零人目 「唯一絶無」
あらゆる生あるものの目指すところは死である。 ――ジークムント・フロイト(精神分析学者)
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書き手バトルロワイアル3なるものが始まったらしい。
それは、もうここまで来ている人間に対しては説明の必要はないかもしれないが一応説明しておくと、
パロロワという二次創作ジャンルが存在し、つまりそれは二次創作を手がける作者=書き手がいることを意味し、
じゃあその書き手をモチーフにしてパロロワ――あくまで創作上ではあるが、殺し合いをさせよう、なんて企画である。
創作であり創作でしかない。
そんなことは十人が十人承知している。言い換えるならば十人十色に承知している。
同じ境遇にありながらもそれぞれに個性的な道行を選ぶのは、まさにこれがバトルロワイアルといった風だ。
ポルナレフの三択よろしく突きつけられ回避できない現実に彼らは四苦八苦し、そしてその狭間に物語を生み出し劇を見せる。
極上のエンターテイメント。
もっとも、そんな風に言えるのはどれだけいるのか解らない。
ただの観客ならば気安く口にできるだろう。演者の一人ならそれは難しく、劇作家ならばなお難しいかも知れない。
支援を贈るクリエイターの立場ならどうだろうか? 中にはそのうちのいくつか、または全てを兼ねる人もいるだろうがどうか?
ちなみに”ぼく”はと言われると、いささか卑怯かもしれないがまだそれはわからないと今は答える。
なにせこの先にどういった話が展開するのか全く未知。ぼくは白紙の台本を渡された一人の語り部でしかないのだから。
さて自己紹介をしよう。
本来ならば語り部である存在がそんなものをするべきではないかもしれないが、しかしぼくも実は”書き手”なのだ。
ただ、ここにいてもいいのかどうかはっきりとはしない故にこんな役割を押し付けられているのだけど、まぁ気にしないことにする。
ぼくの名前は――「いーちゃん(仮)(◆EchanS1zhg)@ラノロワ・オルタレイション」
先日再始動したラノロワ・オルタレイションでOPを採用してもらい、続けて三作投下して今現在計四作。それが経歴。
名前の後ろに(仮)とついてるのは書き手紹介がまだないせいで、今回は自分でつけさせてもらった。
とはいえ、トリップと投下している作品を鑑みればこれかもしくは近い名前をつけられることは間違いないと思うけどね。
さてさてそろそろ前置きが長くなりそうだ。
語り部の本分である、物語の本文を読み上げる仕事を始めるとしよう。
視線をバトルロワイアルの舞台へとゆっくり下ろしてゆく。そこには――……
壱人目 「真白黒幕」
バトルロワイアルの会場となるどこかのまたどこか。ある場所に一つの小さな喫茶店があった。
夜である外は真っ暗だが、その店の中は暖色の明るい照明が点っており暗闇が生み出す不安も緊張も存在しない。
英国風とでも言うのだろうか、店内のインテリアは時代がかった上品なもので揃えられておりその雰囲気はけして悪くない。
そして、狭い店内に二つしかない四人がけのボックス席の片方。そこに一人の物静かな少女が座っていた。
雪のように白い肌に、小さな顔には大きめのはっきりとした瞳とその上にかかるフレームの細いメガネ。
薄い色の髪の毛はボブカットを少しラフにした感じで、水色の襟が大きなセーラー服に紺のカーディガンをはおっている。
簡単に言えば、そこには”長門有希”の姿をした書き手がいた。
彼女(?)の名前は――「
地図氏(◆S8pgx99zVs)@書き手ロワイアル2nd」
前回の書き手ロワ2ndにおいていくつかの目立った作品を投下した、所謂書き手ロワ書き手の一人だ。
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長門有希の姿をした地図氏はテーブルの上に置いたノートPCを凝視し、時にキーボードを叩いてなんらかの操作をしている。
それが何かというのに興味は尽きないが、さておくとして”ばく”と長門有希には少し因縁が存在する。
ラノ・オルタにはあの涼宮ハルヒの憂鬱も一作品として参加しており、当然の如くと言った感じに長門有希もキャラとして参加している。
その彼女をぼくはメガネ付きで登場させた。所謂、”消失・長門”というやつである。
アニメ媒体からの参加では(いまのところ)実現できないそれを、あそこで実現してみたとそういう訳だ。
まぁ、あれである。メガネ属性というヤツだ。大佐のコピペ改変を貼るほどではないが要素としてはかなり好きな部類に入る。
消失長門はそれだけで一個のキャラ足りえる人気の持ち主であるし、ロワ中の便利なドラえもん役である長門有希を
ただの気弱な文学少女として登場させたとして一体誰がこれを責められようか、なんてものなのである。
しかしながら、更に話を脱線させると消失長門はぼくのフェイバリットではない。もう一人のメガネ長門こそが極上だと思う。
つまりはvs朝倉涼子のシーンより以前の長門有希。
情報統合思念体によって生み出されたロボットとしてプレーンに近い状態の長門有希である。
ロボットが感情の機微を覚えそれをつたなくも表現するのは、いわゆるひとつの萌え要素(by泉こなた)ではあるが
だとするなら、ロボ娘というキャラは初期段階より一つ進むその瞬間こそが最上かつ極上の時期であると思うがどうか?
さて脱線しすぎた。ちなみにぼくは同じ宇宙人なら朝倉涼子萌えである。こっちの方がロボ娘っぽいし、太眉属性だし。
ボックス席の中の長門……もとい、地図氏の様子は変わらない。
ディスプレイを見て時折キーを叩くだけ、いつまでもいつまでもそうしていそうな様子だった。それこそロボットの様に。
これじゃあ話が進まないと思ったのかそれとも偶然か、あるいは物語上の必然なのか、そこに新しい登場人物が現れた。
カランと揺れるベルの音が店内に行き渡り、開かれた扉の向こうより二人目の書き手がここに登場する。
弐人目 「銀色策家」
「よう、私」
開口一番に、その書き手――いやこの場合は作家と呼ぶのが相応しい彼女は、ボックス席の中の地図氏に呼びかけた。
こくりと頷きだけで挨拶をすませる地図氏に小さく鼻を鳴らすと、その対面の席へと腰を下ろした。
見た目は二十台後半ぐらい、我の強そうな顔の上にこれまたメガネを――ボストンタイプの黒縁のものをかけている。
白いタートルネックに薄緑色のジャケット。臙脂色のスカートに薄いストッキング。足元はパンプス。
外はねの髪が特徴の彼女の姿は、菫側ねねね先生のそれとそっくりであった。
月下の棋士とそう言えば通っちゃう。無差別爆撃型考察書き手としてアニロワ2ndに存在した一人の書き手である。
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「愛想がないのが愛想かお前は……いや、”私”は」
いつの間にかにテーブル上にあった熱いコーヒーをすすると、電界(ryはやれやれと溜息をついた。
私は私……そう、このテーブルに揃ったこの二人は同一人物。別トリップ、別名義の同一書き手なのである。
俗な言い方をすれば、中の人が一緒というやつだ。
「これを見てよ。一体、何を期待してこんなものを支給するのかねぇ……いやはや理解できん」
言って、電界(ryが鞄から取り出しテーブルの上に広げたのは、”詳細名簿”というものだった。
中に記された情報の量や、紙やディスクなど媒体は様々だがパロロワの中でも定番のアイテムの一つである。
今回のもので言えば、それは相当な量が存在した。タウンページ二冊分くらいだろうか、最早凶器である。
「さて、名簿もなけりゃルールもよく知らされてないとなれば、この情報の塊は大きなアドバンテージってわけだ」
ねねねそっくりの電界(ryはその資料の山をバシバシと叩く。
「けどね! 私はこんなものを見てやんない! なぜなら、それは――」
「――抱える情報量の増大はそれに比例して執筆難度を高める」
それだよ。と電界(ryは地図氏の言葉にうんうんと頷く。
「なぁ、そこの”私”もそう思うよな?」
電界(ryはカウンターの後ろ、新しいコーヒーを淹れている更にもう一人の自分にそう問いかけた。
参人目 「孤群奮闘」
テーブルの上に新しいコーヒーを二杯用意し、その影の様に気配の希薄な少女は地図氏の隣へと腰掛けた。
印象としては隣の地図氏に近く、白い肌。人形の様な無機質で整った顔。腰まで伸びた美しすぎるストレートの黒髪。
社会不適合者を隔離する為の学園の、空色の制服を着た彼女の姿は支倉曜子という少女と同一だった。
彼女の名前は――「
群青枝篇(◆AZWNjKqIBQ)@ギャルゲ・ロワイアル2nd」
タイトルに反して魑魅魍魎が跳梁跋扈することとなった其処で、壊れた人間モドキを書いていた孤独な書き手である。
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「はい。あんたにはこれをやる。かけときな」
電界(ryは懐から銀フレームのメガネを取り出すとそれを群青枝篇へと手渡した。
それを彼女は何を言うでもなく素直にかける。キュンキュンメガネな曜子ちゃんの誕生の瞬間であった。
「で、私ばっか顔つつきあわせてのこれからの身の振り方なんだけれども……あんたらはどうなのよ?」
その問いに地図氏も群青枝篇も特に答えはないのか無言のままだ。
質問をした電界(ryからも次の言葉は出てこず、その表情は渋い。
「……まぁ、いいや。ねぇ、そこのスーパーニンジャ。何か食べるもの作ってくれない? サンドイッチとか――」
「――カレーライスがいい」
む。と、電界(ryが怪訝な顔をする。
見れば地図氏は長門の顔に強い意志を表していた。その琥珀色の瞳もなんだか今はカレー色に見えるぐらいだ。
「来て、いきなり……カレーライス?」
「うん」
「カレーってあれだよ。ここロワん中だよ。意味わかってるよね? こう言うのを長門に説法って言うのかもだけど」
「でも食べたい。カレーライスが食べたい」
ふぅむと、電界(ryは唸る。カレーと言えばパロロワでお約束の不幸フラグ食品だ。
食べたら全滅必死ってぐらいである。というか、この電界(ryはアニ2においてそれを実際に行っていたりもする。
「まぁ、いいや。じゃあ曜子ちゃん作って――」
「――面倒」
一蹴。
そして、四人目の”私”がそこに現れた。
四人目 「幸明星大」
「遅れてごめ~ん☆」
ちょっと遠くに出ちゃってさ。などと言いながら新しく喫茶店に入ってきた”私”は泉こなたの姿をしていた。
てててと歩き、ちょこんと電界(ryの隣に座ると、目の前の用意されていたもうぬるくなっているコーヒーをグイと飲み干した。
その名の通りに、らき☆ロワの夜天を一番に輝き流れるラッキースターな書き手である。
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「で、今何話してるの? 情報交換? それともマーダー協定とか組んだりとか?」
いーやなんにもと、らきすたの言葉に電界(ryは首を振る。そして彼女にもメガネを勧めた。絶望先生のメガネだった。
「わぉ☆ 何この資料の山! これが支給品? これはまた……って、長門っちは何してるの? それも支給品?」
「……マインスイーパー」
おおぃ! と、電界(ryが地図氏にツっこむ。
てっきり長門のことだから首輪の構造解析か、主催側の人間に通じたり、ハッキングしてるではと思っていたのだ。
しかしどうやらこの地図氏はただ単に暇を潰していただけらしい。
「仕事は終わってる……見て」
確かに暇だった。つまりはとっくに仕事は終えていたのである。中々のチート的手際のよさだった。
皆に見えるようにと向きを変えられたノートPCのディスプレイには、日本地図と数多くの光点が表示されている。
「うわ、日本が舞台? どっかとかどっかのロワを思い出すねぇ~☆」
「この点って、全部参加者か……なんかすっごい多いんだけど」
「今回もカオスなことになりそうじゃない☆」
「まぁ、賑やかってのは祭りとしちゃ悪くないけどさ」
なるほどねーと、電界(ryは資料の山を見る。無数の参加者に無数の支給品。納得の量だと。
「あ、支給品と言えば忘れていた☆」
何かに気付き、そしてデイパックを漁るとらきすたはそれをテーブルの上に出す。
皆が注目する中、テーブルの上でピチピチと跳ねるそれは、五人目(?)の”私”だった。
伍人目 「破天降灰」
「それって何よ?」
「あぁ、先日うちのロワで支給品化したばっかりの”地球破壊爆弾No.V-7”☆」
『いえーい☆ 既出制限なんのそのだね♪』
私は支給品だから問題ないも~ん♪ と、口もないのに喋っているのはテーブルの上の血液パックだった。
これの名前は――「地球破壊爆弾No.V-7(◆S8pgx99zVs)@アニメキャラ・バトルロワイアル」
本当につい先日、らき☆ロワの作品内で参加者から支給品化した地球破壊爆弾No.V-7その人(?)である。
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『何が功を奏するかわかんないものだね~♪』
四人がけのボックス席に五人の”私”が揃った。ならば、さてこれからそうするのかが議題である。
まさか○○レンジャーでも組んで対主催をするのか、はたまたそれぞれ別に動き出すのか、または大考察しちゃったりするのか。
真の対主催に通じる何か裏の存在として暗躍するのか、それぞれに奉仕先を見つけてその彼、彼女の為に非道を尽くすのか。
どうするのだろうか――?
「……今日、GR2の最終回打ち合わせチャットがある」
ボツリと群青枝篇が呟いた。そして、それに同調する様に他の三人と一つも口を揃える。
「ぶっちゃけ、絶望ネタは前回のでやりきった感あるしなぁ……大考察はぶっちゃけめんどくさいし」
「私を書き手ロワ書き手として書くのは、キャラ被り的な意味で困難」
「私もさっさと解放されたいかなぁ……、らきの方で手一杯な感がないでもないからね~☆」
『意思持ち支給品はでしゃばらないのが美徳だよね~♪』
じゃあこれを……と、地図氏がテーブルの上に拳大の黒い筒のようなものを置いた。
「何これ?」
「地球破壊爆弾……の小さいバージョン。施設破壊爆弾。これなら他人に迷惑はかからない」
「準備いいね☆」
「………………心中」
『これなら支給品も木っ端微塵だね~♪』
カチっとスイッチを押して、数秒。
何をも、多次元的に、完膚無きまでに、完全無欠に、再生の可能性すらも一片残らず破壊する爆炎がそこに立ち上り――
――そして、そこから誰もいなくなった。
六人目 「一誤一会」
おお わたしたちよ! しんでしまうとはなにごとだ!
【地図氏(◆S8pgx99zVs)@書き手ロワイアル2nd】
【電界結ぶ二つの名簿《ムーンサイド・レーダー》(◆AZWNjKqIBQ)@アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 死亡】
【群青枝篇(◆AZWNjKqIBQ)@ギャルゲ・ロワイアル2nd 死亡】
【スーパー=ザ・ラッキースター=イチバン(◆BOMB.pP2l.)@らき☆ロワ 死亡】
【地球破壊爆弾No.V-7(◆S8pgx99zVs)@アニメキャラ・バトルロワイアル 支給品破壊】
こうして、私達の物語は早々に幕を閉じ、そして六人目の私であるぼくの語り部としての仕事もここに終わる。
これでいいのか悪いのか。それは今はわからないけれども、もし機会があるならばまたここに語りに来てもいいかも知れない。
それまでは、誰かに書き手紹介してもらえるぐらいにまで努力するとしようか。まぁ、そんなことは――
――戯言だけどね。
【いーちゃん(◆EchanS1zhg)@ラノロワ・オルタレイション 不参加】
【大阪府/喫茶店跡地/1日目-深夜】
※喫茶店がありましたが、木っ端微塵に跡形もなく消え去りました。
※遺体や支給品なんかも一切残っていません。
【詳細名簿@ロワオリジナル】
全参加者及びその候補の情報と、支給品やその他諸々の情報が詳細に書き込まれた紙束。
【明智のメガネ@アニ2】
明智健悟@金田一少年の事件簿がかけていたメガネ。
【糸色望のメガネ@アニ2】
糸色望@絶望先生のかけていたメガネ。
【地球破壊爆弾の血@らき☆ロワ】
身体を捨てて支給品化した地球破壊爆弾No.V-7の血。血液パックに入っている。
【施設破壊爆弾@ロワオリジナル】
地図氏@書き手2が投影した施設を丸々一個吹き飛ばす爆弾。
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最終更新:2009年03月26日 15:00