――――"あの子"が発動した小規模バトルロワイアル終了後。日本崩壊中。主催者の空間にて。
「ふむ、やられた」
◆ANI2to4ndEは、三つの躯を睨んだまま呟く。
「"あの子"め。少々おいたが過ぎたな……このような介入を果たすとは」
旅の扉での一件を目にし、呟いたのはそんな言葉。
まさか破損した旅の扉の中で、バトルロワイアルを小規模ながら開催するとは。
これでは主催者たる我々の立場が無い。全然無い。
「って言ってもね……で、僕にどうしろっていうのさ?」
そんな苦虫を噛んだ様な呟きを漏らす◆ANI2to4ndEとは少し離れた場所から、別の者が話しかける。
柔らかな質を孕んだその声は、今までの参加者や◆ANI2to4ndEの内の個とは明らかに違う者であるという証左。
そう、今は主催者の為の空間――召還された六代目がいた場所だ――には確かに"彼"であり"彼女"でもある一人の存在がいるのだ。
"それ"はまさしく◆ANI2to4ndEが呼び出した、六代目に続く協力者である。
「六代目さんには既に別の頼みごとをしていてね。だから是非君に一任したいのさ、今回の事をね……"エドさん"」
「恐れ多いなぁ……凄い大事な事なんでしょ?」
エドと呼ばれた"それ"は、"今はセージの姿をして"立っていた。
アンチスパイラルの姿を模した◆ANI2to4ndEを見据え、軽口を叩いている。
そう、"それ"はあの
むっつりラナルータと言霊の女教皇と同じ根源から出でた者。
正しくパロロワに存在する三人目のラジオDJ、エドその人であった。
「まぁ、そう言わないで欲しいね。君は"あの子"の身内と同じ根源から生まれた存在だ。
それに君の力を使えば、現場での咄嗟の戦いでも万一のことが無い限りは切り抜けられるはずだ」
「んーまぁ、そうかもしれないけど……まぁ、いいか。六代目さんも頑張ってるんでしょ?」
「ああ」
何かを考える仕草としてはありがちな、顎に手を重ねるポーズで右左に往復しつつ、◆ANI2to4ndEの言葉に応対するエド。
蒼く長い髪がそれによって静かに揺れている。まるで女性のようなそれは、非常につややかだ。
だが、何往復目かが始まる瞬間。もっと言えば"回れ右をした瞬間"に、それは突然急激な変化を起こした。
まずエドの喉から走った砂嵐のようなノイズが、一瞬で体全体を覆ったかと思えばすぐに消滅した。
そして改めて姿を見れば、まず髪の色が銀に変わっていた。服装も黒いスーツへと変化している。
顔つきは鋭くなり、頭には角を燃したアクセサリーが。「なるほどな」と呟いたその声は低くなっていた。
そう、つまりエドは――――男賢者セージの姿から皇帝マティウスの姿へと一瞬で変化したのだ。
この、視認出来ぬ速度での身体の変化が、エドの能力である。
ラジオDJとしての顔と、彼であり彼女でもあるエドの体に存在する「無名キャラ因子」。
この二つに更にDQ出典の呪文である「モシャス」の力を加えることで、この面妖な変化が成し遂げられるのだ。
ラジオでの朗読にて男女の壁を無視する、という実績を体現したような異能。
自信の声を晒すことの無い書き手が持つことは不可能な、ラジオDJのみが持ち得る力だった。
「なるほど……相変わらずだな。貴方はエドという個を持つにも関わらず、"誰か"であって"誰"でもない。
まぁ良い。そんな風に全てを越境する貴方を、我が◆ANI2to4ndEの一部たるネコミミストは気に入っている」
「ほんとに!?」
こうやって◆ANI2to4ndEが口を開いている間にも、エドは再びその姿を変化させていた。
マティウスの姿は今はどこへやら。◆ANI2to4ndEが話し終える頃には、その姿は金髪の王女タバサとなっていた。
言霊の女教皇と姿が被っているが、それすらも気にせずに能力を発動するその行動には遠慮が無い。
性別を超えるという荒業を普通に行いつつ、エドは質問を続けた。
「じゃあ、えっと、私はどうすればいいの?」
「状況は既に確認しているだろう? まずは旅の扉内で介入を敢行した"あの子"を追って欲しい。
そして居場所が特定するか、現状ではどう足掻いても不可能だと判断した場合、ルーラあたりでまたこちらに戻ってくれ。
さっきも言ったが、六代目さんには現場で働いてもらっている以上、これを頼めるのはエドさんしかいない。宜しく頼む」
それに特に大げさに驚くこともせず、◆ANI2to4ndEは答える。
その内容はいたって事務的なもの。主催者としては至って普通だ。
やはりフリーダムな書き手ロワであっても、主催者はやっぱり主催者なのである。
「そっか。うん。確かにさっきの根源の話だって何かの縁みたいなものだし……でも、大丈夫かな?」
「命の危険に晒されると判断した場合と、こちらが新たにエドさんに用事が出来た場合は、我々がこの空間にすぐに転送する。
仮に対主催エンドへと近づいた時、六代目さんと貴方にも戦って貰わなければ困るからね。反逆さえしなければ命は保障しよう」
「そんなに悪者さんみたいな言い方しなくても大丈夫。六代目さんみたいに頑張るわ。出られるだけで儲けものだもん」
「ああ。恐らくまた仕事は増えるだろうから……そのときはまたよろしく」
エドの前向きな言葉と、短い返答。それを最後に◆ANI2to4ndEは再びその姿を隠匿した。
部屋に残ったのは少女一人。死者と同じ形をした、明らかな異形。
「さて、と……」
誰に言うでもなく呟きながら、"彼女"は空間内のある方角へと目をやる。
視線の先には、蒼い光の渦。
FFDQ3rdに関わる書き手にはお馴染みの旅の扉だ。
これに乗って捜索を開始すればいいのか、とエドはそう解釈した。
随分と投げっぱなしというか、これはまた。ため息が一つ漏れる。
「しばらくは裏方かぁ……カオスな現場、見たかったな」
そんな残念そうな呟きを残したエドは、すぐさま旅の扉へと姿を消した。それを合図にしたのか扉は収縮し、消え失せた。
空間内には誰もいない。旅の扉の内部にて物言わぬ死体になった三人の書き手も、◆ANI2to4ndEが片付けたのか消えている。
何も無い。誰もいない。気配も感じられない。元のまっさらな空間に逆戻り、だ。
次にここに人が集まることがあるとすれば、それは何かの騒動の幕開けの合図――――なのかもしれない。
○○○
こうして◆ANI2to4ndEの命により、二人のラジオDJが密やかに行動を開始した。
六代目は実際の会場で。エドは参加者の及び知らぬ場所で。
前者はまるで活き活きとしたルガールの様。
後者はまるで活き活きとしたザンデの様。
この二人の働きは、果たしてどのようなフラグを生み出すのか。
それは誰も及び知らぬところである。
――――バトルロワイアル二日目開始を前に、場所は違えど、両者はロワを動かす為に、今、動き出す。
これが破棄されなかったらだが。
【???】
【エド◆O0LqTosP8U @FFDQ3rd】
【状態】普通、タバサモード
【装備】???
【道具】???
【思考】
基本:◆ANI2to4ndEの協力者ライフ満喫。
1:"あの子"の捜索。居場所を特定するか、それが不可能であると判断したら◆ANI2to4ndEの空間に帰還。
2:六代目さんが現場で頑張ってるんだから、こっちも頑張らなきゃ。
※外見は現在までセージ(DQ3)、マティウス(FF2)、タバサ(DQ5)までの変化は確認。どこまでやれるか不明。
※主催側の人間です。
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最終更新:2009年06月17日 01:10