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灯台。その上階にて、少女は下界を見下ろしていた。
桃色の髪が特徴的で、体型や顔立ちはまだ年端もいかない少女のもの。
ごく普通の可愛らしい中学生に見える桃色の少女の中で、唯一つ、その何かを悟ったような瞳だけが異彩を放っている。
多くの参加者たちの例に漏れず、彼女もこの悪夢じみた状況への困惑を落ち着いた佇まいから漂わせていた。
でも、それだけではない。
少女を惑わすものはもう一つあった。
「どうして………?」
少女には、何より理解できないことがあったのだ。
殺し合いに巻き込まれたことよりもなお大きな疑問点が存在していた。
夢とか思い込みとかで片付けられるほど単純な話では、ない。
しっかりと覚えている、あの”破滅”の絵図を。
そして、友へと望みを託して命を喪う瞬間を――――。
(私は死んだハズ、ワルプルギスの夜の討伐に失敗して)
少女、鹿目まどかは努めて冷静に考える。
彼女はその落ち着きからも分かるように、普通の少女ではない。
まどかは街を守る為に戦う、正義の魔法少女である。
一匹の猫を救う奇跡の対価として戦うための力と、そして人間らしい死など決して約束されない呪われた肉体を手に入れた。
今のまどかは真実を知っている。
魔法少女の真実を、知っている。
(それにあの人、願いを叶えるって……。キュゥべえは関係ないみたいだけど、聖杯の話がもし本当だとしたら………)
願いを叶える力は、まさしく魅惑の果実だ。
けれど、その果実には必ず毒があるのもまどかは知っている。
魔法少女の契約には、知らされない裏があるのと同じように。
聖杯とやらが本当にあるのか否かはまだ分からない。
が、もしも実在するのだとしたら。
それが良からぬ考えをもくろむ人間の手に渡りでもしたら。
最悪の事態が起こることだって、考えねばならないだろう。
「――止めなきゃ……!!」
思わず、焦りを含んだ声が漏れる。
自分は魔法少女だ。人々のために戦う魔法少女が殺し合いを良しとするなんて、絶対にあり得ない話。
どうして死んだハズの自分が生きているのかは、一先ず後回しだ。
自分だけが例外というわけでないことは、彼女がその右手に握り締めている一枚の紙――参加者名簿からも分かっている。
魔女になって命を落とした美樹さやか。
仲間の凶弾に倒れた佐倉杏子。
そして此の手で命を奪った巴マミ。
すべてを託した親友も含めて四人、かつての仲間が勢揃いしている。
彼女たちは強い。
その強さにまどかは何度も助けられてきた。
彼女たちとならできる。
この殺し合いを駆逐して、聖杯を然るべき形で処理することができる。
まどかは子どものような純粋さでそう信じていた。
一抹の疑念さえも抱かぬ綺麗な心で、そう信じることができた。

「――……少し、いいか?」

唐突に、背後から自分へ向けての呼びかけが響いた。
少し驚きこそしたが取り乱すことなく振り向くと、そこにはまどかよりもずっと年上だろう、一人の男性が立っていた。
丸腰ではない。
その片手には魔法少女の得物にもよく似た、一本の大剣が収まっている。
一瞬だけ警戒をしてしまったが、男性に敵意は無さそうだ。
そもそも、殺す気があるのなら背後からの不意打ちで事足りるという話。
迂闊なほどの無防備を晒していたのだから、その隙を突くことくらいなら普通の人間でも十二分に可能だった筈である。
まどかは「は、はい!」と少し戸惑いつつ応えた。
どうにも格好つかないのがちょっとだけ情けなかった。
「俺はゼスト。ゼスト・グランガイツだ――殺し合いには乗っていない」
嘘を言っているか疑るのは簡単だが、それこそ不毛なことだ。
まどかはつまらない警戒を解いて、ゼストへと自己紹介を返す。
「私は鹿目まどかっていいます。私も、乗ってなんかいません」
魔法少女の衣装に身を包むまどかの姿は相当に奇抜なものである。
それに大した驚きも見せないゼストを、まどかは内心で「冷静な人だな」という判断を下したが、それは実のところ誤りである。
彼の常識では、まどかのような魔法少女はさして珍しくはないのだ。
それも、もっと大っぴらにその存在は認知されている。
「まどか、だな。よろしく頼む」
ゼストの醸す雰囲気は、魔法少女よりもどこか研ぎ澄まされている。
彼女はまだ知らないことだが、彼もまた魔法少女に匹敵――あるいはそれを凌駕し得る力をその肉体に秘めている。
そして彼もまた、まどかと同じく一度は戦死を喫した身。
二人の間には、意外なほど共通点があった。
「いきなりで悪いがな、言っておくことがある。俺はあの変態科学者とは知り合いだ、一時は仲間であったことも、一応ある」
「……そうなんですか?」
「ああ。ただし、仲間と呼べるほど上等な関係じゃあなかったが」
ゼストとスカリエッティは確かに一時手を組んでいた。
だが、それはあくまで利害の一致。それ以上でも以下でもない。
自分の復讐を遂げるという目的のためだけの同盟関係。
今回までヤツに力添えする理由は何一つとしてなかった。
「だから分かる。アレが語った聖杯の話の信憑性はかなり高い」
それでも、一応ジェイル・スカリエッティがどのような人間であり、どのような思考を有するのかはある程度把握していた。
ゼストは語る。スカリエッティが企てたとある計画の話を。
まどかにしてみればそれは驚きの連続だった。
自分の住む地球以外に世界が存在するなど、眉唾だとばかり思っていた。
「目的の為になら、手段を選ばない男……」
復唱しつつ、まどかは納得する。
確かに、少しでもまともな感性を持っていればこんなことは出来ない。
そのスカリエッティが、愉悦なんてつまらない理由で動くことはまずあり得ないだろうと、ゼストは極めて冷静に断じた。
「あの男が事を行うとすれば、それは奴が動くに足る事項がある場合のみだ。スカリエッティは本当に、聖杯を卸す為だけにこの悪夢を企て、実行してのけたのだ――もっとも、本当に願いを叶えることを奴が許すかどうかは、俺にも分からないがな」
ひどい話である。
心を鬼にしてたくさん殺して、それで願いが確約されないなんて。
キュゥべえの魔法少女契約がマシに見えるほど、悪辣な話だ。
尚更止めなきゃいけないとまどかは思った。
スカリエッティを倒して、こんな酷い実験を一刻も早く終わらせる。
それが、魔法少女として真に自分がやるべきことだ。
「それでだ。俺はスカリエッティを倒すために動こうと思う」
「私も、協力させてください」
まどかは即答した。
ゼストの話を聞いて、立ち上がらずにはいられなかった。
スカリエッティ――ある意味では魔女さえ上回る害悪の化身だ。
無限といってもいいその飽くなき欲望を、他人を使って満たす。
そんな自分勝手で誰かが涙するなんて、まどかには耐えられない。
「ああ、そうしてくれると助かる。流石に今回ばかりは、俺の手にも余るのでな………」
まどかは気付かない。
ゼストはまだ、彼女へと隠し事をしていることに。
彼のかつてスカリエッティと関わっていた理由も、聞いていない。
そしてその復讐劇の果てに、彼がどんな幕切れを曝したのかも。
何も知らない少女に、少しだけゼストは罪悪感を覚えた。
間違ったことはしていない。そう自分へ言い聞かせても、胸の内でくすぶる一抹の火種までは払拭しきれなかった。
(まどかは、優しい少女のようだ)
声には出さないで、彼は思う。
優しさは確かに美徳だ。けれど、必ずしも最善ではない。
ゼストはそれを知っている。
(ならば、どう思うのだろうな――――)
殺し合いの打破。
かつて仲間だったルーテシアを死なせる訳にはいかないし、進んで他人を殺してまわるのも決して望んではいない。
(――スカリエッティを、殺すことを)
まどかは優しい。
果たして優しい少女は、許せるのだろうか。
必要とはいえ生ける存在を殺すことを。



【一日目/深夜/Aー6・灯台】


【ゼスト・グランガイツ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
[状態]健康
[装備]レヴァンティン@魔法少女リリカルなのはStrikerS
[所持品]基本支給品一式、ランダム支給品1~2
[思考・行動]
0:殺し合いを潰す。スカリエッティを殺す。
1:ルーテシアを探して保護したい。まどかと行動
※死亡後からの参加です
※鹿目まどかの魔法少女の原理を知りません


【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]健康
[装備]弓矢@魔法少女まどか☆マギカ、まどかのソウルジェム@魔法少女まどか☆マギカ
[所持品]基本支給品一式、ランダム支給品1
[思考・行動]
0:殺し合いを終わらせて、主催者を倒す
1:弱者を保護する。ゼストさんと協力していきたい
※二週目ループ死亡後からの参加です
※魔法少女リリカルなのはStrikerS、JS事件関連の情報をある程度得ましたが、全てというわけではありません



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実験開始 ゼスト・グランガイツ Next:[[]]
実験開始 鹿目まどか Next:[[]]

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最終更新:2013年03月22日 22:49