「さて、と……」
ぽつり、と呟く声が1つ。
ここは沖縄県、屋久島。
鬱蒼と生い茂る大森林の中、1人佇む少女の影。
茶色い髪を左右で結び、顔には丸い伊達眼鏡。
その身に纏うのはセーラー服。陵桜学園と呼ばれる、らき☆すたという漫画の物語の舞台となっている学校のものだ。
しかし、今それを身に着けているのは、そのらき☆すたのキャラクターではない。
彼女の外見はクアットロ。魔法少女リリカルなのはStrikerSという、全く別のアニメの登場人物である。
その性格は飄々として嗜虐的。優れた知略をもって参加者に取り入り、場を引っかき回すステルスマーダーがお約束。
だが、ここにいるのはクアットロ本人ではない。
姿形が同じといえど、その心までも同じというわけではない。
彼女の名は考察の騎士。
なのはロワの書き手にして、考察SSを書くことに定評のある書き手である。
執筆に加わったのはごく最近でありながら、なのはロワ書き手の中でもトップクラスの速筆を誇り、順調に投下数を伸ばしてきた。
膨大な容量による考察ぶりは、まさしくなのはロワの頭脳。
基本的に考察といえば対主催の仕事だ。
故に彼女もまた、己が得意とする考察力をもって、対主催の道を歩もうとしていた。
「確かにパロロワのゲーム的側面を考えてみれば、この配置は妥当ではありますが」
そして今まさに、その考察の真っ最中。
おどけたクアットロの面影はそこになく、冷静沈着そのものの声だ。
現在彼女の脳内を占めているのは、この書き手ロワで生き残るための最重要要素――旅の扉のこと。
フィールドにランダムに配置されているというそれの、数や位置に関しての考察である。
この手のものは多すぎてもいけないし、少なすぎてもいけない。
また、一箇所に集中しすぎてもいけないし、ぱらぱらとばらけすぎてもいけない。
そして幸いにも、この最初のフィールドはミニチュア日本。
現実に存在している地形であれば、区分のし方もいくらか分かりやすいというもの。
旅の扉の数を予想するならば、大体4つから6つくらいといったところ。
北海道、東北、関東、信越、北陸、東海、近畿、中国、四国、九州、沖縄。
日本の地方区分は合計11地方だから、2分の1から3分の1くらいの割合だろう。
隣接した地方に配置されている可能性は低い。同じ地方に2つ以上配置されていることは絶対にない。
事実、この推論はあながち間違いではない。
この書き手ロワで最初に発見された旅の扉は、関東地方の埼玉と近畿地方の大阪だ。
完璧に正しいと断定することはできないが、ある程度の信憑性はあると考えていいだろう。
そして、考察の騎士の現在地は沖縄。
彼女自身、ここに旅の扉のある可能性は高いと踏んでいた。
日本列島から大きく離れたこの場所ならば、ばらけさせるには都合がいい。
更にここに置かれていなければ、この沖縄に飛ばされた人間の生存が絶望的になる。そんな結果はフェアではない。
そう考えて、手始めにスタート地点である屋久島を散策し、
巨大な屋久杉の根元へとやって来たわけなのだが。
「……まさかスタート地点にあるとは思いませんでした」
半ば呆れたように呟く考察の騎士の目の前では、青白い光が渦を巻いていた。
旅の扉だ。
本当にここにあったのだ。
なんともまぁ都合のいいことだ。
確かに森林の広がる屋久島ならば、そこそこに探すのも困難だろう。
だがそれならそれで、何でその近くに参加者を放り込んだのだろうか。ひょっとして主催は馬鹿なんじゃないか。
実際に探した時間は僅か20分近くだというのに、気だるく思えてきた考察の騎士であった。
「と……呆れている場合ではないですね」
思考を切り替え、今後の方針を模索する。
さて、この旅の扉をどうするべきか。
このまま飛び込むのが一番安全だろうが、本当に飛び込んでいいものか。
仮に自分の力で誰かの助けになれるのならば、それに越したことはない。
そう考えると、他の参加者を見捨てて真っ先に旅の扉を使うのは、対主催としては悪手とも思える。
だが下手に動き回っては、マーダーと遭遇する可能性も高くなってしまう。
それで殺されてしまっては、せっかくの旅の扉も宝の持ち腐れだ。
どちらにせよ、まずは支給品を確認してから考えるとしよう。
何か役に立ちそうなものがあれば、方針も決めやすいかもしれない。
逆に何もなかった場合は、いっそこのまま旅の扉に入ってもいい。
しかしどの道を歩むにしても、まず最初に達成しておきたい目標がある。
それは――
「 ま と も な 下 着 が 欲 し い 」
【一日目 深夜/沖縄県屋久島 屋久杉の根元】
【考察の騎士@リリカルなのはクロス作品バトルロワイアル】
【状態】健康
【服装】陵桜学園の制服(高良みゆき@らき☆すた のもの)、ノーブラノーパン
【装備】なし
【持物】基本支給品、不明支給品1~3
【思考】
基本:殺し合いには乗らない。同じ対主催の参加者を助けたい。
1.ま と も な 下 着 が 欲 し い
2.支給品を確認し、今後の方針を決める。このまま旅の扉に飛び込むか、ギリギリまで他の参加者を探すか。
3.可能なら、なのはロワの書き手と合流したい。
【備考】
※外見は陵桜学園の制服を着たクアットロ@リリカルなのはStrikerSです。
※旅の扉は4つから6つくらいで、各地方に均等に割り振られていると思っています。
【全体の備考】
※沖縄県屋久島の屋久杉の根元に、旅の扉があります。
時系列順で読む
投下順で読む
最終更新:2009年06月03日 00:28