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理想があった。
誇りがあった。
ブリテンという国の王であるということに。多くの民を救うことができる存在であるということに。

――己のためでなく、人のための、王という偶像に縛られていただけの、小娘にすぎん。
――栄光だの名誉だの、そんなものを嬉々としてもてはやす殺人者には、何を語り聞かせても無駄だ。
――アァァァァァサァァァァァァーーーーーー!!!
――令呪を持って命ずる。セイバー、聖杯を破壊しろ。

なのに、何故こうなってしまったのか。
私の王としての行いが原因なのか。

友よ、私をそんなに恨んでいたのか?
切嗣、聖杯を欲するあなたを信じたのは間違いだったのか?
ライダー、私はそんなに王にふさわしくなかったというのか?

民を救えず、国を滅ぼしたのは私が王になったことが間違っていたからなのか?
私は、―――――王であってはいけなかったのか?


「全く、これどういうことよ?」

赤い瞳に銀の長髪は呟く。
彼女こそイリヤスフィール・フォン・アインツベルン。聖杯戦争の御三家であるアインツベルン出身のマスター。
小さな体とは裏腹に聖杯戦争のために作られたホムンクルスとして膨大な魔力を秘めた少女である。

だが、そんな自分も既に聖杯戦争そのものからは脱落した身。
自身の兄であり弟でもあるマスター、衛宮士郎のサーヴァント、セイバーの手により自身のサーヴァント、バーサーカーは敗れた。
そしてイリヤ自身はその士郎の元に居候させてもらっているという身分だ。
そんな中、ここに呼ばれたのだ。
気になることはたくさんある。なぜあのような男が聖杯戦争を仕切っているのか。なぜ既に脱落したマスターである自分が呼ばれたのか。冬木の聖杯戦争はどうなったのか。
二番目の疑問については、聖杯の器としての自身の役割を考えれば納得できなくはない。

だが、彼女が最初に発した言葉の原因はその疑問からではなかった。
ともあれ最初に支給されたというバッグを調べたイリヤ。
まさか聖杯の器としての役割しかない自分に体一つで戦えなどと言うわけではないはず、と思ってのことだ。


そして出てきたもの。
まず一つ目。
体操服(ブルマ)。
正直言葉を失った。
しかも自分の体にジャストフィットなのが余計に腹立たしい。

二つ目。
よく分からない黒い石。
何かしらの魔力を持った石のようであったが、使い方が全く分からない。
凛辺りに見せれば何か分かるだろうか。ともあれこれは使いようがない。

そして三つ目。
最初の言葉はそれを見て発したものであった。

「何なのよ、サーヴァント相手に人形で戦えっていうの?」

イリヤが見上げるような巨体。バーサーカーには及ばないが、人間基準であればかなり大きい。
そして、それは人間ではなかった。
不気味なほど白い肌。古風な日本式の着物に身を包み、その体からは4本の腕と4本の脚。
一応その手全てには刀が握られており、戦うために作られた人形ということはイリヤにも分かった。
名前は微刀・釵というらしい。

だが、もしかしたらサーヴァントと戦わなければいけないこの環境で、こんな人形だけで生き延びことができるとは思えなかった。
まあおそらく体操服さえ入っていなければ彼女とて支給品にケチをつけたりはしなかっただろうが。

守ってくれるようではあるらしく、歩くと後ろをついてくる。バーサーカーと比べたら頼りないというレベルではないが。
そういえば他にどんな参加者がいるのだろうか、とバッグを漁り、名簿を手にしたところで、


――――あああああああああああああ!!!!

大きな声が聞こえた。
まるで慟哭のようにも聞こえるその声に、イリヤは聞き覚えがあった。

「釵!ついて来て!」

イリヤは体が許す程度の速さで声の元に走り出す。
少なくともその対象は、この人形よりは頼りになるはずの者だ、と確信を持って。


慟哭が響く少し前の時間。

「私は、どうして…」

精気の薄い顔で呟く金髪の少女。
彼女こそ最優の英霊と言われたサーヴァント、セイバー。真名はアルトリア・ペンドラゴン。
だが、今の彼女には最優の英霊という肩書きとは程遠い出で立ちだった。

そもそも彼女には今の状況そのものが把握できていなかった。
最後の記憶はマスターである衛宮切嗣に、令呪をもって聖杯の破壊を命じられたこと。
そして約束された勝利の剣を使用し、魔力を切らせて現界することができなくなった。この肉体はカムランの丘に返されるはず。


と、そこでセイバーは思い返す。
きっとこれが次の聖杯戦争なのだと。
あの男も言っていたではないか。聖杯のために戦えと。
そうだ、これは聖杯戦争なのだ。なら自分がここにいて何がおかしいことなのか。

そう思い込むことにした。いや、そう思わなければ今のセイバーは自分を維持することができなかった。
だというのに、

「…あれ、聖剣は…、エクスカリバーは…」

セイバーとして呼ばれたなら手元にあるはずの自身の聖剣が見当たらない。
ふと手元にあったバッグ。こちらに入っているのかと全てをひっくり返す。
だが、かの黄金の剣はどこにもなかった。それどころか武器すらもなかった。

いや、剣ならあった。
刀身のない、柄と鍔だけのものが。

「あああああああああああああ!!!!」

ここにきて限界が来てしまった。
それまでどうにか堪えていた感情が溢れてしまった。

「…王でもなく、…一人の友すらもおらず…、ここに来て剣すらも奪うというのか…!」

目の前に転がっている刃のない剣。
以前のセイバーならエクスカリバーを奪われた上でこんなものを渡されたのなら屈辱から怒りを露にしたかもしれない。
だが、今の全てを失ったセイバーにとってそれは、まるで己を表しているかのようなものにしか見えなかった。
王としての誇りも、かつての友も、聖杯も、そして己の剣すらも失い、セイバーというクラスすらも失ったのだということを暗示しているかのように。

もはや眼から溢れるものを止めることができなかった。
そこにいるのは、かつて国を救った王などではなく、ただの少女でしかなかった。

「私は…、私は…!」



『人間認識』
「見つけたわ。セイバー」


ふと彼女の耳に聞き覚えの、あるような無いような声が聞こえる。
泣き腫らして目を真っ赤にした顔を上げる。

「どうしたのよ、泣いてるなんてあなたらしくないわね」

目についたのは銀色の長髪。そして赤い瞳。
誰だろうか。何処かで会っただろうか。

「…セイバー?」

ああ、そうか。

「――アイリス…フィール?」

彼女に似ているんだった。

【一日目/深夜/E-2 森林】

【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/stay night】
[状態]健康
[装備]微刀・釵@刀語
[所持品]基本支給品一式 体操服(ブルマ付き)、グリーフシード@魔法少女まどかマギカ
[思考・行動]
0:現状の把握
1:セイバーと話をする
※fateルート、バーサーカー死亡以降からの参加です
※微刀・釵は所有者の指示に従うように設定されています
※名簿は確認していません
※これが聖杯戦争の一種なのだと考えています

【セイバー@Fate/Zero】
[状態]健康、深い悲しみと虚無感
[装備]誠刀・銓@刀語
[所持品]基本支給品一式、ランダム支給品×2(セイバー視点で武器に見えるものは無し)
[思考・行動]
0:私は…
1:????
※聖杯を破壊して消滅した直後からカムランの丘に戻るまでの間から参加です
※現状を冷静に把握できていません


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実験開始 セイバー [[]]
実験開始 イリヤスフィール・フォン・アインツベルン [[]]

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最終更新:2012年12月27日 09:40