今日の私はかわいいのよ!

月明かりに照らされた、夜の温泉街。
その一角に、黒髪の優男が宙から湧き出た様に忽然と降り立った。
素早くを見回し人影がないことを確認すると、通りの脇道へと体を滑り込ませる。

「……6/氏からは逃げられた様だな」

そう呟いた黒髪の男―――フラッグファイター風神F.Eは、安堵の溜め息を付く。
百戦練磨のロワ経験者である6/がマーダーの方針を取ったのなら、それ相応の驚異になるだろう。
誤解に定評のある6/氏の事、もしや自分も彼の事を何かしら誤解したのではないか……とも思ったが、やはり警戒は必要だろう。

「……とりあえずは、ニコβの仲間を探してみるとするか」

同じロワの書き手仲間なら、危険人物と安心できる人物の把握くらいできている。
そこまで考えたところで―――右腕を上げ、小さな風を展開させる。


轟ッ!


直後、数発の小さな火球が飛来し……展開した風の膜に弾き飛ばされる。

「ほう……風を操る力があるのか」

軽く感心した声は上から降って来た。
建物も確認すべきだったかと自分を叱咤し、風神は上を見上げる。
2階建ての平凡な民家、そのベランダ……そこに男は立っていた。
三編みに結った金髪、王公貴族の様な豪奢な衣装、そして手に携えた燃え盛る剣―――フランヴェルジュ。

「天上王ミクトラン……テイルズロワの書き手か!」
「姿だけで出身ロワを言い当ててくれるとは……テイルズシリーズを把握しているのか?
 礼を言うよ……お察しの通りの、テイルズロワ書き手としてね」

こちらをからかう様に、優雅に礼をして見せる。

「生憎……自ロワ参加者の関係で、テイルズシリーズも把握してるんでね……」

ミクトランの姿をした書き手から目を離さずに風神は答える。
ニコβの参加者の一人、バルバトス・ゲーティアはテイルズシリーズのキャラクターだ。
彼の出演作『テイルズオブディスティニー2』の前作……『テイルズオブディスティニー』のラスボス。
それこそが、目の前にいる天上王ミクトランなのだ。
過去には『一番弱いラスボス』と言われていたとしても、仮にも相手はラスボス。簡単に勝てるとは思えない。
しかし、強制脱出装置は使えない―――ならば。

「おや……私と戦う気か?」
「ラスボスの姿だからと言って調子に乗らない事だ……私とてお前と同じ書き手であり、フラッグファイターだ」
「いや、私は別にフラッグファイターではないんだが」

相手からのツッコミは聞かなかった事にする。反論は投げ捨てる物(キリッ)

「……行くぞ、テイルズロワ書き手ッ!」

気合いと共に、風から精製した弾丸を撃ち出す。
狙いはベランダ、足場が崩れて宙に放り出されれば追撃も容易い。

「……ひとつ、名乗っておくとしよう」

ミクトラン姿の書き手は、そう言いながらベランダから跳躍する。

「私の名は『菜梨』……テイルズ2ndの書き手だ」

風神はその名を頭に叩き込みつつ、菜梨が炎剣の魔力を利用して放ったファイヤーボールを風で散らす。
同時に地面の土を風で巻き上げ、砂煙で目を眩ませる。
相手が剣を持っている以上、接近戦は不利。ならば、距離をとりつつ弾幕で仕留めるまで。
そう考え、脇道から飛び出し―――

どん、と何かにぶつかる。
先程ベランダから飛び下りたばかりの、菜梨だった。

「なッ……!」
「問1」

驚愕で動きが止まったその瞬間、菜梨はフランヴェルジュの刀身で風神の足をしたたかに打つ。
斬られはしなかった物の、熱さと痛みで体勢を崩し……がら空きの胴体に、容赦ない拳が突き刺さる。

「がッ!」
「……『テイルズオブリバース』は知っているか?」

くの字に体を歪ませて地面に倒れる風神に、フランヴェルジュを突き付け菜梨は問う。

「ぐ……い、一応は知っているが……それが、どうした?」
「いい返答、そして問2だ。テイルズロワが持つ、他ロワとは違う独自のシステム……それは何だ?」

鼻先に突き付けられたフランヴェルジュの熱を感じながら、風神は考える。
テイルズロワが有する、特別なシステム……1stから続く、伝統を持つ物。

「予約制度を持たない事……か?」
「正解だ……テイルズロワでは予約の制度が無く、いつ何時投下が起きるかわからない。
 そして……それから生まれる、ある現象がある」

子供に説明する様に、ゆっくりと菜梨は語る。

「自分が書いている話と他の書き手が書いている話が、同じ場所、同じキャラを使っている事……
 則ち、話が被る事だ」
「わからないな……先程のTORの問、今の被りという現象の説明。
 お前は、私に何を言いたい?」
「おや、Rの特徴と今の話から推測できると思ったが……こう言えば分かるか?
 Rに登場する異能の力はこう呼ばれる……『フォルス』と」
「!?……まさかッ……!」

話の意味を理解したのか、風神が驚きの声を上げる。

「そう、君が風を操る力を持つ様に、私にも異能の力がある……
 テイルズロワを顕す力の一つ……相手が行動する瞬間、自分をその行動先に移動させる能力『被(かぶり)のフォルス』だ」

ベランダから飛び下り着地する前に、フォルスを使って自分の体を移動させたらしい。
奇しくも、風神が目眩ましに使った土煙が利用されてしまった訳だ。

「流石だな、テイルズロワ書き手……いや、菜梨氏。
 最後にお前の様な強い書き手と戦えた事を、私はあの世で誇るとしよう……」

そう呟き、風神は目を閉じる。
放送を迎えたばかりのニコβを置いて散るのは無念だったが、他の書き手達が頑張ってくれると信じよう。
嗚呼……出来る事なら、愛するグラハムや文をまた書きたかった……

「ここで問3だ」

菜梨の声が聞こえた。

「私の目的は、ロワでの優勝……だが」

む?と風神は目を開ける。


「残念ながら、私は一人でそれを成し遂げる事が出来るとは考えていない……なぜなら」

そこで菜梨は言葉を区切り……数伯置いて、告げた。

「なぜなら、私は方向音痴にされているからだ」


………………。


「……は?」
「確かに、私はミクトランが森で迷う話を書いた。そして今の私の姿はミクトランだ。
 だからって……ミクトランの迷子属性をそのまま引っ張って来るのはないじゃん!私は別にミクたんみたいな萌えキャラじゃないのに……
 っていうかここ何処なの?東西南北もわかんない……ふて寝したい……」

何やら、だんだんと口調が駄々っ子っぽくなっている。
外見である『ミクトラン』もいつの間にか『ミクたん』と呼んでいるし……あ、やばい、ちょっと萌えた。
そういえば聞いた事がある……『テイルズ2ndのミクトランは萌えキャラだ』と。

「……というわけで!改めて問3だ。私の協力者となるか否か……選べ」

何とか取り繕う様にして、フランヴェルジュを突き付ける菜梨。
……さて、困った。
はっきり言って、マーダーの片棒を担ぐつもりはない。文と違い、自分は綺麗な対主催だ。
しかし断れば十中八九、この場で殺される。フランヴェルジュでこんがり焼死体だ。
この萌えキャラ風ミクトランなら裏をかく事もできるかも……いやしかし、腐っても天上王だし……

(この気持ち……まさしく、どうしよう)



【一日目 深夜/静岡県 熱海】
【菜梨@テイルズ2nd】
【状態】健康
【所持品】フランヴェルジュ@テイルズ2nd 不明支給品0~2
【思考】
基本思考:優勝し、萌えキャラじゃない天上王になる。
1:フラッグファイターF.Eを『協力者』にする、もしくは殺害。
※外見はミクトラン@TODです。SSの影響で方向音痴+萌えキャラになっています。
※特殊能力:被のフォルス
一定範囲内の相手が何かしらの行動を起こす時、その行動先に瞬間移動する。
多少の誤差はあるが、だいたい相手の行き先を塞ぐ形で移動する。


【フラッグファイターF.E@ニコロワβ】
【状態】腹部に打撲、右脚に火傷
【所持品】DMカード・強制脱出装置(使用不可)、不明支給品0~2
【思考】
基本思考:ロワから脱出する
1:菜梨に従うか、否か……
2:ニコβの書き手達を探したい
3:6/氏はゲームに乗っているのだろうか……
※決意を6/氏と勘違いしています



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菜梨 5人のテイルズロワ書き手VS2人のニコロワβ書き手
風神とカードと一人の決意 フラッグファイターF.E 5人のテイルズロワ書き手VS2人のニコロワβ書き手

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最終更新:2009年06月07日 23:31
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