「ふうん……私はこの姿なんだ……」
非常灯の緑の明かりが闇に覆われた駅構内。
鏡に前に佇む小柄な一人の少女がいた。
ピンク色のセーラー服。
腰まで届く青く長い髪。
「まあ? 私の名前からしてこいつかあいつの姿はほぼ確定してるもんだからねぇ」
彼女は腕を組みくっくと嗤う。
オリジナルの彼女なら絶対にしないであろう邪悪な笑み。
「『ただの人間には興味がありません。この中に宇宙人、未来人、超能力者、異世界人がいたら、あたしのところに来なさい。以上!」』
『貧乳はステータスだ! 希少価値だ!』……うんうん、完璧だね」
二種類の平野声を使いわけてにやりとほくそ笑む彼女の名は◆DiyZPZG5M6こと『
ブッチギリ平野』。らきロワの書き手である。
そして彼女の姿は泉こなたその人だった。
だがオリジナルのこなたとはその姿とは微妙に細部が異なっていた。
にやりと三日月の形に歪めた口から覗く鋭利な犬歯。
闇の中にも関わらず爛々と輝く真紅の瞳。
それは彼女が吸血鬼であることの証だった。
「当然じゃん? こなたを吸血鬼にしたの私なんだし、きひひ」
歯軋りのするような耳障りな声で彼女は嗤う。
「しかし……お腹すいたねぇ……Rh-のAB型の血なんか最高じゃん? 他の血とはまろみがちがうよ、まろみが」
A型の血はありふれた味過ぎてすぐに飽きる。
B型の血は味が濃すぎて後味が悪い。
O型の血は甘すぎて胃がもたれる。
「やっぱAB型が最高っしょ?」
ぶつぶつと血液の味の違いを一人で呟くブッチギリ平野。
すると、どこからともなく甘ったるい匂いがあたりに立ち込めてきた。
ひとたび嗅げばたちどころに虜にされる麻薬的な香り。
彼女はこの香りを知っている。いや知りすぎて困るぐらいに。
「あっはっはっは。まさかっ! こんな早くに! 再会できるとは思わなかったよっ! だからさぁ……その匂いは隠さないと危険だよ?」
闇の向こうから人影が歩いてくる。
おどおどとした足取り、不安そうな表情の少女が近づいてきた。
「あのっ……そこに誰かいるんですか……?」
向こうからはこちらの姿はよく見えていないらしい。
彼女はおそるおそる一歩を踏み出してこちらに近づいて来る。
そして非常灯の明かりの下にその姿が露になる。
長めの茶髪をツインテールに結わえた髪型。
白いブラウスとチェック柄のミニスカート。
やや幼めの表情には不自然なぐらい明るく金色の瞳が輝いていた。
そう言ってぺこりとお辞儀する。
ころころ変わる表情が愛らしい。
―――食べてしまいたいぐらいに。
「うん、よぉく知ってるよ。とても、とても良く知ってる。君の姿が彼女で、彼女の特異体質を備えていることも良く知ってるよ」
周囲の気温が下がっているような感覚。
気のせいではなく本当に、物理的に気温が下がっている。
「とりあえず私はお腹が空いているんだよねぇ……」
「あっそうなんですか? コンビニとか行きます?」
「いいや、私が欲しいのは―――君の『贄の血』なんだからねぇッ!」
「――――!?」
平野はいつの間にかに握られた青白く輝く直剣を一閃した。
ドサっと何かが落ちる音。
「あっ…ああああああ……腕……わたしの腕が……っ! どうして……っ!?」
床に転がるニェノチの左腕。
平野はその腕を拾い上げると牙を突きたてその血を啜る。
「けひひひ……さすが贄の血だよ! まさしく至高の血! さすが羽藤桂の血!」
「どうして……わたしの能力を知ってるの!?」
「やだなぁ……私は君のを良く知ってると言ったよね? 『血神ニェノチ』……いや『私』」
「まさか……」
「鈍い君でもやっと気がついたみたいだね……私は『ブッチギリ平野』。君の―――◆DiyZPZG5M6のらきロワでの姿だよ」
「どうして……わたしが……っ!」
「あれぇ……おかしいなぁ? 君と私は同一人物なのにどうして君だけヒロイン気取りなのかな? すごくムカツクんだよねそれ」
「そんなこと言われても……!」
「君ねぇ……そっちではパヤパヤ~とか百合~みたいな展開ばかり書いてるみたいだけけど、忘れてたとは言わさないよ?」
「な、何を……?」
「ギャルゲ1stで鬱グロな話を書いてた人間が、対主催ヒロイン気取りなんて許されると思う?」
「それは……」
「自分自身のことだからよぉーく知ってるよ。GR1で白河ことりのテレパス能力を逆に利用してことりに自らのレイプ映像を見せる展開なんて
普通は思いつかないよねー? ……認めろよ。自分はそういう黒くて悲惨な展開が好きなんだって」
「違う……違う……」
「古河渚の死体を西園寺世界に喰わせた癖に。柊つかさをボコボコに虐待した癖に」
「嫌……いやぁ……」
「とりあえず……◆DiyZPZG5M6は一人で十分。君は私の糧となって死ね。血神ニェノチ」
虚空から突然銃が現れ平野の手に収まる。
そして彼女はニェニチに向けて銃を乱射した。
「限定的にだけど私は地球破壊爆弾の能力を扱える。ま、せいぜいソードカトラスを投影するぐらいだけどね。……おや?」
銃弾を多数受けてもなおニェノチは生きている。
その金色の瞳をますます明るく輝いていた。
「チ……サクヤの血を輸血した後の羽藤桂か……! どおりでしぶとい」
「わたしは……負けない! たとえわたしが鬱グロ展開が好きな書き手だったとしても……! それもわたしであることも変わらない!
同じ自分を否定するあなたには絶対に負けるもんか!」
「言ってろボケ」
「だからわたしは……自らを受け入れるためにも呪われたこの力を使う!」
「何……?」
ニェノチに刻まれた言霊。
彼女に記された魔術の中でももっとも忌むべき悪夢を解放する。
悪夢の塊を現世に降臨させるための言霊が紡がれる。
「妖蛆よ……! わたしに力を―――Maggot Gospel!!!」
顕現する悪夢のひとかけら。
蠢く妖蛆が彼女の傷を癒していく。
ちぎれた左腕の切断面からは大量の蛆があふれ出す。
溢れる白く太った蛆虫はみるみるうちにニェノチの左腕を形成してゆく。
「グロ技使ってる分際でヒロイン気取ってんじゃねェェェェェェッ!!!!」
ソードカトラスを連射する平野。
「妖蛆よ! わたしを守って!」
突き出した右腕前に現れる。白い盾。
蠢く蛆が絡み合い一つの壁を作り出す。
ソードカトラスの銃弾は蛆の壁にはばまれニェノチに届かない。
その隙にニェノチは脱兎のごとく逃げ出す。
「逃がすか!」
平野も吸血鬼の膂力をもってニェノチを追う。
二人は駅から飛び出し街中を走る。
だが既にニェノチの血を取り込んでいる平野のほうがスピードもスタミナも段違いだ。
このままでは追いつかれることは必死。
「このままじゃ……追いつかれる……!」
「きひひひ……どこに逃げるのかなぁ~」
「くっ……仕方ない……わたしの身体よ……! 大空を翔る蒼き翼となれ!」
「なっ―――!?」
その瞬間、ニェノチの全身が光り輝く。
光が収まるとそこに現れたのは巨大な鋼鉄の翼。
蒼くペイントされたその全身。
三角形の翼に描かれたアイドル―――如月千早。
F-15E -THE IDOLMASTER CHIHAYA-
大空を羽ばたくエースの機体へ姿を変えたニェノチは爆音と共に空へと飛翔する。
マッハ2.5で巡航するそれに追いつける能力など平野は持ち合わせているはずがない。
「対主催のくせにそんなチート能力持ってるんなんて詐欺だよねぇ……」
平野は月夜を舞う戦闘機をただ見上げるだけだった。
【1日目 深夜/京都市市内】
【ブッチギリ平野@らきロワ】
【状態】健康、吸血鬼、贄の血の摂取より強化中
【装備】アイスソード@らきロワ
【持ち物】支給品一式、不明支給品0~2
【思考】
基本:鬱グロ展開のために殺し合いに乗る
1:お腹すいたなぁ……
※姿は泉こなたですが瞳の色は赤です。
※地球破壊爆弾の能力、ソードカトラス投影を使用できます。
弾数は無限ですが体力を消費します。
雷のような爆音を上げて空を飛ぶニェノチ。
しかし……二つの大魔術の使用は彼女に大きな負担をかけていた。
霞む視界。大きく揺れる機体。
極度の疲労が機体の制御が出来なくなってしまっていた。
「だめ……もうこの姿を保てない……」
この高さから落下すれば彼女とて確実に死は逃れられない。
気力を振り絞って高度を下げ着陸態勢に入る。
着陸先は目下に広がる大きな川……淀川。
ここなら多少着陸をミスしても大丈夫。
「わたしにだって……ハドソン川の奇跡を起こしてみせる……ッ」
朦朧とした意識のなかニェノチが変身したF-15Eは大きな水しぶきを上げて淀川の真ん中に着水した。
着水と同時に彼女は人の姿に戻る。
あとは岸に向かって泳ぐだけ。
幸い淀川の流れは緩やかで深さもあまりない。
あと少しがんばれば河川敷に辿りつける。
そしてなんとか彼女は淀川の河川敷まで泳ぎ切ることに成功した。
「助かった……」
そこで意識がぷっつりと途絶えそのままうつ伏せになって倒れるニェノチだった。
【1日目 深夜/大阪市・淀川河川敷】
【血神ニェノチ@ギャルゲロワ2】
【状態】気絶中
【装備】無し
【持ち物】支給品一式、不明支給品1~3
【思考】
基本:対主催として行動する。いつか自分(ブッチギリ平野)と決着をつける。
1:???
※姿は羽藤桂@アカイイトです。
※F-15Eに変身できますが大幅に体力と精神力を消耗します。
※彼女の贄の血を飲んだ人外は大幅にパワーアップします
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最終更新:2009年03月22日 10:05