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術伝流・先急一本鍼・運動器偏 10.肘の痛み

肘の痛みは、手平側から

(1)はじめに

 肘の応急処置は、基本的には膝と同じで、痛みや辛さを
肘頭の周りに感じることが多いです。が、そこだけ刺して
も良くならないことや再発することが多いです。

 肘の治療の基本も、先ず肘の手平側に出ているツボを弛
めることから始めた方が治りやすく再発が少ないです。

 また、膝ほどではないですが、経過が長くなることもあ
ります。

(2)肘の痛みの応急処置の手順

 肘の応急処置も、前半、動作鍼、後始末に分けられます。
痛みが陽経側だけのときは、応急処置も陽経側だけします。
が、経過が長いせいか、ツボや痛みが陰経側にも出ている
ことが多く、そういう場合には、当然ですが、陰経側にも
刺鍼します。

 応急処置の前半では、症状をよく確認した後、先ずは陽
経側を引き鍼してから、手の陰経側で前腕の手首近くに引
き鍼をした後、肘の手平側に出ているツボに刺鍼します。

 動作鍼は、先ず伸展制限、屈曲制限などは膝の場合とほ
ぼ同じです。膝と違って、肘では捻転制限も多く、捻転の
動作鍼もします。

 また、動かして肘頭周りに痛みが出る場合には、そこに
付着している腱の筋腹にツボが出ていて縮んでいるために、
腱付着部が引っ張られて痛んでいることが多いです。その
筋腹のツボに刺鍼し、筋の過緊張を弛めると改善します。

 後始末は、頭に散鍼した後に手甲に引き鍼します。陽経
側だけに刺鍼した場合には、頭の散鍼を省略し手甲に引き
鍼だけします。

1.症状確認

 症状確認では、どの辺りが辛いか(写真1)、どのよう
な動作をしたときに痛みなどが出るか(写真2)、日常生
活で困っていることをよく聞きます。

写真1

写真2

 その1番目と2番目くらいを日常生活に支障が無い位に
改善することを応急処置の目標にします。

 肘の肘頭周りの痛みを訴える人が多いですが、ツボは、
肘の手平側にも出ていることが多いので、上腕、肘、前腕
の陰経側を丁寧に調べます。

2.前半・準備

 応急処置前半・準備としては、手甲に出ているツボに引
き鍼(写真3,4)してから、前腕の陰経側手首近くの列缺、
内関、陰郄などに出ているツボに引き鍼(写真5,6)しま
す。

写真3

写真4

写真5

写真6

 このとき肘を動かせるようなら運動鍼をしても良いです。

 その後に、肘の手平側の手太陰、手厥陰、手少陰の3つ
のライン上で、肘から3cm位上腕よりから15cm位前腕よ
りまでの所にツボが出ていることが多く(写真7)、肩近
くから手首近くの順で刺鍼します(写真8)。

写真7

写真8

 初めの引き鍼に使うツボは、肘の親指側か小指側か捻転
制限かで違います。

 肘の親指側が痛ければ、手甲の1~2間や列缺が多いです。
小指側が痛ければ、手甲の4~5間や陰郄に出ていることが
多いです。捻転制限のときには、手甲の2~3間や3~4間、
内関にも出ます。

 肘の手平側のツボの出方は、膝裏とよく似ています。違
う点は、膝の場合は真ん中は比較的少な目ですが、肘は手
厥陰のラインも多いことです。

 肘のシワから2,3cm上腕よりと前腕よりに多く、それぞれ、前腕よりを下曲沢などと、上腕よりを上曲沢などと仮
称しています。

2. 肘の動作鍼

 できない動作や辛い動作を痛みが出る手前までしてもら
い、引っかかっている所を探します(写真9)。

写真9

 たいていは、その姿勢で、最も伸びようとしているライ
ンに一番多く、次にもっとも縮もうとしているラインに多
いです。辛い一歩手前まで動かしてもらうと、そのライン
が目立つようになります(凹んで見えることも多い)。

 それらのライン上を指で辿り、ペコっと凹んでいる所を
見付け押してみると痛いことが多く、ツボになっているの
が分かります。まれに、麻痺して痛まないこともあります。

 痛い手前の姿勢のまま、そのツボに刺鍼します。刺鍼後、
一度動作を戻してから、再度、制限のあった動作をしてみ
ると、前より少し大きく動くようになっています。

 そこで、もう一度、引っかかっている所を見付けて、そ
の姿勢で刺鍼すると、また少し大きな動作ができるように
なります。それを日常生活に不自由がない位まで繰り返し
ます。

 肘の動作の場合に、引っかかっているシコりがあるライ
ンは、手の陰経陽経全てに可能性があります。

 曲げ伸ばし動作の制限では、出る経絡がほぼ決まってい
ます。親指側が痛む場合は、陽明と太陰に出やすいです。
小指側が痛む場合は、太陽と少陰に出やすいです。動作制
限が重い場合には、肘の近くに出ます。大きく動作できる
ようになると、肩や脇の下の近くや手首の近くに出ます。

 捻転運動制限の場合には、前腕の最も太い部分に出やす
く、少陽と厥陰が多くなります。

3. 腱付着部痛の鍼

 肘頭の近くで直ぐ下が骨で筋肉が殆ど付いてない所が痛
い場合、痛みの原因がそこではなく、そこに付着している
腱の筋腹に痼りがあり、腱付着部を引っ張っているため痛
みが出ていることがあります。

 動作鍼と同じように痛む直前まで動作をしてもらうと、
痛みのある場所に続く凹んだラインが見えることが多く、
それを辿っていくとツボが見つかります(写真10,11)。

写真10

写真11

 その姿勢のまま刺鍼する(写真12)と痛みが消えます。

写真12

 比較すると上腕よりに多く、上腕の一番太い部分辺りに
出やすいです。

 また、写真のモデルの方のように一つの姿勢で痛みが消
えても違う姿勢(動作)のときに痛む場合もあります(写
真13)。

写真13

 やはり、痛む姿勢で刺鍼して改善します(写真14)。

写真14

 この腱付着部痛は、肘だけでなく下が直ぐ骨で筋肉が殆
ど付いていない所が痛む場合などに多く見られます。踵の
痛みでは、脹ら脛にツボが出ます。指や手首の骨上の痛み
では、前腕の一番太い辺りに出やすいです。この3つが、
典型例になります。

 日常生活で困っていた動作をしてもいらい、改善された
か確認し(写真15)、改善しているようなら後始末に移り
ます。

写真15

4.後始末

 頭に散鍼した後に、手甲に引き鍼しておきます。陰経側
にも刺鍼する場合が多いので、治療後に頭が痛いなどの体
の上半身の症状が出ることを防ぐためです。

 余り無いとは思いますが、陽経側だけに刺鍼した場合に
は、手甲の陽経側に刺鍼して終えても構いません。

(3)おわりに

 今まで腰、肩、膝、肘と書いてきましたが、動作制限を
伴う関節周囲の痛みは、基本的に、みな同じです。

 先ず、引き鍼をしながら動かせるようなら運動鍼をしま
す。

 それから、関節周囲のその関節の動きに直接関係する筋
肉の経験上ツボの出やすい所を調べて、ツボが出ていたら
刺鍼します。

 そして、動作制限が残っていたら、動作鍼、場所によっ
ては腱付着部痛の鍼をして、動作制限を日常生活に不便が
ないように改善します。

 おわりに、頭に散鍼し手甲に引き鍼して仕上げます
(陽経側のみに刺鍼したときは手甲への引き鍼だけでよい)。

 だいたい、これで全ての関節まわりの辛さに対処できま
す。

 そこで、次回は、今までのまとめをしておこうと思いま
す。


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