のように、冷房などが嫌いな方にもおこります。

 たしか整体の野口晴哉先生の本にも、カゼは冷やすといけないと、
戸締まりしすぎで熱が体にこもってしまった例が出ていました。

 本などの言葉通りに忠実にやりすぎて、現場あわせができない例と
して紹介されていたように記憶しています。

 こういう例で、肩背中が汗ばんでいなかったら、肩背首を触って熱かったら、
そこも散鍼したほうがよいでしょう。

 こういう例では、以下のことが基本になると思います。

1.手の陽経陰経に引き鍼して上衝を降ろす

2.散鍼して表位の肌を開く
3.表位の凝りを緩める

 また、中府に刺鍼するまえに列缺に引いておいたら、中府に刺した
とたんの邪気の量が減った可能性があります。

 内科系急性症状なので、数時間以内に同じ程度以上にぶり返したら
救急医療との連携を考えたほうが良いですが、その後のことや、つぎ
の日の朝のこともしっかり把握しているようで、お見事です。

 とくに、治療後の表情や、つぎの日の朝の体調が良いと予後が良い
ことがおおいです。そのあたりの観察もしっかりされてますね。

(4)おわりに

 初めての症例報告にしては、本当にみごとな内容でした。

 質問などは、「「術伝」掲示板」のほうにおねがいします。


   >>>つぎへ・・・鍼灸症例問答no.2



   >>>目次ヘ・・・・・・・・・症例問答

   >>>このページのトップヘ・・鍼灸症例問答no.1

   >>>術伝HPトップへ ・・・・トップページ

術伝HP内検索:上の@wikiメニューの「wiki内検索」



お知らせとお願い

術伝流鍼灸操体講座で患者さん役を募集

 術伝流鍼灸操体講座は、実践面を重視しています。実際に症状が出て
いる方の治療を見たほうが勉強になります。そこで、講座で患者さん役
をしてくださる方を募集しています。

 くわしくは、術伝流のモデルをみてください。

 よろしくお願いします。

感想など

 感想などありましたら、「術伝」掲示板に書いてください。

 また、「術伝」掲示板でも、旧掲示板「養生の杜」と同じように、
養生についての雑談や症例相談などもしていきたいと思っています。


 よろしくお願いします。

間違いなど

 間違いなど見つけた方は、術伝事務局あてにメールをください。

 よろしくお願いします。

「術伝」症例相談用メーリングリストの参加者募集

 「術伝」では症例相談用メーリングリスト( 術伝ML(muchukand))の
参加者を募集しています。

 よろしくお願いします。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

   >>>術伝HPトップへ ・・・・トップページ

最終更新:2010年08月25日 06:41