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その男は目を覚ますなり、常人離れした冷静さで状況を即座に把握、理解した。
自分は毒ガスの充満した空間で、金髪の少女の罠によって殺害された筈。
なのにこうして生きているということは、信じがたいことだが、理解不能な『何か』があったとしか考えられない。
彼――高山浩太は、合理的な考えに基づいて行動するドライな男だ。
戦場で死線を幾度も越えた経験が、その性質を形作ったのかもしれない。
『前回』では殺し合いを良しとしなかった高山だが、今回は場合が場合だ。
人数も多いし、主催の得体の知れなさでは『前回』を遥かに凌駕している。
だから、彼は乗ることにした。
この殺人ゲームに、願いの為ではなく生きる為に乗ることにした。
それを実現させるだけの力は――既に、この手にある。経験という名の力が。

銃器があれば良かったのだがな――高山は、自らの右手に収まっている黄金の剣を見てそうぼやく。

確かに、これは手触りだけで相当な業物だと分かるほどの逸品だ。
恐らく、剣の達人に支給されでもしていたら、それだけで相当な脅威になっただろう。
しかし残念ながら、高山浩太は只の傭兵崩れだ。
正々堂々とした立ち振舞いの求められる剣よりは、生きる為に有用な銃火器の方が何かと都合がいい。
殺し合いに乗るのならば、戦い方は『暗殺』に徹することになるだろうから。
それでも、これは確かな当たりに部類される一振りだ。
少なくとも、高山はこれまでの人生でこれ以上に輝く刃物を目にしたことがない。
黄金の剣――勝利すべき黄金の剣(カリバーン)を右手に、高山浩太は歩き出す。
言葉は不要だった。
すべきことが決まっているのなら、そこに余計な感傷は必要ない。

「――……ずいぶんと無防備を晒しているな」

視線は、遠目でも分かるくらいに取り乱している一人の少年へ注がれる。
隠れようという考えに至る前に、振り切るべきこの状況への困惑を振り切れていないようだ。
あれほど、殺しやすい状態はそうそうない――高山は僅かに口許を歪めた。
そして、刃を隠しながら少年の方へと歩いていく。
彼を殺すために。自らを守るために。


◇ ◆


オレこと如月シンタローは、もう情けないくらいに取り乱していた。

「――は、はは。何だよこれ……何だよおいぃぃぃいいいっっっ!!??」

いや、だって皆さん考えても見て下さいよほんと!
オレのような普通極まる高校生が、どうしてこんなことに巻き込まれてんだよって話でしょ!?
もっと適した人材いなかったの!? スカリエッティさん人脈ないの!?
ふざけんな、オレの素晴らしきヒキニート日和を返してくれ……!
天に向けて、オレは叫ぶ。
もう恥も外聞も関係あるか。オレはこの感情を神に向けて思いっきりぶつけてやるぞ。

思えばここ最近、本当にいろいろあった。
キーボードを買い替える為にデパートに行ったらテロリストの籠城に巻き込まれた。
そこで体を張ってみたら銃で撃たれて、意識を失った。
目を開けてみたらアイドルの妹とか猫目とかパーカーとかもこもことか、とにかくいろいろいた。
……そんで、今は遊園地に行ってた筈だ。
うん、オレの脳は多分まだ正常に機能してる。
ちゃんと思い出せてるもんな。
それで終いにはこのバトルロワイアルだ――なんだ、神様ってのはふざけてんのか。

「モモの奴に、なんとか団のあいつらも……か。ったく、どうすんだよこれ……?」

オレは自他共に認めるヘタレボーイだが、家族を真顔で殺せるほど終わっちゃいない。
殺し合いに乗るなんて分の悪い賭けをする気は最初からなかった。
それに、オレの平凡な日常をぶっ壊してくれやがった『メカクシ団』の存在も大きい。
あいつらは各自が科学で説明のきかない力を持っている――とか言ってた。
問題はいつもの騒がしい『あいつ』がいないこと。
あれがいれば、首輪の解除にも一役買ってくれるかもしれない。
何たって、電子はあいつの領域だから。
下手なウイルスよりもよっぽど迅速に嫌らしく、あいつは電脳制御を破壊する。


――妹、何かと面倒見のいい女、ムカつく猫目。
オレに新スキル『ロリータ・コンプレックス』を植え付けようとしてくるもこもこヘアーの女の子。
メンバー内でも良識派と見える男。
そして、電脳少女。
我ながら平凡のへの字もない人脈だけど、こいつらと協力できればこの『ゲーム』は――勝てる。
悪のラスボスを打ち倒すことが出来そうだ。
ジェイル・スカリエッティ――あの変態野郎は、強大ではあっても絶対じゃあない。
絶対じゃないなら、必ず勝てる。
その道は、無いのなら作ればいい。

「……あ」

やっべーオレめっちゃ格好いい! と思った時には、もう遅かった。
そんなことしてる場合じゃなかった。
一メートルくらいの間合いに、死神がいた。
黄金に輝く剣を鎌の代わりに携えて、ひどく冷酷な目をした男。

「嘘おおおおおおおおおん!!!?」
「残念だが、現実だ」

ふ、と酷薄に笑って、その男は踏み込み、何だか高そうな剣を高速で振り抜く。
……運よく、それはオレの髪の毛を何本か持っていくだけだった。
けど二度目はない。目の前のこいつは、二度も同じヘマをやらかすような馬鹿には見えない――。



一方の高山はといえば、自らの幸運に感謝さえしていた。
この少年は、典型的な殺しやすいタイプだ。
もしも最初から、前回戦った二人の殺人者のような奴と出会っていたらそれこそ面倒だった。
これなら、殺せる。

(っ、ちょ……! やべえって! これはほんっっっっとにやべえって!!)

ちょこまかと逃げ回ることさえ許さない。
殺すと決めたなら、逃げる暇を与えずに殺し抜く。
高山浩太のスタンスは、つまりそういうこと。
自分が生き残る為になら誰でもどんな人物でも、関係なしに容赦なく殺す。
――それも、こんな雑魚なら尚更だ。

「死ね」

高山がカリバーンを振り上げる。
逃げようとしても無駄だ。
逃げれば無防備な背中に一閃をくれてやるまで。
だがそれは目の前の少年も分かっているのか、逃げようとする様子はない。
惜しい。もしも彼にあと少しだけ度胸と状況への適応力があったなら、戦場に出られる逸材だったろう。
しかしここで若き芽は摘み取る――高山が刃を降り下ろさんとしたその時。

――――ダァン! と、空を切り裂く破裂音が響いた。

銃撃か。そう判断した時には、もうどうにもならない。
運よくカリバーンに弾丸はぶち当たり、しかしその強度を打ち砕けずに形を変形させて地へと落ちる。
予想外だが、これは嬉しい誤算だ。
カリバーンに銃弾さえもよせつけぬ硬さがあるのなら、この死線は逃れることのできる死線だ。

続く、二発目の銃声。
方向が分かれば対処は然程難しくない。
弾丸を認識してから落とすのは無理だが、半ば反射的に突き出したカリバーンで弾丸を真っ二つに両断する。
そのまま、後は単純に走って逃げるまでだ。
……遠距離からの銃撃を延々防ぎ続けるなど、どう考えたって非効率的の極みなのだから。
追撃を加えられたなら面倒だったが、どうも相手も追ってくる様子はない。


(命拾いしたな。……やはり、剣だけでは厳しいか)

高山は不満げだが一滴の血液も流さず逃げ切る。
しかし戦場を経験している彼にすれば、いきなり取り逃したという事実は不満以外の何物でもなかった――。


【一日目/深夜/C-1 森】


【高山浩太@シークレットゲーム-KILLER QUEEN-】
[状態]健康
[装備]勝利すべき黄金の剣@Fate/stay night
[所持品]基本支給品一式、ランダム支給品×2
[思考・行動]
0:生き残る。
1:銃器を探す。余裕があれば首輪も一つ確保しておきたい
※Episode1、死亡後からの参戦です


◇ ◇


――その瞬間を、よく覚えている。
どうしてなのかと問いたくなるくらいに、鮮明に覚えている。
自分は二度目の『プログラム』にして、遂に生け簀かない政府の役人に吠え面をかかせることが出来たのだ。
代償として、この命を散らすことになったが。
十数年の人生で三度目にもなる殺し合い。何故だか、死んだ筈の自分はこうして呼吸をしている。
心臓も動いている。赤みがあるということは、血液も支障なく流れているようだ。
……疑問はしかし、参加者の名簿を見た瞬間に怒りへと変わった。
そこには、絶対にあってはならない名前があったのだ。

七原秋也と、中川典子。
あの『プログラム』から生き延びて、これからあの腐った国を変えるだろう二人の少年少女。
彼らの名前が、どうしてここにある。
まさか、あいつらまで殺し合いに巻き込んだってのか。
――川田章吾は、かつてないほどの憤りに震えていた。
今なら、参加者を全て殺すことだって簡単に出来そうなくらいの、激情だった。

もちろん、殺し合いなどする気はさらさらない。
七原や典子が、誰かの犠牲の上に生き残って喜ぶとは到底思えないからだ。
自分のすべきことは、彼らの望むだろうゲームへの反逆。
それでもしも生き残れたなら行幸というだけで、特に生きることに一生懸命になる気はなかった。
――むしろ、一度失ったもののために努力をする方がどうかしているとさえ、思う。
名簿には、桐山和雄や相馬光子、三村信史の名前もあった。
三村はともかく、相馬には注意を払っておかねば。
そして桐山和雄――こいつは、文句なしで危険人物だ。
出会ったなら即座に殺すくらいの意気込みでちょうどいい。

「……ふぅ。間一髪だな」

グロック拳銃を片手に、微笑を浮かべながら川田は助けた少年の元へと歩み寄る。
彼は未だに腰を抜かしているが、どうも自分が助かったことは分かっているようだ。

「俺は川田章吾。いきなりで悪いが、七原秋也と中川典子――この二人に、心当たりはないか?」

川田には、この少年と同行する気は全くない。
自分より年上と見える目の前の彼だが、恐らく殺し合いとは遠い世界を生きていたのだろう。
それが普通だ。だが、川田は今回単独先行をやることに決めていた。
七原秋也と中川典子を見つけ出し、彼らを護衛する。
その過程で出会った危険人物は殺害する。特に優先は桐山和雄と、さっきの剣を持った男だ。
足手まといは必要ない――手を鈍らせるだけだから。


「いや、知らない……オレは如月シンタローだ。殺し合いには乗ってない」
「分かってたさ、そんなこと。どう見たって殺し合いに乗ってる様子じゃねえよ、あんたは。……じゃあな、如月。頑張って生き延びろよ」

えええええええ、そこで行くの!? とシンタローは声には出さずに叫ぶ。
てっきり、頼もしい同行者を得たパターンだと思ったのに。
どうしよう、早いところ同行者を見付けないと本当に殺されるかもしれない。
シンタローはますますブルーになっていくが、川田はそんな彼を意にも介さずに背を向け、歩き始めていた。

「川田!」

シンタローは思い出したように彼を呼び止める。

「ありがとな、助けてくれて!」

川田はそれに――片手だけを挙げて、応じた。


【如月シンタロー@カゲロウプロジェクト】
[状態]健康、やや気分がブルー
[装備]なし
[所持品]基本支給品一式、ランダム支給品×3
[思考・行動]
0:殺し合いには乗らない。
1:モモたち知り合いを捜す。余裕があれば、エネも居るかどうか調べたい
2:殺し合いとか……マジかよ……
※二巻、遊園地で遊んでいる最中からの参加です


【川田章吾@バトル・ロワイアル】
[状態]健康
[装備]グロック拳銃@Fate/Zero
[所持品]基本支給品一式、ランダム支給品×2
[思考・行動]
0:スカリエッティを殺して、七原と典子を元の世界へと帰す
1:七原と典子を捜す。情報は積極的に集めていく
2:危険人物は殺害する。桐山和雄を最優先。
※死亡後からの参戦です

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実験開始 如月真太郎 [[]]
実験開始 高山浩太 [[]]
実験開始 川田章吾 [[]]

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最終更新:2013年01月26日 12:23