フラッグ災苦

「殺し合い……か」
白衣を着た男がデイパックを片手に呆然と呟いた。
それもそうだろう。自分がそんな事に巻き込まれるなどと誰が想像できるのか。
平和ボケした日本人というのを抜きにしても、あまりに荒唐無稽だ。
だが男にはそんな荒唐無稽な事件に巻き込まれた理由がはっきりと分かっていた。
「それも書き手ロワ……ね」

書き手ロワ―――
それはパロロワと呼ばれるジャンルのSS書き手達を殺し合わせるという企画。

そう、男も例に漏れず書き手の一人というわけである。
男のトリは◆lYiZg.uHFE。便宜上ここでは屠殺刀と呼ぶのがいいだろう。
オリロワの大黒柱と評された書き手である。

「さて、ではどうするべきか」
屠殺刀は事実を認識すると、先ず自分の方針について考える。
「私は陰惨とした話が好きだ。事実、自分の書く話にもマーダーが活躍する話が多い」
靄場陸朗、狭霧嘉麻屋、ロアルド・アムンゼン(その2)などはその代表格だろう。
それに対主催4人殺しの話なども代表作に挙げられている。
「ならば私もこのロワを絶望に染め上げるべくマーダーとして動くべきだろうか」
だが……と屠殺刀は思う。
「私はそれ以外にも繋ぎ話を書くのも面白いと思っている」
現に、上手い繋ぎ話を書くと紹介された事もある。
「では縁の下の力持ち的に影から動くのがいいだろうか」
しかし……とまたしても屠殺刀は思う。
「一方、パロロワ毒吐きスレでは私は褒め殺しのピンクとして行動している。
 それにオリロワでも面白おかしく全話感想もつけている。
 とすれば、出会う相手全てを褒めまくるという方針にすべきか……いや、それとも」
屠殺刀は真剣に悩む、悩む、悩む。

こういったものは登場話が肝心だ。
下手な登場話を書けば空気キャラになってズガンされる事も多い。
そして上手い登場話であれば活躍はほぼ約束される。
勿論全てが全てそうであるというわけではないが。
「折角出たんだから、ズガンよりはせめてフラグの一つでもなんでも残したいしな……」
屠殺刀が悩みながらそう呟いた瞬間、突如低い声が聞こえ―――

「―――旗・即・折!!!」

屠殺刀の身体が切り裂かれる。
「阿呆が、俺の前でフラグを立てたいと言うとはな」
身体は為す術もなく倒れ伏し、動かぬ視界に旧日本軍の服を着た男の姿が入る。
「あん、たは、K……ッ」
「そうだ、だからどうした」
Kの姿を見て驚く屠殺刀。
そして同時に憎しみに近い感情も生まれてくる。
彼に切られたからという事もそうだが、何よりKの信念が屠殺刀にとっては面白くなかった。
詳しい事は知らないが、フラグを即折るのを信念としていると聞いた事がある。
オリロワ書き手としても他人事とは思えないその信念。
フラグをバッキバキに折られていくのを思い出してしまう。
故に彼のような信念は許せないと心の底から思った。
しかし最早身体は動かず、Kに対して襲い掛かることもできない。
それに、フラグについて呟いた瞬間に即刻折るという彼の信念通りの行動には悔しいが賞賛の言葉しか思い浮かばない。
「流石……だな、噂に名高いその信念と腕前は本物だった……か」
「何のつもりだ」
だから憎いのに、それでも自然とKを褒め称えていた。
身体から流れ出る血など気にも留めずに。
この屠殺刀の行動には流石のKもいぶかしんでいた。
問答無用で斬られて、その行為を褒めるだなどと正気の沙汰とは思えない。
だが屠殺刀は正気で、本気だ。
死を間近にして、屠殺刀はこのロワでの方針を決めたという事だろう。
「なに、例え善であれ悪であれ、自分の信念を貫ける、というのは、凄いことだと思った、だけだ。
 殺し合いの中、どれだけのキャラが、死ぬまで信念を変えずに、いられた。
 大抵、途中で揺らいだり、取りこぼしたり、諦めたり……そんなキャラばっかりじゃないか」
Kは無言で屠殺刀の言葉を聞く。
どうせ直ぐに死にゆくからだろう、止めを刺すつもりはないようだ。
「果たしてあんたはいつまで、自分の信念を、貫けるのかな?」
「無論、死ぬまで……目に見えるフラグは全て折る!
 それが俺の旗・即・折の信念だ!」
屠殺刀はKの言葉に満足すると安らかに笑い―――

「私、もしこの殺し合いから生きて帰れたらオリロワ完結させるんだ」

とはっきりと言葉にした。
その言葉の意味を理解したKは驚き、屠殺刀を睨みつける。
「貴様!」
「クク、ハハハハッ! お前は目に見えるフラグは全て折るって言ったのに、
 こんなすぐ近くにある分かりやすい死亡フラグすら折れないんだ!
 所詮お前の信念はその程度ってことだな、ハハハハハハ―――!」
彼はその言葉を最後に息絶え、その直後に屠殺刀のデイパックからエリクサーが零れ落ちた。
屠殺刀は最後に、呼び名の通りKの信念を殺す事に成功したのだった。

「言った傍からフラグを折り損ねるとはな……阿呆は俺、か」
Kは屠殺刀の亡骸とエリクサーを見下ろし無念そうに呟いた。


【一日目・深夜/福岡県】

【K◆kOZX7S8gY.@ジャンプロワ】
【状態】無念
【装備】勇者スポポロスの剣@オリ
【道具】支給品一式×2、エリクサー@FFDQ、不明0~4
【思考】基本:旗・即・折?
【顔】:るろ剣斉藤

【屠殺刀◆lYiZg.uHFE@オリロワ 死亡】

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屠殺刀
K 愛あるオーバーオーバードライブ!

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最終更新:2009年03月14日 18:04
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