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この世には、ごく少数であるとはいえ『危険な状況』を愛好する主義者が存在する。
この男もまた、例に漏れずスリルと快感を嗜好する危険な人物だった。
生き死にをかけた『ゲーム』に参加させられ、その結果命を落とした――最期は、ひどくあっけなかった。
勝利を掴み取ることは叶わなかったが、惜しいところまではいったといえるスコアを遺した。
それは一人の『プレイヤー』としては十分以上の合格点。
しかし、それで満足できるほど手塚義光という男は器の小さな男ではなかった。
まだ、足りない。
どうせなら最後まで生き残らねば、やはり真の勝利とはいえないだろう。
――折角のゲームなのだ。遊びに妥協をすることはしたくないと、手塚は思っていた。
だから、今度こそ念願の勝利を勝ち取って見せようじゃないか。
誰でも殺して、生き残る為にならどんな悪どいこともして、外道と呼ばれても止まることなく突き進もう。
死んだ筈の手塚がどうしてこんなことを考えられるのか。
その理屈は単純に――彼が、どういう訳か二度目の生を与えられたから。この一点に尽きる。

手塚義光は、鬱屈とした不気味な森の中を物怖じすることのない堂々さで闊歩していた。
口元には誰が見ても『そうだ』と分かるような好戦的な三日月を描いて、瞳にもギラギラという光が走っている。
手塚はこの実験において、生き残る道を選んだ。
躊躇う様子など刹那も見せずに、それが正解であるという結論に一瞬の迷いも要さずに決めて見せた。

「ハハッ、神様ってのもいい趣味してやがるよなぁ! ったく、ありがてえぜ」

死んだ人間は生き返らない。今日びファンタジー世界でも常識とされるような通説だ。
人類の歴史の中でも死者の蘇生はタブーとされている。にもかかわらず、神様とやらは自分に生きる道を再び与えたのだ。
探せばもっと善良な人間がたくさんいるだろうに、よりにもよってこの手塚義光を選んだ。
神の本性が垣間見えた気がして、手塚にはどうしてもその事実が可笑しくて堪らなかった。
スカリエッティとかいう男も、面白いことを考えるものだ。
前の『ゲーム』よりも難易度は段違いだろうが、手塚義光を昂らせる材料は前以上に満ちている。
窮屈なルールが緩い分、何も考えずに殺し合うことができるというのもまた、好評価の理由となる点であった。
――良いねえ、これじゃあまるで戦争だ。
手塚の口元が、獲物を前にした猛禽類のように、引き裂くような笑顔を象る。
もしも見ている者があったなら、彼への説得行為は無意味であるとすぐにでも悟ったことだろう。
何故なら彼の表情が、心からこの実験を楽しんでいるそれだったからだ。
手塚義光はつまらない説得で動くような人間ではない。
主催者の駒、なんて事実を気にするほど手塚は無駄にプライドの高い人間ではなかったし、逆にもう一度こういう機会を与えてくれた一点においては感謝してもいいくらいだった。

とはいえ、手塚には別段叶えたい願いが存在しない。
蘇らせたい人間もいなければ、急いで必要な物品も無いし、不死の肉体にも特に興味はない。
彼が欲しいのは――勝利の肩書きだけだ。

「こんな当たりも引けたことだし、試し撃ちの一つくらいしてみたいもんだねえ」

手塚義光の持っている武器は、当たり支給品の典型的パターン通りに銃だった。
だがしかし、それは只の銃ではない。
科学と学生の街・学園都市で製作された、手塚の知る銃器のどれよりも優れた性能を持つ未来銃である。
能力を失った第一位の超能力者が『仕事』の上で用いた代物が、手塚の手に現在渡っていた。
銃についての知識を人並み以上には持っている手塚は、この銃の軽さにまず驚かされた。
支給品の説明書を見て、学園都市なんて場所で作られたと知った――信じがたい話だったが、やはりこれはありがたい。
そして自分の手持ちのカードの強さを確認するためにも、早く誰か人間に向けてこいつを使ってみたかった。
しかし生憎、まだ誰とも出会うことは出来ていない。
最初はセオリー通りにひ弱なガキなんかが出てきてくれれば、万事OKというものなのだが。

ガキ、という単語で思い出した。
手塚義光には、必ずこの手で殺めたいと思える人間が一人この実験に存在する。
『ゲーム』の際に自分と一戦を交え、階段から共に転げ落ちさせることで自分を殺害した高校生の少年。
御剣総一。別に自分を殺されたことに怒っている訳ではないが、やられっぱなしなのは戴けない。
やられたらやり返す――それは男として当然のことなのだから。


名簿を見てその名前を確認した瞬間、手塚は込み上げる笑いを圧し殺すのに苦労したものだった。
女と一緒に奮闘して、自分を殺して、勝利は目の前だったのにこの様か。
無様だな、と笑ってやりたい。
仕返しとばかりに銃弾を撃ち込んで、虫の息のあいつをそんな風に嘲笑うのも悪いことではないだろう。
むしろ――最高に、そそる。

「生き返ってる死者は俺だけじゃねえみてえだが――高山のおっさん。こいつには注意しねえとな」

高山浩太。
自信家である手塚でさえも、彼の戦闘経験と技能は優勝を目指す上での脅威と言わざるを得ないものだった。
油断をしていれば、こちらが殺られる。
彼を相手するなら一切の油断を排除して、万全の体勢で臨まなければ間違いなく痛い目を見るだろう。
あの人となりは嫌いではないのだが――生き延びられるのは一人だけなのだから、仕方がない。

(地図の真ん中に塔があるようだし、そこにいってみっか)

目立つ場所なら、自然と他の参加者も集まってくるだろう。
それを一網打尽にしてやれば、自分の勝利に大きく近付ける筈だ。
今頃既に数人くらいは脱落しているのだろうし、この実験、案外勝利するのは余裕なのかもしれない。
上機嫌の手塚は、近くで息を潜める二人の女に『目を隠されている』ことに気付かぬまま、森を抜けた。


【一日目/深夜/G-8 森】


【手塚義光@シークレットゲーム-KILLER QUEEN-】
[状態]健康
[装備]一方通行の銃@とある魔術の禁書目録
[所持品]基本支給品一式、ランダム支給品×2
[思考・行動]
0:生き残る。
1:時計塔に向かい、そこで参加者を殺す


◇ ◇


手塚義光は確かに、人を殺すことに何の躊躇いも覚えない危険な男だった。
しかし、それでも彼はまだ人間だった。
性格がどうであれ、彼には何の不可思議な能力もなければ、並外れた戦闘能力を保有するというわけでもない。
だから、手塚は自分のすぐ近くに二人の女性がいることに気付くことが全くできなかった。
隠れる様子もなく、どうぞ見てくださいとばかりに立っていた二人の気配を感知することさえも不可能だった。
――いや、気配くらいはあったかもしれない。
ただ、それを気のせいとして片付けてしまっていたのだ。
自分が『目を隠されている』こと。それを感じ取るには、手塚はまだまだ及ばなかったようだ。

「……ふぅ、任務完了」

小声で呟くのは、目付きの悪そうなパーカーの少女。
年齢は高校生くらいだろうか、端から見ればかなり冷たそうな人間に見える。
その隣で退屈そうにしているのは、金髪が特徴的な女性だった。
若々しい外見だが、間違いなくパーカーの少女より年齢を重ねているだろう。
この二人は、つい数十秒前まで手塚義光から逃れるため、彼の目を隠すことで身を守っていたのだ。

「凄いのねぇ、右衛門左衛門のヤツも真っ青じゃないの、これ。まぁ礼だけ言っておくわ」

礼を言う、なんて言いながらもその動作に感謝の様子は毛ほども見受けられない。
しかしパーカーの少女も、彼女がどういう人間であるかは数分ばかりの邂逅である程度理解したつもりだった。
一言で言うなら、喰えない女だ。
殺し合いに乗るつもりはないらしいが、彼女の場合は正義や道徳に則るのではなく、ただ興味がないからそうしているのだろう。スカリエッティの実験などどうでもいい、流れに身を任せるわ――彼女は最初そう言った。
なんだこの女はとパーカーの少女が辟易している最中に手塚義光が現れ、慌てて少女が能力を使って難を逃れたのだった。
やたらと傲岸不遜なこの女は、しかしそれほどの戦闘能力を持っていない。
散々だ、と思わず少女が呟いてしまっても、誰にも責められた話ではなかっただろう。

――少女の名前は、木戸つぼみという。
仲間内でのコードネームは『キド』。
自分と同じような境遇にある人物たちを集めた『メカクシ団』の団長にして、『目を隠す』能力者である。
その能力は文字通り、相手の目を隠す。
こちらの姿が認識して貰えなくなる能力、こんな状況では非常に役に立つ能力といってよかった。
幼い頃はこの能力に脅かされたものだが、今ではこういう風に『道具』として利用することができる。
彼女もまた、成長をしていた。

「否定姫、だったか。あれだぞ、右衛門左衛門って奴に会ったらちゃんと命令しろよ!? 殺し合いに乗るなって言えよ!? 元忍者なんてどうやって倒せばいいのか本当に分からないからな!!」
「五月蝿いわねぇ……分かってるわよ。勝手に暴れられても困るもの」

女は否定姫と名乗った。
偽名なのは明らかだったが、名簿にもそう書かれている以上は詮索をしても無意味だとキドはすぐに悟った。
彼女は会うなり、『私の腹心が多分他の参加者を殺してまわってるから気をつけてね』なんて宣いやがったのだ。
当然、殺し合いに反逆する身のキドにしてみればたまったものじゃない。

「……面倒臭いわぁ」

そう呟いた否定姫に、彼女は言ってやりたかった。

(お前のような奴にいきなり出会って、溜め息をつきたいのはこっちだよ!!!)


【木戸つぼみ@カゲロウプロジェクト】
[状態]健康
[装備]なし
[所持品]基本支給品一式、ランダム支給品×3
[思考・行動]
0:殺し合いはしない。なるべく多くの人数で脱出する。
1:否定姫と行動。ああもうこいつめんどくさい。
2:左右田右衛門左衛門、仲間たちを探す
※遊園地にいる間からの参加です
※『目を隠す力』の制限については、後の話に一任します

【否定姫@刀語】
[状態]健康
[装備]なし
[所持品]基本支給品一式、ランダム支給品×3
[思考・行動]
0:流れに身を任せる。死なないように善処はする
1:キドと行動。
2:仕方ないから右衛門左衛門と合流し、彼に殺し合いを止めるよう命令を下す
※参戦時期は少なくともとがめ死亡前のどこかです


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実験開始 木戸つぼみ [[]]
実験開始 否定姫 [[]]
実験開始 手塚義光 [[]]

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最終更新:2013年03月19日 11:49