♡ ♡ ♡ ♡
「なぜわたしは生きておるのだ?」
女の名はとがめ。
尾張幕府家鳴将軍家直轄預奉所軍所総監督で不可能とされる四季崎記紀の完成形変体刀の蒐集を十一本まで遂げた者。
だが、そこまで達成したところで本懐を悟られ、左右田右衛門左右衛門の凶弾に倒れたはず。
最期の瞬間は自分でも嫌というほど覚えている。
死んだ瞬間を覚えているというのもおかしな話だが。
「何でも願いが叶うという報酬……確かに魅力的な話だが……」
彼女は迷う。
『何でも』願いが叶うというのであれば幕府の将軍を殺すどころか幕府そのものを消すことすらできるかもしれない。
しかし、今際の際で自分の本心に気付いてしまった。
仇であったはずの自分の父親を殺した刀の息子に惚れてしまった。
気付いてしまった以上、もう嘘をつくことはできない。
殺し合いの最中とはいえもう一度、会えるのならば……
「――ええい、例え武器があったところでわたし一人では何もできん。まずは誰でもいいから接触せねば」
障子紙の強度と自負するだけあって彼女のひ弱な体では何をするにも不向きだ。
頼むから積極的な者とは出会いませんように……と歩き出す。
そして、彼女は出会う。
♠ ♠ ♠ ♠
「なんでとがめがここにいるんだ?」
青年の名は鑢七花。
虚刀流七代目当主にして四季崎記紀の作りし完了形変体刀が一本。
今は不可能とされる完成系変体刀を全て集めた英雄とされながらも尾張幕府将軍を殺した咎でお尋ね者の身。
彼の主にして思い人であったとがめは十一本目を集めた時点で左右田右衛門左右衛門の凶弾に倒れ、腕の中で果てるところを見届けたはず。
そして現在、紆余曲折あって彼はとがめの命を奪った左右田右衛門左右衛門の主、否定姫と同行していたはずなのだが。
「何でも願いが叶うっつってたが……死人の蘇生ってのもできるのかよ……」
彼の生きた時代の技術では作成は不可能な変体刀を見てきたためこういう状況への適応力はそこそこあるらしい。
もっとも、彼の元から無頓着な性格に起因しているのかもしれないが。
しかし、適応できるからといって、対応できるかどうかは別問題。
「ごちゃごちゃ考えるのも面倒だ。とりあえず歩くか」
残念なことに七花は頭脳労働の類は得意ではない。
戦闘のこととなれば話は別なのだが。
この身一つで戦えるのだから、と支給品の確認もせず歩き出す。
そして、彼は出会う。
♢ ♢ ♢ ♢
「なんでライダーがここにいるんだ?」
青年の名はウェイバー・ベルベット。
かつて冬木の街で行われた聖杯戦争に参戦し、彼のサーヴァントであり王であるライダーの夢が半ばで尽きるのを見届けたはず。
だからこそ、英霊の座に還った彼がここにいることはあり得ないのだ。
そして、スカリエッティという男から言い渡され、放り込まれた殺し合いという状況。
聖杯戦争開始時であったならば恐怖し、縮こまり、震え上がっていただろう。
しかし、今は違う。
「殺し合いというのは前の聖杯戦争と変わらないけど……アイツが素直にはいそうですかと乗るわけがない」
心のどこかでは怯えながらも冷静に考えをまとめていくウェイバー。
王の覇道を常に隣で見てきたのだ、それなりに胆力も強化されようというものだ。
そして、訪れた再会のチャンス。
自身が仕えた王ならばこんな状況でも己の覇道を邁進することぐらい考えるまでもなくすぐにわかる。
「突っ立ってても始まらない、まずは動かないと」
自分の体が頑丈ではないことはわかっている。
それでも、逸る気持ちを抑え、歩き出す。
そして、彼は出会う。
♣ ♣ ♣ ♣
「何故余は生きておるのだ?」
男の名はライダー。
またの名を、征服王・イスカンダル。
第四次聖杯戦争にてライダーのクラスを授かり、最後の最期まで己の覇道を進み続けた男。
自身の持つ最強の宝具をもってしてもアーチャーに敵わず、彼の宝具で心臓を貫かれ、果てたはず。
それなのに今、殺し合いに召集させられてしまっている。
「殺し合いというのは聖杯戦争と何ら変わらんが、それにしては人数が多すぎるのう……マスターもいるというのも
ルールとは外れておる」
豪放磊落な性分ではあるが、だからといって猪突猛進に突き進むわけではない。
前回とはルールが違う現状、まずは冷静に分析を進める。
「神威の車輪はあの小娘に破壊されたままのようだし、王の軍勢も魔力供給がどうなっているかわからない今迂闊に使えぬな……仕方あるまい」
いつも移動に使っていた宝具はキュプリオトの剣が無いのもあって呼び出せない。
そうでなくとも、サーヴァントとして呼び出されていない以上、魔力の供給元がどうなっているかも不明だ。
しかし、聖杯という報酬が提示されている以上、彼のやることは変わらない。
己が覇道を持って進み続けるのみ。
そして、彼は出会う。
♢ ♠ ♢ ♠
「えーっと、上井場でいいのか?」
「だから、うぇ・い・ば・ー!ったく、なんで自分の名前を説明するだけでこんな時間かけなきゃいけないんだよ……」
出会った彼らはお互い乗り気ではないことを確認しあい、情報交換に移ったのだがウェイバーが名前を伝えるだけで一苦労。
刀集めの旅で改善したとはいえ、元々人を識別するのが苦手だった七花にとってはこれでも努力しているのだが。
「……まあ、東洋人相手でここまでできれば上出来か」
「ん、あんた異国の人間なのか」
「いや、英語で話してるんだしそんなの聞けば一発で……ちょっと待てよ」
がさごそとウェイバーは名簿を取り出し七花に見せる。
「これ、読めるか?」
「いや、さっぱり……そもそもなんだこれ」
「僕の名簿だ。七花のはどうなんだ?」
「えっと……おれのはこれだが」
つられて七花も自身の名簿を取り出してウェイバーに見せるも何が書いてあるかはさっぱりだった。
導き出された仮説が一つ。
「つまり、話し言葉は通じるように魔術的な処理がされている……?」
七花を置いてきぼりに一人考察を進めるウェイバー。
しかし、情報が無い現在、これ以上の考察は進まない。
そのとき、ウェイバーの脳裏にある考えが閃く。
「そうだ、支給品だ。僕のはそこまで変わったものはなかったけど七花のはどうだったんだ?」
「支給品……?そういや見てなかったな」
「え?普通は最初に確認するものだろ?」
「だっておれ刀とかあっても使えないし……」
ここでようやく、ウェイバーは虚刀流の存在を知る事になる。
ちなみに、件の七花の支給品は変哲のない金属バットとと自動式拳銃と紅い槍で金属バットや拳銃はウェイバーを満足させられるものではなかったが、槍を見て驚く。
「これは、ランサーの宝具……サーヴァントでもないのに使えるのか?」
それはただの槍ではなく、ランサーの宝具の一つ、破魔の紅薔薇。
接触している物の魔力を打ち消せる代物だが人間が使えるかどうかはわからない。
近くに魔力の通ったものでもあれば別だったが都合良くそんなものは存在してくれない。
ウェイバーに長槍が扱えるはずもないし七花も武器は使えそうにないとのことだったので結局七花に返す運びとなった。
どちらにも探し人がいることだし、これからどうしようかという話になったところで、突如轟音が響いた。
「北の方か……行くか?」
「僕は構わないし、ライダーのやつも多分真っ先に向かうだろうけど……とがめって人、かなり体が弱いんだろう?」
「あー……それでもわかってて踏み込んで行くような人だったけど……でもそのときはいつもおれがいたし……」
「そうか、なら離れよう」
「いいのか?」
「ライダーは簡単に死ぬようなやつじゃないし、別れたところでいいことはなさそうだしな。だったら一緒に行動した方がいい」
「上井場がそう言うならいいけど、結局どこに向かうんだ」
「……南の商店街かな。物資の補給ができそうだし、同じことを考えた他の人と接触できる可能性もある」
「承知した。せっかくだから聞くがそのらいだあって人、どんな人だったんだ?」
「そうだな、――」
どうせあいつのことだからこんな場所でも思う存分振る舞うのだろうから近いうちに噂が入ってくるかもしれない。
なら、実際に会ったとき怯まないようにありのままを伝えてやろう。
生きて後世に王の伝説を語り継ぐこと、それが今なおイスカンダルの臣下であるウェイバーの役目なのだから。
【一日目/深夜/E-5 森 南側】
【鑢七花@刀語】
[状態]健康
[装備]なし
[所持品]基本支給品一式、金属バット@ひぐらしのなく頃に、デザートイーグル(6/6)@現実、予備弾薬(30発)、破魔の紅薔薇@Fate/Zero
[思考・行動]
0:とがめを探す
1:ウェイバーと共に南へ向かう。
2:交渉などの面倒なことはウェイバーに一任する
※原作終了後からの参戦です
※ウェイバーと簡単な情報交換をしました
【ウェイバー・ベルベット@Fate/Zero】
[状態]健康
[装備]なし
[所持品]基本支給品一式、ランダム支給品×3(魔術的なものはない)
[思考・行動]
0:ライダーを探す
1:七花と共に南へ向かう
2:情報を集める
※原作終了後からの参戦です
※七花と簡単な情報交換をしました
※スカリエッティによって何かしらの魔術的な処理がされていると考えています
♡ ♣ ♡ ♣
「イスカンダルというのか?名簿にはライダーと書かれてあったが……」
「そんなものは聖杯戦争であてがわれたクラスの名前に過ぎぬ。好きな方で呼べばよい」
「そ、そうか……して、聖杯戦争というのは?」
ライダーにとってとがめの、とがめにとってライダーの話は驚嘆すべきものではあったがスムーズに情報交換は進む。
お互い死んだ者同士、これ以上驚くこともないだろうということで少しでもこの場所で生き延びるための情報を吸収しようとしているのだ。
「わたしらと同じように死んで生き返った者も他にいるのかもしれんな……そうでなくとも他の世界の者と会うだけでも何か手がかりが得られるかもしれぬ」
死ぬ前に変体刀を作った四季崎記紀と話していたのもあって「自分たちがいたのとは違う世界」の存在も容易に考えつくことができた。
しかし、名簿を見た限りでは日本人らしくないカタカナを使った参加者は少数。
しかも、一部はライダーの知り合いというのだからかなり絞られてしまった。
「誰かに会うというのも手段としては悪くないがもう一つ確認するものがあるのではないか?」
「む、支給品か」
ライダーに言われてはたと気付きデイパックを漁るとがめ。
そういえば確認を済ませていなかったと手を突っ込み、ふとライダーの方を見ると彼も同じくまさぐっていた。
どうやら支給品の確認を済ませていなかったのはとがめだけではなかったらしい。
そしてライダーが何かを取り出した瞬間、とがめのデイパックから何かが飛び出す。
「賊刀・鎧……!」「ブケファラス……!」
「「これを知っておるのか……?」」
二人の声が重なった。
しばし無言になり、説明を簡単に済ませられそうなブケファラスのことをとがめに伝える。
そして、とがめも賊刀のことを先程説明した完成形変体刀の一本で特徴やライダーなら纏えるだろうことも伝えたのだが――
「つまらぬ」
と一蹴した。
「確かに攻防一体の鎧というのは素晴らしい。
しかし、全身隈無く覆ったところで何になるというのだ?
そんなものを喜んで着るのは臆病者だけだ。
小細工に頼ったところで臣下が集まるわけがなかろう。
己の力でもって覇道を進むのが王としてのあり方よ。
それに、そんなものを着てしまってはブケファラスに跨がれんではないか」
最初は怒るような口調だったが最後は馬を心配しているような口調になったあたり、どちらも本気ではあるのだろう。
これ以上何を言っても無意味だろうと割り切り、次の支給品を確認しようとしたが突如響いた轟音によって中断させられることとなった。
「北のようだな、向かうか」
「ふ、普通は離れるものではないか?複数ならまだしも一人であれだけの轟音を立てるような猛者だったとすれば行くのは死にに行くのと同義だぞ?」
「馬鹿者、そういう者を臣下にするにはまたとない機会なのだぞ」
そう言って、ひょい、ととがめを小脇に抱えると愛馬に跨がる。
「さあ行くぞブケファラス!」
「ちょっと待ってくれ、わたしは体が丈夫なぁああああああああああああ!?」
体が弱いと言ったにも関わらず無視して突っ走るライダーとブケファラス。
かつて彼のマスターだったウェイバーの都合も気にすることなどなかったのである意味当然の結果ではあるが。
走りながらライダーは思う。
(再びウェイバーと会える機会がやってこようとはな……それにあの小娘もいるのなら正してやらねば)
【一日目/深夜/E-5 森 北側】
【とがめ@刀語】
[状態]健康
[装備]なし
[所持品]基本支給品一式、ランダム支給品×2
[思考・行動]
0:七花を探す
1:情報を集める(名前にカタカナが入っている人は優先的に会いたい)
2:下ろしてええええええええええええ
※原作死亡後からの参戦です
※ライダーと情報交換をしました
【ライダー@Fate/Zero】
[状態]健康
[装備]ブケファラス@Fate/Zero
[所持品]基本支給品一式、賊刀・鎧、ランダム支給品×2
[思考・行動]
0:覇道を突き進む
1:とがめと共に北へ向かう
2:余裕があればウェイバーを探す
3:セイバーに会うことがあれば王としてのあり方を正したい
※原作死亡後からの参戦です
※とがめと情報交換をしました
♡ ♠ ♢ ♣
運命の悪戯か出会えるかもしれなかった彼らは相棒を換えて離れていく。
残された者同士、散った者同士、これから何が起こるかは未だわからず。
時系列順で読む
投下順で読む
キャラを追って読む
| 実験開始 |
鑢七花 |
[[]] |
| 実験開始 |
とがめ |
[[]] |
| 実験開始 |
ウェイバー・ベルベット |
[[]] |
| 実験開始 |
ライダー |
[[]] |
最終更新:2012年12月25日 09:36