アルカの不定詞は名詞形副詞動詞になる。尤も、厳密には動詞は不定詞+時相詞からできているので、不定詞は動詞にとっては材料にすぎない。

不定詞が何詞になるのかは統語論で決まる。たとえばfin tasといえば大きい男で、tasfinにかかる。 tasは形容詞でfinは名詞である。このことは語順で分かる。

では、単にtasとかfinといった場合はどうするか。不定詞は単独で使うと、文脈に応じて名詞・形副詞・動詞のいずれかになる。象を初めて見たとき、思わずtas!という場合、これは形容詞の用法である(本当はonaだが、分かりやすく説明している)。一方、象を見て、象だ!と叫ぶとき、kaim!というが、このkaimは名詞の用法である。

このように、同じ不定詞でも文脈に応じて何詞になるか判断する必要がある。動詞も実はそうで、行くはke-eで、行けはke-alだが、実際はke!などと言われる。動詞としては時相詞が欠けているので成立していない不定詞だが、実際は文脈に合わせて動詞だと解釈される。

動詞としての解釈は厄介である。その動詞が再帰代名詞を取るのかどうか分からないし、主格がemかも分からないからである。同じmet-e(落とす)でも、動名詞はmetas(落とすこと)、metos(自分から落ちること)、metis(落ちること)がある。これを不定詞にすると単なるmetになり、3つのうちのどの動名詞を指すのか分からない。そのようなときも文脈解釈である。

人に向かってskin!といえば、座れという意味である。本来はti skin-al or(自分を座らせろ)で、動名詞としてはskinosになる。つまり、人に向かって言うskinskinosの意味である。

ただ、一様に決まるものばかりではない。 tolx!は自分を訓練しろと相手に言っているのか、誰かを訓練させろといっているのか分からない。それは状況で判断するしかない。判断しきれないときもあるが、その場合は不定詞を使わずに、はっきり言えばいい。

アルカでは、名詞・形容詞・動詞が同形である。ある語がそのうちのどれになるか分からないのでまとめて不定詞と呼んでいるわけだが、不定詞には上で見たような独立用法がある。その際の品詞性は文脈から判断する。

set-eは殺すだが、set!といったとき、いくつかの可能性が考えられる。殺せと叫んでいる動詞解釈が多いだろうが、状況によっては他殺体を見つけたとき、「死体だ!」という意味で、つまり殺されたもの(seton)という意味で使っているかもしれない。「死体」の場合は名詞解釈である。このように、一見動詞のようでも実は違うという可能性もあるので注意が要る。

注意といっても文脈で判断すれば良いし、もし誤解されたくないなら厳密にいえばいいだけのことである。不定詞の独立用法があるのは、単に日常会話を発しやすくするためである。つまり、合理性の問題である。

最終更新:2007年11月12日 20:43