神話前夜台本

<キャスト>

  • 少年マルク:ツナシ・タクト
  • 少女クレイス:アゲマキ・ワコ
  • 青年コルムナ:シンドウ・スガタ
  • 魔女アイン:スガタメ・タイガー
  • 女王ネムル:ヤマスガタ・ジャガー
  • エントロピープル:エンドウ・サリナ

キャスト名出典:第十四話 アインゴットの眼



シーン1


少女クレイス/『一面染める花は 空へと昇る光 幾億の息吹達 今世界が生まれ変わる…♪』



エントロピープル/やあ、少年。君がマルクだね。
少年マルク/そう、僕はマルクです。少年マルクです。けど、あなたは誰なんです?その身なり、その髪の色…  この辺りではついぞ見かけない姿だ。もしかしたら、夜になると大海原で暴れまわるという、あのイカ大王の化身だろうか?
エントロピープル/…私は君に会いにきたのだ
少年マルク/え?
エントロピープル/遥か遠いところからね。……ねえマルク。君は今恋をしているだろう?彼女はクレイス。
少年マルク/彼女を知っているのですか?そして見えるのですか?
エントロピープル/私には見える。だから君に話たくてここまで来た。
少年マルク/話す?何を?
エントロピープル/勿論彼女…そしてこの船の物語を。日の光に輝く長い髪…クレイスは美しい少女だった。



シーン2


エントロピープル/……そして、数奇な運命[さだめ]の下に生まれた少女でもあった。何しろ、クレイスの姿は普通の人には見えないのだ。そして触れることも出来ない。なんと絶望的なその境遇……けれど、クレイスは孤独ではなかった。何故なら、コルムナと巡り合ったからだ。



少女クレイス/あなたには、ここにいるあたしの姿が見えるのですか?
青年コルムナ/おかしなことを言うな。君はそこにいる、だから僕には君が見える。このメガネの度はちゃんとあってる。
少女クレイス/あなたには普通の人たちにはない、特別な命のオーラがあるのですね。そのオーラの輝きが、あたしの姿を照らしている。……どうか教えて下さい、あなたの名前を。
青年コルムナ/僕はコルムナ、青年コルムナ。
少女クレイス/あたしはクレイス、独りぼっちのクレイス。
青年コルムナ/普通の人には、君の姿は見えないのかい?
少女クレイス/ええ、私を見た男性は、多分あなたが初めてよ。
青年コルムナ/なら僕は、世界で一番幸せな男だ。だって、こんなにも可愛い君の笑顔が、僕だけのものなんだから。
少女クレイス/コルムナ……
青年コルムナ/僕は見つけた…今日からクレイスは、僕だけのものだ!
(コルムナ、クレイスを抱きとめようとするも、すり抜ける)
青年コルムナ/!? クレイス……!?
少女クレイス/……ごめんなさい、私の身体は蜃気楼のようなもの。あなたの眼にあたしの姿が見えるだけでもすでに奇跡…でも触れ合うことは出来ないの。今日のことは忘れて下さい……もうあなたの前には、二度と現れませんから!!
青年コルムナ/クレイス、待ってくれクレイス!たとえ触れ合うことが出来なくても、僕はもうこうして君の笑顔に出会ってしまった。それなのに、その笑顔をもう二度と見ることが出来ないなんて…そんな悲しいことは言わないで。これから迎える朝と夜には、君の笑顔を見ていたい!それも許されないことなのか?
少女クレイス/おお、コルムナ…あなたの言葉こそ、あたしを世界で一番幸せな女の子にする。神様感謝します…きっと私は、今日この日のために生まれてきたのですね。



シーン3


魔女アイン/こんにちは。
青年コルムナ/こんにちは。……!! これは驚いた…こんな大きな宝石は見たことが無い。
魔女アイン/幸せそうだね、コルムナさん。
青年コルムナ/なぜ僕を?
魔女アイン/街の酒場はあんたの噂で持ち切りだよ。あいつはいもしない夢の中の女と一緒に暮らしてるって。
青年コルムナ/っ…! 街の連中には見えないだけです、言わせておけばいい!! ………酔っぱらった時、つい余計なことを口走った僕がいけなかった…
魔女アイン/……さっき、あんたの家の前を通りかかった時、挨拶させてもらった。清楚なセーラー服に、栗色の瞳。流れるような長い髪は、更に眩しく輝いていた…
青年コルムナ/こいつは驚いた。クレイスの服装の事は誰にも話していないのに…。じゃああんたにも彼女が見えたのか?あんたも命のオーラの輝きを持っているのか?
魔女アイン/私の持っているのはオーラの輝きなんかじゃない。魔法の眼だよ。
青年コルムナ/魔法の眼?それじゃあんたは魔女なのか!
(コルムナ、魔女にナイフを突きつける)
魔女アイン/…おや、お兄さん。物騒なもの持ってるじゃないか。
青年コルムナ/男なら、誰でも一本のナイフを持っている!
魔女アイン/……見るだけで触れることが出来ない恋人なんて、寂しいね。
青年コルムナ/僕は彼女の笑顔を見るだけで幸せだ!
魔女アイン/彼女の髪は本当に綺麗だ…
青年コルムナ/まさか…その指に巻いているのは、クレイスの髪!?いや、見間違えるものか。それは確かに、あのクレイスの髪…。
魔女アイン/私は北の海に住む魔女アイン。そしてこの胸に輝くのは夜の宝石。こいつを身に着けていれば、クレイスの身体に触れることが出来る。あんたにはこいつの価値が分かるだろ? ……これがあればクレイスの手を握ることも、身体を抱きしめることも、そして、あの可憐な唇にキスすることも出来る。もし望むなら、あんたに譲ってもいい…尤も、ただというわけにはいかないがね。
青年コルムナ/いや、いやいやいや。身体に触れることが出来る?それがどうした!!僕はただ、クレイスの笑顔を見る事さえ出来れば…
魔女アイン/……私も女だから、よく分かる。クレイスはあんたに抱いてほしくて、ほんとは毎晩泣いてるんだよ?
(コルムナ、猛烈に計算を始める)
青年コルムナ/貯金と株と国債と……あと、ビンテージもののジーンズコレクションをネットで売れば……
魔女アイン/……宝石の代価に私が欲しいものはただ一つ。北の島の造船所に一隻の船がある。その船を動かしてほしい。
青年コルムナ/船?
魔女アイン/いいね?この宝石はその船と交換だ



シーン4

エントロピープル/コルムナは船を動かした。何とそれは、空を飛ぶ船だった。そして自分が動かす船の力に酔いしれた…。

青年コルムナ/僕の望む通りにこいつは大空を自在に飛び回る…凄い力だ!もう僕は、昨日までの僕とは違う!!

エントロピープル/コルムナは、その船で世界を飛び回った。だが、魚の惑星は空を飛ぶことをタブーとしていた。城の高い塔にいる女王、その女王の部屋に近づくのはタブーだった。だから、空を飛ぶことはトビウオですら許されなかった。



女王ネムル/餌だ餌だ、サメの餌だ!! この魚の惑星では、支配者は一番高い所にいなければならぬ。私のいるこの高みは、この私だけのもの。それを脅かす不届き至極な輩は、全てサメの餌にしてしまえ!!
(コルムナ、後ろからナイフでネムルを刺す)
女王ネムル/う、うう……お前…お前は!?
青年コルムナ/僕はこの魚の惑星の新しい王……
女王ネムル/私の出番はこれだけー!?
(ネムル、塔から転落)
青年コルムナ/そう、王は一番高いところにいなければならない。つまり一番高い所に行けるものこそが、王なのだ!



エントロピープル/……そしてコルムナは、魚の惑星の王となった。



シーン5


少年マルク/それでクレイスは?彼女はどうなってしまったの?

青年コルムナ/ヒヤッホー!

エントロピープル/船に乗って惑星を自由に飛び回るうちに、いつしかコルムナはクレイスへの想いを忘れていった。あるいはもう、その時にはクレイスの姿を見ることも出来なくなっていたのかもしれない。

(クレイス、舞台裏へ飛び降りる)

少年マルク/おい、コルムナ!君はそれでいいのか!!

青年コルムナ/ん?

少年マルク/君の幸せそのものであるクレイスを見失って、君はいったいどこへ行く!

青年コルムナ/今はこの船があればいい。この船があれば、世界の全てはもう僕のものだ!
魔女アイン/それは困る。船は私がもらう約束だ。
青年コルムナ/これはもう僕の船だ!
魔女アイン/アッハハハハ!僕の船? まだ気付いていないのか。もはやお前は船そのものだ。
青年コルムナ/僕が船そのもの?僕が船になったというのか?
魔女アイン/アッハハハハ……アッハハハハ!!



シーン6(後編開始)


魔女アイン/コルムナ。
青年コルムナ/…ん。
魔女アインさあ約束だ。この船を引きわ……引き…引き…
(ワイヤーがスカートに引っ掛かりサービスカット。舞台裏から部長「こら!魔女が恥ずかしがるな!」
魔女アイン/…引き渡してもらおうか。
青年コルムナ/現れたな魔女!
魔女アイン/こいつはこの星で一番大きな魔力を持った船なんだ。私はこいつが動くのを7千年もの間待ち続けた!
青年コルムナ/あ…
魔女アイン/残念ながら、お前はもう私の魔法で動けない。…そうそう、この夜の宝石を渡す約束だったかね。けれどもうお前はクレイスをその手に抱きたいとは思っていないようだし、必要ないかな。アハハハハ、アハハハハハ……うっ!?
(コルムナ、後ろからアインを刺す)
魔女アイン/アイーン……。どうして動ける…?お前は、私の魔法で……。
青年コルムナ/この船がこの星で一番大きな魔力を持っているといったのはお前だ…今僕は、その船と一体化している。お前よりも大きな魔力を持っている…

<恐らく演劇とは別の、謎のワンカット>

青年コルムナ/死ね、魔女め!
魔女アイン/うう…馬鹿だよお前は。この船の魔力を使ってしまって、いよいよお前は船と一体になる。それが愛する少女を捨てたお前の運命だ。アイーン……!!

エントロピープル/船と一体化したことにより、不老不死になったコルムナ。コルムナはそれ以後も魚の惑星の王であり続けたのだ。その王は、城の奥深くに隠れて、人前には決して姿を見せなかったという……そしてコルムナの船は残っている、大きな魔力を持った船が。



シーン7


※恐らくこの幕は、後半かなりの部分がアドリブ演劇。


エントロピープルこの船はもはや何者にも破壊すること叶わず。故に封印しておくしかない。
少年マルククレイスの過去にそんな事が……でもどうして、この話を僕にしてくれたの?もしかしたらあなたも魔女?それとも、やはりあのイカ大王の化身なのだろうか?
エントロピープル私達はエントロピープル。魔力を使わないもの。
少年マルク(え……私『達』?)
エントロピープル……君はかつてのコルムナのように、生命のオーラの輝きを持った少年だ。だからこのクレイスの姿も見えるのだ。そしてこの船を動かす力も持っている。
少年マルク……え
エントロピープル聞け、生命のオーラの輝きを持つ少年よ。私達エントロピープルは、魔力を使わないと決めた銀河の一族だ。巨大な魔力を持つこの船そのものの破壊…そして船に偶然接触する生命の生殺与奪の権限など、元より私達にはない。この船を君がどうするのか、私達には見守ることしか許されない……

エントロピープルただ私は君にどうしても、せめて知っておいてほしかった、この船の物語を。そして知りたい、同じようにこの船を動かせる君が、これからどうするのかを。
???君もコルムナのように、やはりナイフを持っているの?
少年マルク……もし僕に命のオーラの輝きがあるなら、それは船を動かすためのものではなく、彼女の笑顔を見るためのもの。たとえナイフを持っていたとしても、それは彼女を守るためのものです。
エントロピープル……そうか
(マルク、階段を昇り、クレイスのもとへ)
少年マルク約束するよクレイス。僕は君が大切だと思っている全てのものを、何が何でも守ってみせるよ。
少女クレイスマルク……


(キスシーン)


End




参考発言1:演劇終了後のエンドウ部長

エンドウ部長/さてこの星の運命は、いよいよあいつら次第だ。
???/うん。他のと違って、タウバーンは地球人のために作られたサイバディだ。僕達にもどんな可能性を秘めているのか分からない…。
エンドウ部長/いずれにしても私達に出来ることは、見守ることだけだ。




参考発言2:『第十二話 ガラス越しのキス』より、ミズノさん。

ミセスワタナベ
あなたって魔女っ子なの?
魔法使いって本当にいるのかしら?


ミズノさん
あのね、ぼく達ニンゲンは、本当はみんな魔法使いなんだよ?
ニンゲンであるということは、魔法使いでもあるってことなんだ。


ミセスワタナベ
じゃあ、わたくしも何か魔法が使えるのかしら。


ミズノさん
あのね、ニンゲンはみんな魔法使いなんだけど、使える魔力は人それぞれなんだ。
でも今は、とてつもなく強大な魔法を使える大魔王の力で、本来持ってる魔法の力を使えなくされちゃってるの。
だから残念だけど、今はみんなほとんど魔法が使えないんだ。





参考発言3:サカナちゃんの一連の発言

→『少年サムの恋物語』参照。













最終更新:2011年03月06日 21:00
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