信念という名の旗

『修羅王』のスタート地点である小笠原諸島は、東京都より南南東約1000キロメートル離れた場所に存在する。
しかしそれは現実の距離であり、この書き手ロワの日本はミニチュアとして縮小化されているため
本来もっと距離は短いはず……なのだが。

えー、、どうやら今回、MAP作成の際に手違いがあったようでして。
まさかこんな最南端からスタートする参加者がいるとは、想定外だったのか。
ロワ開始当初、ミニチュア縮小化の処置がなされていたのは本土周辺の空域のみ。

つまり……『修羅王』のいた島から本土まで、リアルに1000キロの距離が離れていたわけでして。

「うおおおお!もうカラータイマーが鳴り始めた!?まずい、もうすぐ3分だ!?」

伊豆沖上空を飛行するゾフィー姿の『修羅王』は焦っていた。
まず、確認。ゾフィーが地球上に存在していられるのは3分間のみ。それはこのロワ会場でも同じことだった。
ゾフィーの飛行速度はマッハ10。これは時速にして1万1260キロに換算できるものと考える。
では、それをさらに分速に直して計算すれば……

どう考えても3分じゃ本土まで辿り着けません。ありがとうございました

「くっくそったれぇぇ!!柳田理科雄の空想科学じゃあるまいし、融通利かせろよおい!!
 これも全部ゾフィーの仕業だ、あの野郎ぉぉぉぉ!!!」

などと叫んでいる場合ではありません。もう残り時間30秒を切っています。
このままでは海上で変身が解除され、海に投げ出されることになってしまいます。

(どうする、このまま何もできず海で溺れ死ぬわけにはいかない!
 何か、何か能力は……いや、一つだけある!
 体力を消耗するが、この際やむを得ない……!)

『修羅王』は覚悟を決め、ゾフィーの持つ"能力"の一つを使用する。
――テレポーテーション。別の場所に、瞬時に移動する超能力。
しかしウルトラマンの使用するそれは、寿命をも縮める危険な技だ。

「それでもやるしかない……シュワッ!!」

掛け声と共に、ゾフィーの全身が光り――
次の瞬間、彼の姿はその空域から完全に消失していた。


ちなみにそのほんの10秒足らず後、手違いに気付いたのか主催者の手でこの空域の修正は行われた。
ついでにボマー商会が小笠原に向けて湘南を発ったのはその直後であったことも付け加えておく。

「う、うう……」

目が覚める。どれだけ眠っていたのだろうか。朝の光が、『修羅王』の目に差し込む。
彼のゾフィーの変身は解除され、元のフォルカの姿に戻っていた。

「生きている……らしい、な……」

周囲は先程までとは別の、どこかの山の中だろうか。
どうやら、テレポートには成功したらしい。

「ここはどこだ……とりあえず、場所を確認しな……い……と……!?」

しかし……急激に疲労と脱力感が全身を支配し、『修羅王』は立ち上がることが出来ないでいた。

「うう……まさかここまで負担がでかいとは……」

強烈な眩暈と吐き気が『修羅王』に襲い掛かる。仮にも寿命を縮めるほどのリスクを持つ技だ。
常人ならそのまま意識不明に陥る所を、辛うじて意識を保てているのは、修羅の肉体を得たがゆえか。
もう空が明るくなりかけている今、最低でも3時間以上は眠り続けていたはずだが……
それでもなお、テレポーテーションによる全身の疲労は消えていなかった。

「く、そ……こんなところで寝てる場合じゃない……俺はあの野郎を止めなきゃならない……
 俺達の汗と涙の結晶を踏み躙った、あの野郎の信頼を貶めないと……」

よろめきながらも、無理して立ち上がる。
ゾフィーへの憎しみだけが、今の彼を突き動かしていた。
だが、それだけだ。あまりの疲労に、満足に歩くことすらままならない。

「あいつの出番を止めるまで……俺は、死ねない……!」

そこまで喋った、その瞬間――
『修羅王』は、自分に向けられた鋭い殺気を感じ取る。

「何ッ!?」

身の危険を感じ、すぐさまその場所を飛び退く。
次の瞬間、彼のいた場所に弾丸の如く、一本の刃が突き立てられた。

「お前は……!?」
「ほう……俺の牙突をかわしたか」


『修羅王』を襲った蒼い弾丸。
それは旗・即・折の信念のもとに動く、一匹の狼――K。

ゾフィーの巨体が落下した音と衝撃に導かれ、彼はこの場所に姿を現した。
そこで最初に見たのは、復讐か何かの憎悪に表情を燃やす、一人の男。
そして、男の呟いた怨恨の言葉……それは、このゲームにおける「フラグ」と呼ぶには十分だった。

「マーダーだと……くそっ、こんな時、に……」

もはや立っているだけでも辛いのだろう、『修羅王』はよろめきながら……
それでもなお、闘志の籠った瞳でKを睨みつける。
最終盤のスパロワに参戦し、二次スパの問題パートに恐れることなく足を踏み込んでいく彼の勇気は、
絶体絶命のこの窮地においても、決して折れることはなかった。
――危険だ。フラグを立てたこの男、断じて放置するわけにはいかない。

「旗・即・斬……俺は俺の信念のもとに戦うだけのこと。
 それ故に、フラグを立てそれに殉じようとする貴様をこのまま見逃すつもりはない」
「!! 旗を……フラグ……そうか、お前が噂のフラグクラッシャー……
 ふ、ふふ……そういうことか……ッ」

Kの信念に気付いた途端……『修羅王』は突然笑い出した。
(気でも触れたか?……いや、違うな。この男はその程度の男ではない)

「お前のような奴を、探していた……」
「何……?」
「頼む……奴のフラグを破壊するのを手伝ってくれ……!」

『修羅王』の口から出た思わぬ言葉に、流石のKも戸惑いを隠しきれない。

「奴のフラグはあまりにも強大だ……そしてそれが消化されてしまえば……
 参加者の全てが、いやこのロワそのものが……奴の踏み台にされてしまう!」
「なんだと……!?」

存在するフラグは即座に断つ。それこそがKの信条。
そんな彼にとって、『修羅王』の言葉は無視できるものではなかった。

「頼む……力を貸してくれ……!
 奴を……ゾフィーを止めるために……!」
「!?」

そう言い残して、『修羅王』は再び気を失った。



(ゾフィーか……今さらな話だ。彼はヨッミーが直接、手を下しに行った。
 ……今、俺がこの男に手を下す必要はない)

そう、既にこの男『修羅王』に課せられたフラグは折られている。
どれだけ彼が足掻こうと、フラグの対象が存在しない今、無意味でしかない。
しかし――Kの脳裏に、一抹の不安が過ぎった。


……本当に大丈夫だろうか?


確かに一切自重しないヨッミーは、深く考えるだけ負けだといわんばかりの、超設定の塊だ。
だがそれほどの彼女の力を考慮した上でも、不安が消せなかった。
ヨッミーは……彼女は事態を、ゾフィーを甘く見すぎているのではないか?

……ゾフィーが地球にその存在を示してから、既に40年以上の月日が流れた。
つまり、最低でも我々が確認してきた40年以上……彼は自重せず、捏造を繰り返してきたことになる。
一介のパロロワSSの書き手達とは、あらゆる意味で年季が違うといってもいい……
いかに書き手ロワのチートキャラだろうと、突き詰めれば結局は一書き手でしかない彼らが、
本当にゾフィーほどの存在を潰せるのか?

書き手達とゾフィーの間には、どう足掻いても絶対に越えられない壁が存在する。
謎のカリスマ性――ゾフィーのそれはヨッミー達の比ではなかった。良くも悪くも。
そしてそのカリスマは、決して無視できるものではない。くどいようだが、良くも悪くも。

考えてもみるがいい。ゾフィーは今の今までまともにロワに参加した過去がないのだ。
完結済み(笑)のウルトラマンロワなどは数に数えられるものではない。
まともな出番は、スパロワで何度か特別出演しただけ、それだけでしかない。
にも拘らず……今や彼は完全にパロロワ界に浸透してしまっている。
もはや彼は、自重しないなどというレベルを超えた場所にいるのではないか?
現に、彼はスパロワで消滅したにも拘らず、あっさり生き返り書き手ロワに干渉しようとしている。
某てつをですら、ライダーロワでの最終回ではきっちり死亡するという最低限の空気は読んだのに。

――駄目だ。ヨッミーのやり方では、一時しのぎに過ぎない。
彼をフルボッコしようが因果律を操作しようが、所詮は一時的なものに過ぎない。
何故なら、スパロワでの彼の初登場は……フラグ一切抜きの、唐突なものだったからだ!
奴は必ず帰ってくる。あのゾフィーを完全に封じるなど……力押しでは不可能だ。

そして、書き手ロワで立てられたゾフィーの再登場フラグ。
本気で封じるなら、別の搦め手を考えねばなるまい。根本の部分から。
ヨッミーだけには任せられない、自分達でも何らかのアクションを起こす必要がある。

眠る『修羅王』の顔に視線を向ける。
彼の目から、涙が一筋流れ落ちた。
この男、ゾフィーに一体どれだけの屈辱を受けたというのか。Kには想像もつかない。

「……いいだろう」

一言そう呟くと、Kは『修羅王』を抱え上げる。

「そのフラグ……俺も壊すのを手伝ってやる」

とりあえず、ゾフィーに関する詳しい情報をこの『修羅王』から聞きださねばなるまい。
そのためにも、ここで眠ったままでいられては困る。
まずは彼を安全な場所に動かし、目が覚めるのを待つ。

妙な高揚感が、Kの中に生まれ出ていた。
それは、これまでに見たこともない絶大なフラグの存在に対してか。

――ゾフィー……相手にとって不足なし。貴様のフラグ、俺が完全に断ち切ってくれる。


彼は気付いているだろうか。
自分の決めた道が、自らの信念を揺るがすものだということに。

彼は――「ゾフィーのフラグを折る」という名のフラグを、自ら立ててしまったことに。


【一日目・黎明~早朝/福岡県】
【K◆kOZX7S8gY.@ジャンプロワ】
【状態】健康
【装備】勇者スポポロスの剣@オリ
【道具】支給品一式×2、エリクサー@FFDQ、不明0~4、『修羅王』
【思考】基本:旗・即・折。ゾフィーのフラグを折る。
    1:『修羅王』を安全な場所に移動させ、その目覚めを待つ
【顔】:るろ剣斉藤

【『修羅王』@スパロワ】
【状態】疲労(大)、気絶。ゾフィーに対する激しい怒り。
【装備】なし
【道具】支給品一式、不明支給品0~3
【思考】基本:対主催。同時に、ゾフィーの後半の登場・活躍フラグを叩き折る。
  1:仲間(主にスパロワ・二次スパの書き手)を集め、対主催活動に入る。
  2:ゾフィーを貶め、参加者・リアル双方全ての書き手からの信頼を完全に失わせる
【備考】※外見はフォルカ・アルバーグ@スパロボです



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フラッグ災苦 K フラグは未だ折れず
反逆の修羅王 『修羅王』 フラグは未だ折れず

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最終更新:2009年06月13日 16:43
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