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気がつけば、見知らぬ土地の見知らぬ場所に立っていた。
今一何が起こったのか、ぼんやりとした頭では理解することが出来なかった。
だが、知らない間に持たされていたデイパックが先ほどの出来事が事実だと告げる。

「君たちには、これから殺し合いをして貰いたい」

得体の知れない男から放たれた衝撃的な一言。
人が人の命を奪い合う、日常からは考えられない事を。
生き残るには人を殺すしかないと、男は言った。

無論、そんな妄言に黙って付き合う人間などそういないだろう。
誰が一人の男に飼い慣らされるように殺し合いに興じなければいけのかと、皆が思うだろう。
この、首輪さえ無ければの話だが。

男は自分たちの命をいつでも潰せるように握っている。
人を殺さなければ、死ぬだけ。
圧倒的な力で、その状況を作り出していた。

生き残るには人を殺さなくてはいけないのではない。
死にたくなければ人を殺さなくてはいけないのだ。
誰しもが「人を殺す」という選択肢しか用意されていないまま、この場所に呼び出された。

それでも考える。
本当に選択肢は一つなのかと。
死にたくなければ、人を殺さなくてはいけないのかと。

それでも考える。
目の前に用意された選択肢を黙って取ることが、正しいのかと。
本当にそれで良いのかと。

それでも考える。
彼らなら、どうするかと。
自分は、どうするかと。

どこもかしこも降りきったシャッターと、不必要なまでに輝く電灯で彩られた道を歩く。
恐ろしいほどに人の気配がない商店街の中で、一つだけシャッターの開いている店が見える。
一歩ずつ、一歩ずつ、怪しみながらも遠くにある光の中の光へと近づいていく。
思考は止めないまま、ゆっくりと、ゆっくりと。

辿り着く。
すり硝子の向こうに、ぼんやりと人影が見える。
それを確認し、一呼吸置いてからゆっくりとドアを開けた。




二回目、予想していなかったifに彼は立たされた。
彼も、これからどうするべきなのかを考えていた。
一回目は、何の変哲もないコインで決めた。

出た目は裏、人を殺すことを決めた。
手では数え切れないほどの人を殺し、血を浴びた。
そして、未来を見据える者に殺された。

過程や方法、結末ですら別にどうでもいい。
ただ自分が選んだ道を突き進んだだけ。
望んだわけでも無く、ただ淡々とこなしていただけ。

何も望まない、何も必要ではない。
だったら、また同じように決めればいい。
どうせ何が起ころうと、自分の中では何も変わりはしないのだから。

その時、ぼんやりと見つめていたドアが開く。
中から現れたのは、緑髪の同じ年頃の少女。
警戒しているようで、怯えているような目でこちらを見ている。

「俺は、どうでも良いんだ」

あの時のように、人に語りかける。

「だから、今回もコインで決めることにする」

あの時と同じような、台詞を吐きながら。

「表が出ればこのゲームに抗う」

あの時と少し違う形で、道を決めていく。

「裏が出ればこのゲームに乗る」

親指の爪の上に、ちょうどいいサイズのコインを乗せ。

「たったそれだけの事だ」

勢いよく、弾いた。

一回、二回、三回とコインが回転しながら宙を舞う。
親指からほぼ垂直に上っていくそれが、重力に引き寄せられて少しずつ落下していく。
やがて、ぽとりとコインが彼の手の甲へ落ちる。



出たのは、裏。

武器を取り、目の前の人を殺していく。

たったそれだけのことを繰り返すだけ。

殺していく、殺していく。

それだけ、それだけで良かった。












それは、あの時の話。









.


では、今回は?

この少年を行く道は、裏か? それとも表か?

今回は、そのどちらでもない。

直前で、緑髪の少女がコインを掠め取っていったからだ。

「今、人を殺さなければ生き残れないという作り出された状況に、私たちは置かれている」

一つ一つ、言葉を紡ぎ出す。
溢れ出して止まらない言葉たちが、空気を振るわせる。
ついさっきまで考えていたことを、洗いざらい吐き出すように。

「私たちが取ることが出来る未来はたった一つ、武器を取り殺し合う事だけ」

大半の人間が理解している事柄を、少女は改めて言い直す。
この地における大前提、その前提を飲まない者は人間という毒に殺されるだけ。
多くの人間は生き残るために、やむなくその毒になることを受け入れる。

「でも、私は知っている。未来を変えうる力は誰の手にも有ることを」

だが、彼女は違う。
受け入れるしかないはずの、用意された覆らない未来。
でも、それを覆すことが出来ると彼女は知っている。

「ほんの小さなきっかけと、仲間の力があれば用意された未来なんてのは変えられる」

彼女は知っている、未来を変えた仲間達の事を。
力を合わせれば、未来は変えられると。
実際に一度、仲間と共に未来をつかんだから、知っている。

「私は、誰かに用意された未来を変えに行く。自分の未来を手にしてみせる」

彼らが同じ状況でも、恐らく同じ事を考えるだろう。
自分の未来をつかむため、自分で動く。
不可能なんてないと、信じている。

「あなたも一枚のコインに用意された未来じゃなくて、自分の掴むべき未来を探しに行かない?」

信じている、自分はその力を信じている。
信じているからこそ、他人の力がほしい。
だから、彼女は誘う。

「私と、一緒に」

たった今、どうでもいいと言い放った存在を。

何故か?

だって。



予定調和なんて"ツマラナイ"じゃないか。


.


沈黙。
男は考えているのかいないのか、いまいちよくわからない顔のままだ。
しばらく重い空気が続いた後、男がぼそりと呟く。

「まあ、いいだろう」

短い一言を、告げる。
その言葉には、肯定の意が含まれていた。
その後も特に表情を崩すことなく、淡々と少女へ語りかける。

「コインで決めるのではなく、誰かに言われるように動くのも悪くない」

二回目は、コインでなく誰かに従う。
彼が出した結論を、そのまま少女へ伝える。
少女は、笑った。

「動くのは、あなた自身ですよ」

そう、彼女が彼を操るわけではない。
未来を掴むと決めたのなら、動くのは彼だ。
そこに、自分が介入する余地はない。

「そうか」

相変わらず無表情のまま、男は答える。
そんな男に対し、彼女は微笑みながら会話を試みる。
まずは共に未来を掴む仲間として、軽い自己紹介から語り始めるとしよう。



両者の足は、進むべき道は決まった。

掴むべき、未来を手にするために。

まずは、この用意された未来を変える。

【一日目/深夜/F-6 商店街】
【園崎詩音@ひぐらしのなく頃に】
[状態]健康
[装備]なし
[所持品]基本支給品一式、ランダム支給品×3
[思考・行動]未来を変え、未来を掴む。
[備考]祭囃し編終了後

【桐山和雄@バトル・ロワイアル】
[状態]健康
[装備]なし
[所持品]基本支給品一式、ランダム支給品×3
[思考・行動]コインを奪った詩音に従い、自分で動く。
[備考]本編死亡後




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実験開始 桐山和雄 [[]]
実験開始 園崎詩音 [[]]

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最終更新:2012年12月06日 21:31