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術伝流操体no.65
【6】自然則篇 (1) 動きの操体の新旧比較
動きの操体の新旧比較

1.はじめに

 さて、今回から「操体の自然則」編に入ります。

 私は、色々な達人の先生達が「操体」として実行しているこ
との共通部分に「操体」はある、少なくとも共通部分が「操体
の自然則」ではないかなと思っています。

 そして、「操体の自然則」と各先生の「個性」が合わさった
ものが、各先生の「操体」ではないかとも考えています。

 そこで、これから、達人の先生達の共通部分から、私が「操
体の自然則」に当たると思ったことを書いていきます。今まで
書いてきたことと重なることも、「操体の自然則」の視点から
書いていきますので、よろしくおねがいします。

 昔、30数年ほど前に操体を習った人や橋本敬三先生の本を
読んで操体を知った人には、今まで私が書いてきたような操体
が本当に操体なんだろうかと疑問を持たれている人もいると思
います。

 そこで、先ず、今回は、動きの操体の変遷を、私の知りえた
範囲で、たどってみます。

2.操体とは、ギュッ・パッ・ストン

 『万病を治せる妙療法 操体法』が出版されて全国的に有名
になった頃、それは私が操体を知り、初めて習った頃でもある
のですが、操体と言うと、次のようなイメージでした。

(1) 動作を左右比較してラクな方の動作をしてもらう

(2) (1)に対して、操者が抵抗を掛けて、数秒その状態を保つ

(3) (2)の後、操者が「はい脱力して」と言って脱力させる

 擬音表現で言えば、「ギュッ、パッ、ストン」。受け手にし
てもらう動作も(目一杯)頑張ってもらう形でしたし、操者も
(目一杯)頑張って抵抗していたように思います。

 橋本敬三先生は「頑張らないで気持ちよい方に逃げろ」と書
いています。が、70年代後半に操体として伝わった方法は、
受け手にも頑張らせる形が多かったように思います。また、今
でも、そういう感じのものが操体だと思っている人が、一般的
には、一番多いと思います。

3.「ギュッ・パッ・ストン」と「皮膚の操体」

 そういう風に思われている操体、「ギュッ・パッ・ストン操
体」と「皮膚の操体」が、何故、同じ「操体」という言葉で語
られるのか、実際に「皮膚の操体」を達人の先生方から受けた
ことのない人は、疑問に思われるでしょう。

 「操体の自然則」について書いていく手始めに、「仰向け膝
倒し」の操体を例にして、ギュッ・パッ・ストンから皮膚の操
体までの間の操体のバリエーションを紹介していきます。

 適切にやれば、ほぼ同じ効果を出せるバリエーションです。
それら一連のバリエーションを全て「操体」と感じてもらえる
ような説明を心掛けていきます。疑問点は質問してください。

3.タイプ1:ギュッ・パッ・ストン

 さて、私が知っている一番古いというか、ギュッ・パッ・ス
トンというイメージに近い、仰向け膝倒しの操法は、以下です。

(1) 左右を比べてラクな方を見付ける (写真1,2)

写真1
写真2

(2) 逆の辛くなる手前の状態にする(写真3)

写真3

(3) そこからラクな方に受け手に自力で動くように指示

(4) 操者は受け手が動いて来るのに頑張って抵抗する (写真4)

写真4

(5) 受け手の動きが止まった所で数秒保つ(写真5)

写真5

(6)「ハイ脱力」と指示する

 辛い方からラクな方へ動きが変わる所で、抵抗する手の置き
方を変えないと(写真4,5)、上手くできませんでした。その
ためか、ラクな方が見つかったら、膝を真ん中に戻してから、
受け手にラクな方に動いてもらうようになっていきました。

 そして、操者も抵抗しやすい方に移動したりもしました
(写真6)。

写真6

 このタイプの特徴を書き出してみます。

 特徴1:仰向け膝倒しという、やりにくい動作そのものの逆
の動作を受け手にしてもらう。

 特徴2:受け手が動かそうとしている膝そのものに対して、
操者が抵抗を掛ける。

 特徴3:適度な所で動かなくなった時に、その姿勢で抵抗し
ている時間は、数秒。この受け手の動きと操者の抵抗が釣り合っ
た時間帯を「タワメの間(ま)」とよぶ。

 特徴4:操者が脱力を指示する。

4.タイプ2:フワー・パッ・ストン

 こういう特徴のため、というか、主に「特徴2」のため、全
身に連動させることができない、つまり、体丸事が連なって一
緒に動いていくような動きができない人が、沢山いました。

 そのせいか、抵抗を掛けながら、操者が「全身に連動させて」
という指示を出すようになりました。

 この辺りは、その全身に連動していく様子を「フワー」と言
う言葉で表現することが多くなり、擬音表現で言えば「フワー・
パッ・ストン」と表現されるような形になりました。この形を
操体だと思っている人が、2番目に多いと思います。

 ただし、「全身に連動させてください」と言っても、初めて
の人は意味が分からないことも多く、上手くできない人も多かっ
たようです(写真7)。そのため、声を掛けて、首の向きなど
を動かしてもらう先生もいたようです(写真8)。

写真7

写真8

5.私には、ギュッ・パッ・ストンは気持よくなかった

 実は、私は、1970年代後半から80年代前半に東京などで知
られていた「ギュッ・パッ・ストン」タイプの操体は、余り好
きではありませんでした。

 その頃までに知っていたヨガや気功太極拳などの他の運動療
法よりも気持ちよくなかったからです。「フワー・パッ・スト
ン」タイプも、「ギュッ・パッ・ストン」タイプよりは、少し
は良いけれど…という感じでした。

 本に書かれている通りにやるよりも、少し動きを変形したり、
タワメの間を長くしたり、脱力を殆どしない方が、気持ちよかっ
たりしました。

◎70年代後半、私が気持ちよさを増やすためにしたこと


(1)動きを少し変えてみる、気持ちよさを探す感じで動く

(2)タワメの間を長くする、気持ちよさが続いていたら、そ
の状態をゆっくり味わう

(3) 脱力をゆっくりする、殆どしない

 橋本敬三先生の本は好きで読んでいて、「考え方としては一
番面白いのに、どうして実技は気持ちよくないのだろう」と、
ずっと思っていました。でも、気になるので、操体の本は集め
ていました。

 そして、出合ったのが『操体法治療室』(初版は柏樹社、現
在は、たにぐち書店)でした。

 読んで、自分がやっていたような変形も、操体では「あり」
なんだと分かりました。「ラクな動きや本に書かれた動きと、
気持ちよい動きが違っていたら、気持ちよい方を選んで動きな
さい」というメッセージも伝わってきました。

 著者の先生に手紙を書きました。そしたら、講習会に来てみ
ないかという連絡が来たので出かけました。20年以上前、80
年代後半のことです。

6.タイプ3:フワー・ポワワン・パッ・ストン

 さて、ここからは、その後、達人の先生方が色々工夫された
領域に入って行きますので、今でも操体を工夫し続けている達
人の先生に直接指導を受けた人以外には、余り知られていない
かもしれません。

 先ず一つ目は、(特徴3)のタワメの間が長い方が気持ち良
いと言う受け手が沢山出てきました。多分、上手く全身に連動
するようになったせいだと思われます。

 それで、その時間を長くするようになったようです。擬音表
現で言えば「フワー・ポワワン・パッ・ストン」と表現される
ような形です。

7.タイプ4:ふわー・ぽわわん・ふっ・くにゃぁ

 次には、タワメの間が長くなったせいか、受け手の中に「パッ・
ストン」という形の脱力を気持ちよく思わない人が沢山出て来
ました。特に、都市部では、多かったようです。

 そのため、「ふっ・くにゃぁ」という感じの脱力でも良いこ
とにせざるを得なくなったようです。擬音表現で言えば「ふわー・
ぽわわん・ふっ・くにゃぁ」と表現されるような形です。カタ
カナ表記よりもひらがな表記の方が似合うようになりました。

 面白いことに、橋本敬三先生が70年代中頃にご自身で一人
操体している時の瞬間脱力が「ふっ・くにゃぁ」型でした。
その頃に仙台NHKが取材放送した動画が残っています。
(『操体法 橋本敬三の世界〜温古堂診療室から』農文協)

 高弟の先生からは「橋本先生の瞬間脱力は、いつ、どこでし
ているのか分からない位だった」と聞きました。

 その後、色々試行錯誤しているうちに、この「ふっ・くにゃぁ」
型の脱力の「ふっ」の部分は、アクビの終わりに口が閉じる時
の動きに似ているのに気が付きました。

 時間的に、とても速く、とても短い動きです。また、閉じて
も、上の歯と下の歯が衝突することはないので、距離的にも、
とても短い動きです。

 橋本先生の動画を思い出し、橋本先生の言う「瞬間脱力」と
言うのは、アクビの終わりに口が閉じるような、時間的に「瞬
間的に速く」「瞬間的に短い」、距離的にも「短い」ものなん
じゃないかなと思いました。

8.タイプ5:遠い所で抵抗

 その次の変更は、遠い所で抵抗を掛けるようになったことで
す。声を掛けただけでは全身に連動できない人が多かったため
だと思います。

 動かしている膝に対して、遠い所で抵抗を掛けるような方法
が生まれました。こうすると、全身に連動しようと思わなくて
も、自然に全身を使った操体になります。

 倒れていくのと反対側の腕を使って抵抗を掛けました。膝が
左に倒れていく場合には、右手を使います(写真9)。

写真9

 腕の置き方によって、つまり、どこに腕を置くのがラクかに
よって、やり方が少しずつ違いますが、要するに、膝を倒すの
と逆モーメントの動きが胴体部分に起きるような動きを腕に作
ればよいのです。

 例えば、腕を腰と反対方向(上)に伸ばしている場合には、
小指を甲側に捻る動きが抵抗になります。

 さて、私が達人の先生方から習ったのはここまでだったと思
います。同時に、皮膚をズラすという方法でも気持ちよさを感
じてもらえることも教わりました。

 次回は、そういう習ったことから、今、私がしている「ラク
な姿勢を少し強調する」までのバリエーションを展開してみま
す。


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最終更新:2016年07月29日 08:43