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少年にとってこれは、あまりにも厳しすぎる現実だった。
彼がその意識を覚醒させた場所は、どこかの学校と見えた。
古びていて、俗にお化け屋敷といわれるような雰囲気を醸している。
不気味さも星空の下ともなれば多少は映えるのだろうが、この曇天ではそれも望めない。
ただただ不気味なだけの建造物を前に、彼は目を覚ました。
寝起き一発、いかにもな建物を目にして正直心臓が跳ね上がった。
……なんでよりによってこんなところなんだと、思わずにはいられなかった。

しかし、すぐに少年はまた違う意味での絶望を覚えることとなる。
彼の脳裏には未だ新しく、あの白衣の変態によるセレモニーの記憶が刻み込まれていたからだ。
聖杯という願いを叶える道具のために、最後の一人になるまで殺し合いをする。
そして変態――スカリエッティは、見せしめと称して金髪の女性の首輪を爆破してのけた。
悪びれる様子など欠片ほどもなしに、ごく当然のように行った。

(嘘だろ……! また、あんなことをやらなくちゃならないのかよ……っ!?)

確かに嘆かわしくはあったのだが、実際他の参加者に比べて驚きは薄かったように思う。
彼は知っているからだ。これと非常によく似た、殺し合いの『ゲーム』を。
あの時も首輪で身動きを制限されたし、誰かの死などそれこそ一生分といっていいほど目にして来た。
そんな彼でも、一つだけ強い衝撃を受けたことがあった。
それは参加者名簿に記載されていた、自身の知る者たちの名前だ。
――そもそも、知る者『たち』の名前があること自体がまずおかしい。
あのデスゲームから生き残ることが出来たのは、自分と愛する女性・八幡麗華だけだった筈である。
にも関わらず、そこには死した者たちの名前があった。
綺堂渚、手塚義光、高山浩太――あるはずのない名前が、刻まれていた。

(分からない……けど、俺にはやることがある)

少年――御剣総一は、殺し合いに乗る気など全くない。
聖杯に託したい願いも思い当たらなかったし、何よりそんなやり方で願いを叶えるのは『ズル』だ。
そんなことをしたら――今はいない彼女に、怒られてしまう。
乗る気は更々ない。が、何としても遂げなければならない『目的』はあった。

それは、前回のゲームで共に生き残った八幡麗華を守ることだ。
自分のことを好きだと言ってくれたあの人を守り、ここから帰すことだ。
何があったとしても、それだけは誰かに譲るわけにはいかない。
たとえこの命を投げ捨ててでも――やらなきゃいけないことなのだ。
決意を顕すように、固く拳を握り締める。
この拳が砕ける時は、全てを果たした時だ。
それまでは、ダイヤモンドのごとき固さで握り続ける。
高校生には不相応な決意を胸に、ひとまず目の前の不気味な学校へと入ってみることにする。

足音をなるべくひそめて歩きながら、総一は思っていた。
名簿に記載されていたあるはずのない名前についてだ。
彼らを信用すべきか否かは迷うところだが、総一はとりあえず信じてもいいと思っていた。
死人が生き返るなんて有り得ない。
けれど、もしも本当にそうだったら、散った命まで助けられるかもしれないのだ。
渚や高山は、自分たちの味方だった。
あの二人は頼れるし、合流してもいいだろう。
問題は残る一名、手塚義光。
手塚は乗ってくる、既に総一の中には確信に近いものがあった。
前回のゲーム。
手塚は、ルールの盲点を突いた策を使って自分たちを追い詰め、仲間を殺した。
頭も切れて悪事を躊躇うことがない、現在時点では、手塚義光を信頼する要素など欠片すらも見当たらない。

――もしも。
もしも手塚のような人間が他にもいるのなら。
その時には、この手を汚さなければならない時だって来るのかもしれない。

(…………)

覚悟はあった。
人殺しの汚名を背負うくらいの覚悟は、あのデスゲームで生き残った時にはもう持っていたものだ。
後はその覚悟を、うまく使いこなせるかどうか。
人の命を軽んじる最低な真似に走らないかどうか――。
総一は、麗華が殺されたなら怒り狂う自信がある。
きっと、彼女を殺めた人物を無慈悲に殺すだろう。
ただの想像だけでこんなに黒い感情がみなぎってくるのだ、目の前で実際にそれが広げられたらどうなるか。
……想像するだけでも、恐ろしくなった。

弱気なことを考えるのはやめだと、総一は自らを叱咤する。
そんな暇があるなら、一歩でも多く足を進めた方が有意義なのはよく知っている。
これは殺し合いだが、同時に如何に仲間を集めるかが重要なファクターでもあるのだ。
以前のゲームでだって、仲間の存在がなければ今頃自分はここにいないだろうと、総一は心から思える。
御剣総一は弱い。
ちょっと心が強いからといって、所詮はどこにでもいるような高校生だ。
できることには限りがあるし、ほんの少しのことで揺らいでしまうほどに脆弱だ。
だから、仲間が要る。
困難を共に乗り越え、一緒に戦ってくれる仲間の存在が必要不可欠だ。
自分のためにも、仲間を集めることは大切なことだった。

(しっかし、ほんとに不気味なとこだな)

歩くたびに、ぎしぎしと床が軋んで音を立てる。
老朽化が進んでいる証拠だろう。
恐らく、ちょっと強めな地震の一発でも来れば呆気なく崩れていくこと請け合いだ。
漂う冷たい空気に顔をしかめながらも、総一はとある場所を目指して歩く。
それは、『屋上』だった。
こんなボロい校舎に屋上があるのは驚きだったが、さっき外から見上げた時に確かに『柵』が見えた。
屋上にまで上ってみれば、とりあえず辺りを見渡すことができる。
それだけで、かなりのアドバンテージになるのではと、総一は思ったのだった。

……その時。
総一は突然の閃光に思わず眩しそうに目を覆う。

なんだ――?
閃光弾にしては、音も光も破壊的なものではない。
が、あの蒼白い光は科学的な兵器によるものには見えなかった。
そう、あれは確かに――――

「雷……だよな?」

雷。自然現象。
この殺し合いの場にはどうも相応しくない言葉だが、それ以外に説明のしようはないだろう。
それに何より驚いているのは、当の御剣総一なのだから。
訳が分からない。突然の落雷。これは本当に、気象のせいなのか?
窓から空を見ると、確かに空は相も変わらずやや黒い灰色の曇天。
だが――空の機嫌は悪いらしい。

「ま、そういうこともあるだろ。天気に時と場合は関係ないし」

総一はどこか腑に落ちないものを感じながらも、あくまで常識的に考え、納得することにした。
当然だろう。彼の常識では、自然現象を操る術など存在し得ないのだから。
そんな阿呆らしいことを妄想するくらいなら、何かをした方がいいに決まっている。
――総一は知らなかった。
この空間が、ジェイル・スカリエッティの用意した現実世界とは少々異なる世界であることを。
この空間では、自然現象の変化は起きないことを。
そして――常識なんてものが、この殺し合いにおいてどれほど価値のないものであるかを。

でも、彼は幸運だった。
未だ雷鳴の音を響かせる外に出るのは憚られたが、少しならと屋上へ行く方針は変えていなかった。
ぎしぎしと音を立てる床にも大分慣れた足取りで、屋上への階段を上ろうとし――
そこで、桃色の髪の毛が特徴的な少女とぶつかった。
まるで漫画みたいなぶつかり方だった。
おわっ!? と間抜けな声をあげて、バランスを崩した総一は後ろに倒れる。
結果、少女が総一の上に馬乗りになるような形になってしまったのだが。

「なっ……どうした? 何が――」

総一は驚いて目を見開く。
少女の衣服は所々が焦げていて、片腕はやや痺れを残しているようなぎこちなさがあった。
表情は必死そのもので、事態は一刻を争うのだとまるで状況を理解できない総一にも悟らせる。
彼女は荒れた息を抑えながら、少し強めな声色で叫ぶように言った。

「逃げないと……! 今なら、まだ間に合いますから!」

少女の剣幕に圧されて、総一は急いで立ち上がる。
逃げるといっても、体格の差もあるゆえに少女の手を総一が引く形になった。
普段ならばここまで気軽に女性の手を握るものではないと躊躇もすれど、場合が場合だから仕方がない。
少女の手を引いて、何が何だか分からぬままに御剣総一は走る。
――耳に、誰かの笑い声が届いた気がした。


   ◆    ◇


「うそ……フェイトさん……!」

聳え立つ旧校舎。『三年C組』とプレートが貼られた教室の中で、キャロ・ル・ルシエは座り込んでいた。
その瞳からは透明な雫が一筋流れており、とてもじゃないが大丈夫なようには見えない。
無理もなかった。彼女は、自分の母親同然の、姉のような存在を目前で惨殺されたのだから。
不安になるくらいの静寂が、逆に今のキャロにはありがたかった。
この静けさの中でなら、冷静に現実を見ることが出来るからだ。
逃げずに向かい合うことが大切なのは、如何に幼くともキャロだって知っている。
そんなことは、機動六課でこなす仕事の中でとっくに学んだことだ。

「どうして、どうしてこんなことに……!!」

しかし、悲しむなというのは無理な話だった。
恩人の死に無感情になれるほど、キャロは大人ではなかった。
がくりと脱力して、傷だらけで横たわるフェイトの姿。
そしてその首が弾ける瞬間を――キャロはしっかりと見ていた。
スカリエッティという既に捕まった筈の男と、まさかこんな形で再び関わることになるとは思わなかった。
何より、日常というものがこんなにあっさり弾けてしまうものだなんて、信じたくなかった。

「っ――フェイト、さん……」

悲しみは当然ながら計れないほど大きいが、同時に怒りも大きい。
大切な人をあんな風に殺されて、踏みにじられて、怒らない方がおかしいだろう。
泣きじゃくりながらも、彼女は心の中で誓っていた。
必ず、ジェイル・スカリエッティを逮捕すると。
そして、フェイトさんの無念を晴らしてやると――確かな『強さ』をもって、誓っていた。
キャロ・ル・ルシエはただの少女ではない。
機動六課という部隊に所属する、立派な魔導師だ。

(……フェイトさん、私――ううん、私達、頑張りますから……!!)

泣いてばかりもいられないと、涙を拭って顔をあげるキャロ。
状況の把握がてらディパックを開けると、見覚えのあるデバイスが出てきた。
その名は、アスクレピオス。
殺し合いの主催者・ジェイル・スカリエッティが起こした『JS事件』にて、母親の為にと戦っていた心の優しい召喚士が用いていたデバイスだ――そして、名簿には彼女の名前もあった。
同じ召喚士のデバイス。殺し合いを打倒する為の武器としては、頼もしい逸品だ。

――次に、キャロはまずこの旧校舎の屋上へ行ってみることにした。
廊下に出てすぐに階段を発見したため、正確に屋上の存在を認知していたわけではない。
上っていってみたら、たまたまそこが屋上だっただけのこと。
だから、『屋上へ行ってみる』という表現は正しくない。
だが――重要なのは、キャロが屋上へ行ってしまったという事実だった。


「――ヤハハ」


突然野外へ出て若干の驚きを見せるキャロだったが、それはすぐに安堵へと変わる。
屋上には、他の参加者の姿があったのだ。
その人物はお世辞にも常識人とはいえないような身なりをしていた。
上半身は裸だし、太鼓のようなものを身につけた、なかなかに個性的な姿だ。

「――" 神 の 裁 き ( エ ル ・ ト ー ル ) "」
「っ!?」

しかし、結論から言うとキャロは彼と友好的な会話をすることなど出来なかった。
キャロが声を掛けるよりも前に、男は攻撃行動に出たのだから。
蒼い稲光が走る。そのあまりに強大なエネルギーに、キャロは思わず息を呑んだ。
隊長格クラスの力を持っている――そう思った時、キャロは行動へ移っていた。
相手は明らかに敵対の意思がある。
殺し合いをどう考えるかは別問題として、ならば一度力ずくででも無力化しなければならない。
走る雷撃をシールドで防ぎ、フリードリヒに攻撃をさせようとした。
だが――キャロを襲ったのは、激痛だった。

「が、ぁぁああああっ!?」

威力は、確かに防御を貼ったおかげで本来のものより大分衰えてはいた。
それでも、その一撃はあまりに規格外だった。
『神(ゴッド)』の名を欲しいままにしていた男の『裁き』は、生半可なそれで防ぎきれるほど易しくなかったのだ。
戦闘不能までのダメージは避けられても、右腕がひどく痺れている。
これでは、しばらくまともに動かすことさえままならないだろう。
なんて威力――キャロは痛みに耐えながらも、ちゃんと自分を保った。

フリードリヒが火炎を吐く。
それは『神の裁き』に比べればちっぽけな攻撃だが、効き目がないということはない筈。
ブラストフレア。が、それはキャロの考えた通り、眼前の神を倒すにはあまりに非力が過ぎる。
放たれた雷はあっさりと、綺麗に火炎と相殺した。
だが、それは予想通り。
少々気が早い気もしないでもないが、相手の実力を考えれば出し惜しみをするのが愚策であるのは明白だ。
衝突により生じた煙が晴れる瞬間には、屋上の荒廃したコンクリートに巨大な魔方陣が生まれ出ていた。


「――蒼穹を走る白き閃光。我が翼となり、天を駆けよ。来よ、我が竜フリードリヒ――竜魂召喚!!」


その時、初めて神は目を細めた。
先程までは小さな姿をしていた白い竜が、巨大な姿へと変貌を遂げていたのだ。
白銀の竜――フリードリヒの真の姿である。
フリードリヒは神へと明確な敵意を示し、威嚇するような素振りを見せる。
若き天才竜召喚士。幼い身なりをしていても、その実力は決して伊達ではなかった。
フリードリヒの顎が開かれ、再び火炎が生まれる。
だがその威力は先程とは格が違う。
AAランク魔導師の炎熱砲撃にも匹敵する威力の一撃が、神へと放たれた。
今度は、手応えがある筈だ――。

「え…………!?」

手応えが、比喩抜きで本当に存在しなかった。
神は迎え撃とうともせずそこに直立したままだった。
当然直撃するブラストレイ。
が、ブラストレイは神の肉体へ少しの痛手さえも与えられぬまま、通り抜けていった。
そう、まるで『自然現象』へと攻撃を行ったように――――!
次の行動へ竜が移らんとすることを、神は許さない。

見えなかった。
空から降り注ぐ雷光の如く速さで、神はフリードリヒの前にいた。
手を翳す。フリードリヒの猛攻は、全てすり抜けて無意味と化した。
そして蒼い雷が走る――


「"4000万V(ボルト)"……"発電(ヴァーリー)"!」


眩しいほどの雷光が、屋上を光で埋め尽くした。
雷がその姿を消した時には、もう弱々しく白銀の竜は横たわっていた。
白銀を黒く焦がして、真っ黒焦げといった様子で、戦闘不能の大怪我を負っていた。
ただの一撃で――キャロ・ル・ルシエの相棒にして剣は、砕かれたのである。

「フ、フリード! フリードっ!!」
「ヤハハハハ……他愛ないな、小娘。青海人にしてはよくやったと言っておいてやろう」

神は倒れた竜に駆け寄るキャロを、次の標的と定めた。
頼みの綱はもうアルザスの守護竜・ヴォルテール以外にない。
が、それを待ってくれる道理などないだろう。
死を覚悟したキャロは、しかしその瞬間響く聲に反応することだけはできた。

「――右へ避けろ」

若い男の声だった。
あまりにも唐突な言葉だったにも関わらず、キャロはすぐに右へと身体を飛び退かせた。
雷の速度があれば、キャロをその間合いから即死させることも可能な筈。
それをしなかったのは――飛来する異物が、神の意識を引き付けたからだ。

「逃げろ。コイツはオレがどうにかする」

攻撃の主は、屋上へと上ってきたらしい褐色の男だった。
キャロは走る。最後に、フリードリヒの顔が見えた。
意識はまだうっすらと残っているのだろうか。
戦闘不能の身体を振るい立たせて、命からがらの一撃を神へと見舞う。
当然、通り抜ける。通じない。
雷が――瞬いたのを見た。

「"3000万V"――"雷鳥(ヒノ)"!」

涙は流れなかった。
託された命のバトンを、無駄には出来ないと思ったからだ。
彼女はそうやって己の使い魔と――永遠の離別をした。


【フリードリヒ@魔法少女リリカルなのはStrikerS 死亡】



    ◇     ◆


アーチャーは、上空で瞬いた雷を見てすぐに理解した。
サーヴァントクラスの実力を保有した術師がいることを、一瞬で理解した。
アーチャーの視力は鷹眼だ。だが、視野の外のものまでは流石に見られない。
それでも、歴戦の経験とサーヴァントとしての判断から、いち早く屋上の脅威に反応することができたのだ。
恐らく行われているのは交戦。
どちらが優勢でどちらが劣勢、またこの雷を使う者が悪なのか善なのかまでは分からない。
重要なのは、戦闘が行われている事実があることなのだ。
以前のアーチャーならば、善も悪も関係なく、危険分子として遠距離からの爆撃で制圧していただろう。
どちらも殺してしまえば、これ以上事が荒立つこともない。
――しかし、今の彼は違った。
悪のみを伐つために、誰かを守るために行動していた。

気配をなるだけ消して近付くと、少女の声が聞こえた。
雰囲気から察するに、雷を使っているのは声の主である少女ではないらしい。
そしてそちらがこの場で『悪』に属する者――討伐すべき存在である。
それだけ分かれば十分だった。
慣れた動作で、とある武装を投影する。
名に猟犬の二文字を冠されたその性質は、対象を殺すまで永久に追い続ける確殺の剣。

「――右へ避けろ」

少女を軌道から待避させた後に、投影した宝剣を射出する。
剣の使い方ではなかったが、彼は元より騎士(セイバー)ではなく、弓兵(アーチャー)。
贋作使いらしい、贋物の戦い方の方が性に合ってもいた。
空を駆けた剣の名は――" 赤 原 猟 犬 ( フルンティング ) "。
剣は雷を遣う妙な風貌の男の肩に、一筋の赤い線を走らせて飛び去った。
地面に倒れていた白き竜が、男へと猛攻をかける。

(……奇怪な)

するとどうだ。
その攻撃は全て男を通り抜け、男は痛くも痒くもない様子で再び雷を発生させた。
見ただけで凄まじさが優に想像できる雷撃を喰らい、黒焦げ状態の竜は――最期にアーチャーの方を見た。
言わんとすることは分かった。
その為にも、まずはコイツを仕留める――――。

「……ちっ」

旋回して、赤原猟犬は舞い戻る。
対象を殺すまで止まらない宝剣。
贋作と言えど、こと戦乱においてその性質は非常に有用だ。
そして、赤原猟犬は雷遣いの身体にかすり傷とはいえ傷をつけた。
宝具による攻撃は通る――それなら、殺すのは容易い。

「頭に乗るなよ青海人――"雷獣(キテン)"!」

獣を模した雷が、赤原猟犬に衝突する。
腐っても宝剣の紛い物、赤原猟犬も直ぐには壊れないが、やがてその刀身を破砕させる。
並の魔術師には出来ない芸当だ。
その実力はどう見積もっても――サーヴァントに匹敵する。

「……よくも、この神・エネルの血を流させてくれたものだな……」

エネル。それが、この男の真名。
魔力の流れはまるで感じないところを見るに、彼の扱っているのは魔術ではないのかもしれない。
魔術にあらぬ神秘――そういうものも、この世には在るのだから。

「悪いが、貴様にはここで死んで貰う。生かしていては、どれだけの犠牲が出るか解らないからな」

アーチャーは続いて、両手に二本の剣を投影する。
陰陽の夫婦剣。引き合う性質を有したその名は、干将と莫哉だ。
これもまた宝具の贋作。
神・エネルに届く攻撃を打つことの出来る、紛い物の神秘――!
それを見たエネルは、ここで初めてその手に持った『武器』を用いんとする。

「隙有りだ、神(ゴッド)」

アーチャーはその隙をしっかりと勝機へ繋げる。
人間を逸脱した速度で疾駆し、目指すはエネルの首。
振り上げた刃を降り下ろそうとして――そこで、想定外の事態が発生した。
彼は油断をしていないつもいだったが、エネルの能力をまだまだ見誤っていたのだ。
黄金の棍棒が、しっかりと干将の斬撃を受け止めていた。
そこから、棍棒を回すようにしてアーチャーのバランスを崩しにかかってくる。
巧い――そう思わざるを得ない程に、華麗な動きだった。
おまけに、サーヴァントであるアーチャーさえも押されるだけの腕力まで持ち合わせている。

「失せよ」

棍棒が勢いよく突き出され、受け止めた莫耶の刀身が耐えきれずに砕ける。
未練など微塵たりとも有さずに残骸を投げ捨て、地面を蹴りつけてその場から離脱した。
そして、干将を投げつける。
だがそれは苦し紛れの猛攻にあらず。
贋作遣い(フェイカー)にこそ許される、奇跡を冒涜する爆発の一撃――。

「" 壊れた (ブロークン) "――" 幻想 (ファンタズム) "」
「――――ッ!!」

エネルは頭の悪い男ではない。
自らの力を絶対とは捉えているものの、それに驕り続けることはしなかった。
最初に赤原猟犬で傷を負った時から、万全の警戒を払っていた。
更にここで幸いするのが、エネルの身に宿るとある能力の恩恵。
アーチャーの世界には存在しない埒外の果実――悪魔の実。
エネルは『ゴロゴロの実』を食べたことで、神にも等しい力を得た。
雷は――アーチャーの投擲よりも速い雷速で、動くことが出来る!

「とことん出鱈目だな……!」

が、安堵している暇はない。
雷速での逃避が可能なら、その速度を攻撃にだって活かせる筈。
その速度に先んじた行動をするには、相手の行動を読まなければならない。
サーヴァントの超常さをもってしても、雷の方が速い。
次に投影するのは、万古不当の英雄王より見取った武器。
しかし、投影を行おうとしたところでアーチャーは、エネルの不気味さに気付く。
ゴロゴロの実の恩恵で、奴は雷と同速で移動する怪物になっている。
――近距離でも遠距離でも確実に相手との間合いを詰められる。
そう考えるなり、アーチャーは詠唱を行っていた。

「 ――I am the born of my sword.( 体 は 剣 で 出 来 て い る ) 」
「ヤハハハハ! 見せてやろう、神の一撃を!」

やはりか、とアーチャーは詠唱しながら思う。
エネルの選択した一手は接近戦ではなく、遠距離からの砲撃。
常に二通りの対策を講じねばならないのは面倒だが、怠れば死あるのみだ。
だが心配はしていない。
アーチャーはこの『楯』にある程度の自信を持っていた。
何しろ、かのクランの猛犬が必殺の魔槍とも拮抗し得る硬度を持っている。
雷程度にそう易々と打ち砕かれる障壁ではない。
互いの秘術が――発現する。


「――" 神 の 裁 き ( エル・トール ) "ッッ!!」


「――" 殲 天 覆 い し 七 つ の 円 環 ( ロ ー ・ ア イ ア ス ) "!!」


攻めるのは神の放った蒼き雷。
当たれば神秘の権化たるサーヴァントとて只では済まない火力を内包する神・エネルの十八番。

守るのは淡き色を持った花弁の楯。
贋作ではない、アーチャー自身の所有するそれは、キャスタークラスの防御力にも匹敵する。

衝突した二つの神秘。
神の雷と花弁の楯――その結果は。


「――……残念だったな。アイアスの護りはそう易く砕けはしないぞ」


アーチャーは無傷で変わらずそこに立っていた。
殲天覆いし七つの円環の防御は、エネルの必殺の一撃を真っ向から防ぎきり、ダメージを一切通さなかったのだ。
これが霊長の守護者だった男の戦い。
『自分』を有さず、ただひたすらに贋作に頼り、しかし勝利を勝ち得る合理的なそれ。
過去の自分との決闘によって一つの答えを得たアーチャー――エミヤシロウには、迷いがない。
それは自分の歩む道への迷い。
彼が正義の味方に憧れるきっかけとなったある男と全く同じ、正義への迷い。
現実と理想の狭間の苦しみ。
それが――今のアーチャーにはない。
これだけで、その強さは計り知れないものになる――!

「――――」

エネルは沈黙したまま、アーチャーを黙って見つめる。
声も出ないか? と挑発の台詞を吐こうとした丁度その時、エネルはその表情を変えた。
それは絶望でも哀願でも激昂でもなく――笑顔だった。
アーチャーもこれには驚く。
自らを神と名乗るこの男は、かなりの高いプライドを持っているように見えたからだ。
ならば、必殺の一撃を防がれれば少しは表情を変えるかと思った。
それで上手く取り乱してくれれば御の字だ。
そこを突いて、じわじわと気長に攻めていけば殺すのは簡単だろう。
なのに――どうして彼は笑う?

「ヤハハ――成程、これなら確かに貴様の勝ちのようだな」
「……何が可笑しい? 少なくとも、貴様は頼みにしていたカードを一枚失った立場の筈だぞ?」
「ああ、確かにひどく腹立たしい。だが――神が安い挑発に乗ってばかりと思うなよ」

投影。
何故だか分からないが、ひどく嫌な予感がする。
投影するのは決して砕けぬ絶世の名剣(デュランダル)。
ここで仕留める――が、贋作がその手に収まるより早く、エネルは一撃を放っていた。

「"神の裁き(エル・トール)"」

走る雷電。
チッと舌を打ちながら、アーチャーはデュランダルでその攻撃を受ける。
が、絶世の名剣は砕けない。
この一振りは、史実においても抜群の強度を誇る逸品だ。
なればこそ、ただの一撃で破壊できる筈が――

「――"2000万V"」
「何ッ!?」

声は背後だった。
反射的に叫んだ直後、絶世の名剣へと降り注いでいた蒼い雷が消えた。
アーチャーが振り返りざまの一撃を叩き入れんとしたその時には、もう遅かった。
霊長の守護者の敗因は――やはり、神の底を計ったこと。


―― " 神 "エネルが敗北した最大の理由は、雷とゴムの相性の悪さに尽きる。
当時の実力と現在の実力では異なるとはいえ、エネルの実力は彼を敗北へ追いやった一味よりずっと高いのだ。
懸賞金・推定五億以上――彼のいた世界で換算すれば、それはまさしく絶対へ限りなく迫った領域。
もしもモンキー・D・ルフィがゴム人間でなければ、彼らは神を打倒し得なかっただろう。
サーヴァントとも互角に渡り合う棒術と腕力。
雷速での超高速移動。
おまけに、その超速から繰り出されるゴロゴロの能力。
アーチャーのようなサーヴァントであっても、慢心を心のたとえ片隅にでも置いていてはいけない存在。
だからアーチャーの敗因は、彼らしい合理的な計算にあった。
計算をしたところで、基準となる数字の定義が正しくなければ、それは解にはなり得ない。




「――――" 発電 ( ヴァーリー ) "!!!!」




蒼い雷光が瞬く。
サーヴァント・アーチャーの肉体を雷が駆け抜け、彼に逃走を余儀なくさせた。
咄嗟の防御も、物理攻撃にあらぬ雷相手では全くの無意味。
アーチャーは片手に持ったままの絶世の名剣を、"壊れた幻想"により爆弾と変え投げつける。
エネルはそれを" 神の裁き "で相殺するも、その隙に既にアーチャーは逃げおおせていた。

「……逃げたかァ」

エネルは身体についた砂埃を片手で払いながら、ぼそりと呟く。
だが彼に追おうとする様子はない。
如何にエネルが超高速での移動を可能とする力を持っているとはいえ、それはあくまで線の移動に限られる。
どこかに隠れている相手を捜しながらでは、移動の効率も落ちてしまう。
それに、エネルには一つの冷静な懸念もあった。
あの白髪の男は、かつて自分を打ち負かした『麦わらのルフィ』とは正反対の戦い方をするように見えたのだ。
正面からではなく、あの手この手を使って確実にこちらの首を刈りに来る。
奴が用いる奇怪な武具は、"自然系(ロギア)"の性質を貫通してダメージを与えてくるというのもあって。
完全な不意討ちを受ければ――流石に不味い。

「ヤハハハ――――だが」

エネルは笑いながら、とん、と片手に持った棍棒で薄汚れたコンクリートを叩く。
そして、彼は一つの言葉を呟いた。
――その刹那に、彼は屋上から姿を消す。

「裁きの対象は、別に貴様でなくてもいいのだぞ?」


   ◇    ◆


――絶望は、天から降りてきた。


「…………なんで」


キャロ・ル・ルシエの震える声を聞いて、なお上機嫌そうにエネルは笑う。
フリードが開いてくれた未来への道。
白髪の男の人が開いてくれた未来への道。
共に走っていた少年はまだ名前も聞けてはいないし、祿な情報交換もできてはいない。
とりあえず一刻も早くここから逃れること――それが第一だったのだ。
なのに、" 彼 "はそこにいた。
あまりにも絶望的な存在として、立ち塞がっていた。

「ヤハハハハ。なぁに、少々遅れたが裁きを下しにやってきたまでだ」

裁き。――その単語が、どうしても勘に障った。
フリードを殺して、こんなゲームに自分から乗って。
それで自分を神様と気取る。
倒さなきゃならないと、キャロは心から思っていた。
心配はいらない。
自分には、目の前の絶対的な存在にも届くもう一匹の仲間がいる。
ヴォルテール――ヴォルテールなら、この男の人を倒すことができる。
フリードを殺した人を、倒せる。


「ヴォルテール――――――――っっ!!!!」


キャロ・ル・ルシエは一つの事項を忘れていた。
スカリエッティがあの『セレモニー』で言った、一つの『留意事項』。
強すぎる力を制御するために、主催側が独自に定めた基準に基づき能力の制限を行うと、確かに彼は言っていた。
が、フェイトの惨殺を見た瞬間、そんなことは脳裏から消えてしまっていたのだ。
文字通り、吹っ飛んでいった。
それでも、このままもう少し『時間』が心の傷を癒してさえくれれば、気付くことは出来たのかもしれない。
しかし、エネルという強敵を前にして、冷静さを欠いていてはそれも叶わない話。
故に、キャロは。

「……どうした? ご自慢の技は不発か?」
「な、なんで! ヴォルテール! ヴォルテ―――ルっ!!」

自らの最後の味方に、裏切られた。
ヴォルテールの召喚は制限により不可能とされていたのだ。
フリードリヒは神の雷に焼かれた。
ヴォルテールはスカリエッティの能力制限により姿を現せない。
――この瞬間、目の前の存在への対抗策は全て潰えたのだった。

「ヤハハ! 終いならば、そろそろお喋りも終わりにしよう――さよならだ」

雷が生まれる。
避けようもない。
防御を貼ってもほぼそれが無駄に等しいことはもう実証済み。
右腕は未だに痺れている。
走って逃げようにも、雷の方がどう考えたって速い。
涙が頬を滴り落ちた。
少女の身には余る、絶望だった。

「――待てっ!」
「ぬぐぅ!?」

次の瞬間、目の前のエネルが突然苦悶の声をあげた。
雷が消える。予想外のダメージに、一瞬だけ思考が真っ白になった。
足下に落ちていたのは、ゴムで出来ているらしい弾丸。
それは、忌まわしい敗北の記憶を嫌でも想起させる。

「……実弾じゃ、ない……?」
「グ……! ゴム、か……!」

御剣総一は、ゴム弾の入った銃をエネルに向けて真っ直ぐに構えていた。
そのゴム弾には、実は当たった対象に電流を流す効き目もあったのだが――それは雷人間のエネルには通じない。
しかし彼の苦し紛れの一手は、エネルに最も大きなダメージを与えることができた。
ただ――それも、その場しのぎのものでしかない。
一撃一撃のダメージがあれど、それで目の前の存在を殺せるかと言えば別問題だ。
逃げられない。
総一はすぐに判断する。
『二人』じゃ、逃げられないと。

「一つだけ頼んでもいいかな」

キャロを押し退けて、怒るエネルの前に立ち塞がる総一。

「八幡麗華さんっていう女の人に会ったら――伝えておいてくれるかな」

彼は、自分ではなくキャロが生き残る未来を選んだ。
出会って数分しか経過していない少女を守るために、命を擲つことを決めた。
それは彼の自己満足的な自己犠牲。ある種のエゴイズム。

「――ごめんねって」

キャロにはその意味合いが理解できた。
この少年は、自分を助ける為に残ることを選んだのだ。
自らの命を擲ってまでして、自分を守ろうとしてくれているのだ。
命のバトンを――繋ごうとしている。

総一がどうして覚悟を決めたのか。
麗華との再会の未来を捨ててまで、ほぼ見ず知らずに近い少女を助けるのか。
彼はもともと、自分の命を軽んじる面がある。
誰かを守るためになら、自分はどうなってもいいと。
麗華と出会ってからは少しは変わったかもしれないが――根本は変わってはいなかった。
守れるならいい。
二人で逃げたってどっちも死ぬのなら、この命を捨てよう。
総一はゴム弾入りの銃を黙って構え、ふっと笑った。

キャロは走る。
言葉を交わしている時間さえも惜しかった。
一人の人間が我が身を呈して、開いてくれた逃げ道だ。
これを感傷や罪悪感で無下にしてしまうことは、何よりいけないことだと思った。
だから、走る。
惨めであっても構わない。
ただ、この両足を生きるためだけに――動かす。


「 " 神 の 裁 き ( エ ル ・ ト ー ル )"!! 」


雷が、御剣総一の肉体を焼いた。
崩れ落ちても即死ではなく、まだ少し意識がある。
銃を拾おうと手を伸ばすが、その手を上から降り下ろされた棍棒で貫かれた。

(ご……めん、なさい……麗華、さん……――)

最後は、微笑だった。
死を待つばかりの御剣に、エネルは手を向ける。

「" 1 0 0 0 万 V " " 発 電 ( ヴァーリー ) "」



【御剣総一@シークレットゲーム-KILLER QUEEN- 死亡】



キャロは、総一が死んだのだと何となく分かった。
一度響いた雷の音。
そして、だめ押しとばかりに響いた二度目の轟音。
しかし振り返ることはしない。
振り返っては、彼の想いが無駄になってしまう。
足を止めれば、きっと恐怖で足が動かなくなってしまう。
見ず知らずの自分を助ける為に命を落とした少年の最期の言葉を、伝えなくてはならない。
八幡麗華という人物に。
彼は謝っていたと伝えなくてはならない。
生きよう。ヴォルテールは出せないし、相棒のフリードも失ったけど。
だけど、生きるために足掻くことだけはできる筈なんだ。

(エリオ君、スバルさん、ティアナさん、ルーちゃん…………)

彼らは今、どこで何をしているのだろう。
生きていてほしい。皆で元の場所へ帰るんだ。
スカリエッティを倒して、今度こそ日常を取り戻すんだ。
機動六課の一員として――立派に戦い抜いてやろう。
自分の為に死んだフリードと少年の分も、みっともなく足掻いて足掻いて――


「――ヤハハ」


――え、と口は声を出した。
そこには悪魔がいた。


「い、やぁあああああああああああっっっ!!!!」


キャロは半狂乱になって走る。
エネルの肉体をすり抜けて、みっともなく生きるために走る。
その懸命な姿さえも、エネルの心を動かすには至らない。
エネルは無言で右手を翳すと、嗜虐的な笑顔を浮かべて呟いた。


「 " 雷 獣 ( キテン ) " 」


キャロの身体を、狼を模した雷が撃ち抜いた。
かはっ、と息を吐いてキャロは倒れる。
まだ息はあるかもしれない。
放っておいても死ぬだろうが、慈悲をかけるのも悪くはないだろう。

「ヤハハ……喜べ。私の寛大さに感謝しろ」

倒れた桃色の少女へ、再度手を翳す。
もう奇跡は起こらない。
御剣総一は死んだ。
アーチャーは手負いで、もう安心しきっている頃の筈。
仮に奇跡が起こっても、彼女はもうじきに終わる。

「――" 神 の 裁 き ( エ ル ・ ト ー ル ) "」

雷が、止めの一撃となった。
意識のないキャロの心臓の鼓動は、これで完全に停止する。
悪徳の雷神は、自らの挙げた成果に満悦の様子だった。

「ヤハハハハ……この分なら、優勝も然程手間は掛からなそうだな」

棍棒を地面に突き、まるで本物の雷神さながらの堂々さで、君臨するエネル。
少女を守ろうとした竜を殺し。
少女を守ろうとした少年を殺し。
その二つの思いを同時に踏みにじってやった。
そのことへの罪悪感は微塵もない。
彼がここまで傍若無人に徹する理由はただ一つ。
そいつはとてもシンプル。
だからこそ、彼以外には到底理解のできない理屈。


「我は神なり、故に絶対」


"神"エネルは笑う。
微塵の曇りもない自信に満ちた面構えで。
二人の残骸を交互に見やりながら、彼は最高の上機嫌に浸っていた。


【キャロ・ル・ルシエ@魔法少女リリカルなのはStrikerS 死亡】



【一日目/深夜/H-2 旧校舎・野外】


【エネル@ONE PIECE】
[状態]腹部にダメージ(小)、上機嫌、絶好調
[装備]のの様棒@ONE PIECE
[所持品]基本支給品一式、ランダム支給品×2
[思考・行動]
0:優勝して、聖杯を手に入れる。なお叶えたい願いはまだ未定
1:"麦わら"には警戒しつつも、必ず殺害する
2:参加者を殺してまわる
※空島編、敗北後からの参加です
※ゴロゴロの能力は射程距離に僅かな制限がかかっています
※自然系能力者ですが、神秘に相当する攻撃は通る模様です


    ◇     ◇


「……済まない」

そして、電撃のダメージを未だ体に残したアーチャーは窓からその光景を見て、歯噛みする。
守れなかった――答えを得ても、所詮現実はこんなものだ。
もしももっと速くこの光景に気付ければ、無理をしてでもあの男を殺していた。
彼へ慢心したことが、そんな「らしくない」行動が、全ての原因となったのだ。

「仇は必ず討つ――だから、今は眠れ」

殺し合いの破壊は、エミヤシロウという男の主義に懸けてでも絶対に棄てられないことだ。
その過程で立ちはだかった殺人者は、これまで通り一切迷わずに殺す。
特にさっきの男のような、放っておけば致命的な脅威になる存在。
世界と契約した守護者。その在り方通りの行動を取るだけのこと。
この殺し合いという『世界』に存在する邪悪を、討ち滅ぼすのみ。

「衛宮士郎――」

名簿は既に確認済みだ。
が、そこには到底信じられない名前もあった。
死んだはずの人間の名前までもが、ごく当然のように並べられていた。
過去の自分――忌まわしき残骸だった少年もまた、然り。
彼から答えを得た今は、別段無理に排除しようとはしない。
そして、アーチャーにとって――否、エミヤシロウにとって大きな存在はまた別だ。

「――衛宮切嗣」

あの地獄から、自分を救い出してくれた男。
あまりにも幸福そうな顔で、一人でも多く助けられてよかったと、そう言った男。
自分に正義の味方という在り方を植え付けた、根元たる男。
死んだはずの彼までもが、この空間に存在している。
会おうとは思わない。切嗣と今更語り合うことなど、何があるというのか。
自分のすべきことは、ただ一つ――

「アンタの理想を、オレが叶える」

――理想を引き継ぐ。
あの月下の縁側で誓った約束を果たそう。
一度は彼と同じく理想に破れた。
だが、今の自分ならもう一度追えるかもしれない。
果てのない理想を。
終わることなき、剣の丘を。

「行くか」

身体にまだ若干の痺れを残しながら、アーチャーは立ち上がる。
鬱陶しい感覚だが、行動不可能ではない。人間程度なら、これで十二分に倒せる。
――答えを得た英雄は、二人の命を救えなかった無力を噛み締めながらそれでも前を向く。
目指すは、理想の果てを――。


【アーチャー@Fate/stay night】
[状態]全身にダメージ(中)、全身に痺れ(小)、魔力消費(小)
[装備]なし
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]
0:もう一度、『正義の味方』を目指してみる
1:殺し合いに乗った参加者の排除。
※UBW、消滅直後からの参加です
※投影に制限はありませんが、魔力消費が大きくなっています
※固有結界『無限の剣製』は使用可能ですが、これも魔力消費が大きくなっています
※投影能力と引き換えに、ランダム支給品は与えられていません



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実験開始 キャロ・ル・ルシエ GAME OVER
実験開始 御剣総一 GAME OVER
実験開始 アーチャー [[]]
実験開始 エネル [[]]

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最終更新:2013年03月19日 12:47