光の届かぬ森の中。
今の時刻が夜であるから日の光が無いのは当然だ。
それに加えて周囲の木々に生い茂る鬱蒼とした葉のせいでこの一帯には月の光も届かない。
だが本来なら暗闇であるはずの森の中に仄かに輝く光がある。
それはまるでこの状況を打破しようとする希望の光とも言えよう。
そうここは殺し合いの場なのだ。
「では、お前も殺し合いには乗らないと」
「はい、こんな事が許されるはずがありません。自分が生き残るために誰かを殺すなんて……」
その光とは懐中電灯の光。
森の中、二筋の光が互いに互いの持ち手を照らしていた。
そこにいるのは二人、この殺し合いに巻き込まれたパロロワ書き手である。
「俺も同じだ。いきなり巻き込まれて殺し合うなど、まさか自分が体験するとは思ってもいなかったぞ」
「同感です」
「そう言えば自己紹介がまだだったな。俺は『
不断の騎士』だ」
『不断の騎士』――それがセフィロスの姿をした彼の名だ。
もちろん本名ではない。
いわゆる「綽名」「ニックネーム」といった類の名前だ。
いきなりバトルロワイアルに参加させられて、一人見せしめが死んで、このような場所にいたのが数分前。
そこで向こうから懐中電灯を照らしてこちらに来る一人の参加者と出会って今に至る。
「『不断の騎士』……どういう由来なんですか?」
「たぶん、あの時の事から来ているんだろう」
「ん?」
不断の騎士は思い出していた。
あれは
なのはロワが始まってしばらく経った頃だった。
当時はクロススレが本業の職人の方々は何かと忙しいらしく、ロワは停滞し始めていた。
だが非職人であった不断の騎士は違った。
職人達が投下できない時でも次々と予約と投下を繰り返して一人で懸命にロワを回していたのだ。
そのせいか書き手紹介にも「過疎に陥った期間も一人黙々と更新を続け、なのロワの存在自体を後々に繋いでくれた書き手氏」と書かれる事になった。
「……そうだな」
確かに現状は非常に厳しい。
正直に絶望的と言っても過言ではないだろう。
でも、だからどうした。
最初の火は小さくても、そのうち次に繋がる火になるはずだ。
なのはロワが良い例だ。
あの時一人で黙々と書いていたが、そのうち他の職人書き手それに新規の書き手も来てくれるようになったではないか。
不断の騎士の胸に温かいものが込み上げてきた。
「俺は諦めない。必ずこの殺し合いを打ち破ってみせる!」
「それは、つまりパロロワ用語で言うところの『対主催』という事ですね」
「そうだ。安心しろ、俺はセフィロスの姿だから並みの奴らよりも力はあるはずだ」
「こんな書き手さんと最初に出会えて私は恵まれていますね。ああ、そうだ。これ一つ如何ですか」
「これは……オレンジか?」
「はい、デイパックの中に入っていて……たぶん支給品ですね。この出会いを祝して、御一つどうぞ」
そのオレンジは懐中電灯の光の中で輝いていた。
余程瑞々しいのだろう、見ているだけで食欲が湧いてくる。
「旨そうだな、ありがとう、えっと……」
そこで不断の騎士はある事に気が付いた。
まだ相手の名前を聞いていなかったのだ。
さっきから一方的に考え込んでいたり自分の事ばかり話していたから仕方ないと言えば仕方ないが、いくらか申し訳なくなる。
「そう言えば聞いていなかったが、お前の名前は?」
「『散りゆく者への鎮魂果』」
その単語が相手の口から紡がれると同時に手中のオレンジに変化が起こった。
あれほどまでに瑞々しくもぎたてのようだった果実に突如罅が入ったと思ったら真っ二つに裂けたのだ。
そして割れたオレンジから出てきた物は黒い銃口。
「な!?」
それが不断の騎士の最期だった。
銃口から放たれた弾丸は狙い違わず不断の騎士の額に到達して、その頭を石榴のように吹き飛ばしていた。
『Prince of Killer』――それがこの者の名だ。
今でこそ大人しいものの以前はだいたい2話に1話の割合で死亡者を出す話を投下していた殺し合い加速派書き手だ。
「序盤の対主催殺しはロワに緊張感を与える常の策。とりあえず第1回放送までは人数減らしの意味でも積極的に殺そう。
死亡者が多かったら生き残った人への影響が大きくなって堕としやすいだろうしね」
もちろん無理をするつもりはない。
パニッシャーが支給されていたとはいえ油断は禁物だ。
自分が敵いそうにない相手なら隙を作って撤退、相手が殺し合いに乗る書き手なら放置、迷っていたら殺し合いに乗るように仕向ける。
不断の騎士はどうも乗りそうになかったから殺したまでのこと。
「さあ、次はどんな人かなあ?」
そう呟いてPrince of Killerは不断の騎士のデイパックを回収すると、何の未練も無くその場から立ち去るのだった。
余談だが、Prince of KillerはPrinceという名前にもかかわらず姿は楠沙枝(魔法少女)だった。
【不断の騎士@なのはロワ 死亡確認】
【1日目 深夜/山梨県】
【Prince of Killer@オールロワ】
【服装】魔法少女沙枝の格好(ピンクのフリフリの魔法衣装)
【状態】健康
【装備】パニッシャー@なのはロワ
【持ち物】デイパック×2、支給品一式×2、オレンジ50個@コードギアス、不明支給品1~3(元々不断の騎士の物)
【思考】
基本:殺し合いを加速させる。
1:第1回放送までは出会った者を殺していく。
2:但し相手が殺し合いに乗っていれば放置/迷っていたら殺し合いをするように仕向ける/自分より強ければ撤退。
【備考】
※『散りゆく者への鎮魂果』:Prince of Killerの持つ異能。「散りゆく者への鎮魂果」という言葉と共に果物から現れる銃が相手を撃つ技。自分が触れた果物でないと効果は発動しない。成功すると再び使えるまで間が開く。
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最終更新:2009年03月26日 14:44