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術伝流一本鍼no.49 (術伝流・養生の一本鍼・応用編(1))

カゼの養生

1.基本的に

 カゼは、病を急性期の発作と慢性期の未病に分けた場合には、基本的に、
典型的で、しかも、もっとも一般的な発作になります。ですから、体調が
悪くなったり、体が歪んだりしたときには、カゼを引くことがおおくなり
ます。

 捻挫や打撲したときにもカゼを引くことがよくあります。カゼという発
作を起こすことで、体調をととのえ、歪みを元にもどしていると考えたほ
うがよいぐらいです。

 症状としては、肩甲骨鎖骨から上の表位と、胸内部の上焦で、さかんに
邪が動いていて、熱が出ます。とくに、表位は、太陽位とも呼ばれ、上気
道炎であるカゼの症状が上気道のある部分の体表にあらわれることで、昔
から診断に使われてきました。また、比較すれば、中焦や下焦をはじめ下
半身は冷えていて、中焦には水毒、下焦は虚のことがおおいです。

 治療としては、表位上焦の邪気を引き出すことが中心になります。

 また、大椎あたりに手のひらを入れて汗ばんでいなければ「無汗」とい
い、邪が表位から出にくい状態です。この場合には、表位から発汗をうな
がすように処置していくと、症状がかるくなっていきます。

 カゼも長引くと、体の横側にもツボが出る段階になります。傷寒論にい
う少陽病になるかと思います。この場合には慢性期的な配慮も必要です。
少陽病になる前に対処したいものです。

2.ツボが出やすいところ、ねらい目

2.1. 表位上焦など

 後頚部や肩背などいわゆる表位(太陽位)に出ます。とくに、大椎まわ
り(写真1)と、喉(前頚部)や鎖骨や胸上部などの前側の2カ所にツボが
出ていることがおおいです。

写真1

 胸まわりは、膻中付近の胸骨脇から中府に向かって肋骨を1本上がるた
びに外よりにツボが出ます(写真2)。
 痰がなかなかきれないときには、鎖骨の下側(胸側)にスジバリが出て
いることがおおいです(写真2)。

写真2


2.2. 1)と経絡的に関連するところ

 ノボセや前頭部痛があれば、手陽明大腸経の合谷や手三里など。大椎
ちかくのコワバリや発熱では、手太陽小腸経の後谿やとなりの中渚など。

 喉や胸まわりの急性症状を反映して、手太陰肺経の列缺など。咳が長
引いたときには、上腕の上尺沢(写真3)。

写真3

 下半身の冷えを反映して、足甲3~4間にツボが出ていることがありま
す(写真4)。

写真4

 喉が痛いときには、土踏まずの然谷など足少陰腎経の足首から先にツボ
が出ます(写真5)。灸では、然谷、節紋を使います。が、鍼では、照海
や大鐘のほうが使いやすいでしょう。

写真5


2.3. 腹など1)以外の胴体

 下焦の虚、中焦の水毒を反映して、腹表面や、その背中側にも、ツボが
出ますが、急性期には刺鍼しなくてもよいでしょう。

 長引いたときで水毒が関係している場合には、背の胸椎7~9~11番あ
たりの華陀経に冷えているツボをさがします。そこに深く刺し、しばらく
留め、気を巡らします。温かくなるまで、ゆっくり、大きめに、鍼を動か
すとよいです。

3.手順

3.1. 急性期

 急性期でも症状が落ち着いていれば、表位や上焦の邪を出したあとに、
冷えに灸をします。腹の寒に対する処置はしないほうがよい場合がおお
いです。

 ①あお向けで、合谷などに引いたあと、陰経の列缺など、陽経の外関
などの順で引きます。照海・大鐘や足の甲など足の陰陽に引きます。足
陰陽は、刺鍼したあと灸で対応する場合には、省略します。

 ②うつ伏せは、急性期には省略することがおおいです。大椎まわりを
散鍼してから、シコリをゆるめてもよいです。

 ③座位で、後頚部・肩背の熱いところに散鍼したあと、大椎まわりな
どを中心にこっているところに刺鍼します。そのあと喉、鎖骨、胸まわ
りにうつり、熱いところに散鍼したあと、シコリに刺鍼します。後始末
として、頭に散鍼したあと、手の甲に引き鍼します。

 ④然谷など足少陰腎経、足甲3,4間の順で灸をします。施灸後ノボセ
が再発したら、手骨空に糸状灸をして仕上げます。

 ※ 症状が盛んで座位が無理なら、あお向けのときに手への引き鍼の
あと喉・鎖骨・胸を刺鍼し、うつ伏せで肩背・後頚部を刺鍼し、そのま
ま、頭の散鍼をして、手の甲に引きます。「術伝流・先急の一本鍼」の
「表位」や「上焦」の項目も参考にして下さい。



3.2. 長引いた場合など慢性期

 長引いた場合には、ツボを考慮して慢性期の型で刺鍼したあと、然谷
や足甲3~4間などに灸をします。上衝が見られるときには、まず始めに、
合谷への引き鍼をしたほうがよいでしょう。

 中焦の水毒や下焦の虚、少陽病対策としての体側面のツボへの処置な
どが必要になることもあります。

 また、時間がないときなどは、腹や足などへの刺鍼は省略し、急性期
に近い手順で行う簡略的な処置も可能です。

4.自己養生

 手の井穴にマグレインを貼ったり、足湯したり、熱い汁物を飲んだり
します。なったかぁと思うくらいの初期にすると効果が出やすいです。

ノボセや前頭部痛

 ノボセや前頭部痛のあるときには、母指の井穴。発熱や後頭部痛、肩
やうなじにコワバリがあるときには、小指の井穴。母指と小指の井穴、
左右全部で8カ所を、楊枝の頭ほどのモノで押して、痛いところにマグ
レインの銀を貼ります。そこに糸状灸などをしてもよいです。

以下に書きました。


喉の痛み

 喉の痛みには、足湯をしたり、土踏まずの然谷に温灸をします。然谷
は、靴下の上から貼り付け式ミニ簡易カイロを貼ってもよいです。その
上から、もう1つ靴下をはいておくとよいです。詳しくは、以下。

以下に書きました。


 喉の痛みが有る場合には、土踏まずの然谷あたりに、ツボが出ている
(ピーナッツ位の痼りが有る)ことが多く、その場合には、灸などで、
その痼りを改善できると、解消します。

 喉の痛い場合に、痛い場所は、体の内側では背中に近い側ですね。で
すから、体の内側(陰)で背中側(後ろ)で、足少陰なのかなと思いま
す。

 深谷灸法で、扁桃炎に「陰白」や「足大指内側横紋頭(足親指の内側
の節紋」を使うのも、ほぼ同じ狙いと思います。

肩背に強張りが有る時

 熱い汁物を飲んで、肩背など表位から汗が出れば、症状が軽くなりま
す。トロミがついたものは、冷めにくく、発汗しやすくなります。香り
が良いものは、上衝を下げる効果のあるものがおおいです。

 好みにもよりますが、辛いものは、発汗をうながします(味覚性発汗)。
トロミづけには、葛根(本葛粉)や、くたくたに煮た素麺など。香りづ
けには、生姜、ネギ、シソ、ミント、シナモンなど。筆者は辛いもの好
きなので、唐辛子やワサビも使います。

 余談ですが、葛根湯エキス剤を飲むときには、熱い湯に食材の本葛粉
とともにとかし、シナモンをふると、香りやトロミ、熱さの作用で、効
き目が上がるようです。もともと、葛根湯は、「葛根、麻黄、桂枝、芍
薬、生姜、大棗、甘草」ですし。

 なお、葛根湯は、自汗しているときや長引いたときには、適用外と聞
きます。


以下に書きました。


5.写真付き症例:長引いたカゼ

 カゼが長引いているという人。診察のあと、簡略的な処置をした例で
す。

 診察では、とくに、上衝の程度をみるため、鎖骨まわりのほか、額も
みました(写真6)。また、それらの温度と、足先の温度を比較しまし
た(写真7)。

写真6

写真7

 上衝があったので、まずは、合谷に上衝した邪気を引くことにしまし
た(写真8)。

写真8

 そのあと、胸上部~首を散鍼してから(写真9,10,11)、膻中脇から中
府へのラインに出ていたツボに刺鍼しました(写真12,13,14)。

写真9

写真10

写真11

写真12

写真13

写真14

 つぎに、うつ伏せになってもらいました。長引いているということで、
胸椎7~11番の華佗経を見たら、ツボが出ていたので、出ていたツボに
順に刺鍼しました(写真15)。それから、熱いところに散鍼したあと、
大椎まわりに出ていたツボに刺鍼しました(写真16)。

写真15

写真16

 うつ伏せのまま、頭に散鍼し(写真17)、手甲に引き鍼し(写真18)、
仕上げました。

写真17

写真18



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最終更新:2020年04月29日 21:28