ID:[OL] 

 そこはどこだったのだろうか。どこであろうと構わない。こんな廃れたビルなど、日本を探せばどこにでも建っているものである。
 765プロダクション――それがこのビルの二階を所有している団体の名称であり、今は誰も存在していない。
 いや、一人だけいた。薄暗い衣裳部屋の隅で、なにやらごそごそとダンボール箱を漁っている小尻が見えている。
 辺りには種類様々なステージ衣装やアクセサリーが散乱しており、作業が一段落した後、それらをまとめてバッグに収納する。
 長らく使われていなかった部屋なのだろうか。唯一の入居者であったその『女性』は、自分の服についた埃を手で払う。
 窓を開けて換気をし、咳払いを三回ほどした後、凛としてその場に屹立した。

「腹に据えかねるわね」

 毎日の手入れが面倒でない程度に短く切り揃えた頭髪。口元には、コンサート会場内で客席にアナウンスするためのインカム。
 制服の色は緑、よくある事務員の衣装。ルーズソックスよりもニーソックス派。絶対領域信者とも言う。
 スカートとソックスの間に形成された空間は観衆に「FSS(ふともも スリスリ したい)!」と狂喜乱舞させるほどの魅力。
 これで2x歳(にじゅうちょめちょめさい)程度の年齢を謳えば、妄想癖が強いという本性を隠しても男がついてきそうだが、現実はそう甘くない。
 この時点でティンとくる人もいるかもしれないが、彼女の元ネタとロワとの関連性は薄い。が、出身であるギャルゲロワ2ndにもきっちり登場しているので問題ない。

「アニロワ2nd最終回……あれはあれで、一つのロワの完成形と言えるものに違いないわ。
 ロワの形はロワによって様々、それを一人の最終回書き手が牛耳るなんてエゴも大概よ」

 憤懣やるかたないといった様子で、虚空に話しかけるその女性の名は――パヤロワ断章
 LXと似て非なるLxHの名を持つ彼女は、多元宇宙というものの性質もよく理解していた。
 だからこそ、この書き手ロワという催しの趣旨も理解してはいる。
 バトルロワイアルという様式美に則ることが、必ずしも正解とは言えないことも、当然のごとく理解していた。

「こういうのはガチガチに縛るのではなくノリと勢いこそが大事……ええ、そのとおりだと思うわ」

 断言しよう。これは殺し合いではない。お祭りなのである。
 盛り上げるべきステージと等しく、だからこそ彼女は――自らの欲望に生きる。

 そう、つまりパヤパヤである。

 ロワという極限状態の最中で、女の子と女の子がパヤパヤする(親交を深める)。
 友情と愛情の狭間で揺れ動く、曖昧模糊にして不確かな感情はパヤパヤに他ならない(百合とも同性愛とも違う)。
 愛を語りだすと行きすぎだ。パヤパヤとは、夜な夜な後輩の部屋で鍋をつつく程度がちょうどいい(しずなつは百合)。
 最近はロワ中だというのに女の子八人ほどに風呂に入ってもらったがそれでも満足の粋には至らなかった(これは戯言)。
 これは言葉で説明するものではない、本能で理解するべきもの。パヤパヤでググってもよくわからないと思う(極上生徒会を見るんだ)。
 求められているのはエンターテイメントであって、その種類は殺し合いだけに留まることはない。
 熱血バトルなどは漫画ロワ書き手のほうが領分であろうし、巨大兵器戦ならならスパロワ書き手のほうが得意分野だ。
 ならば鬱グロはどうかと考えてみればそちらはテイルズに一日の長があり、バーリ・トゥードなら新規新鋭のらきロワが侮れない。
 ギャルゲロワ2ndの気風は基本、仲良しこよしだ。それは生き残った対主催陣のスタンスから見ても明らかである。
 ある者はロワを跨いだ恋愛に走るだろう。ある者はロワを跨いだ百合に走るだろう。ある者はロワを跨いだ憎愛に走るだろう。

 ……ギャルゲロワ2nd書き手にとってロワとは、そういうもの。
 エンターテイメントとしてのバトルロワイアルが求められるこの場で、パヤロワ断章としてどう動く……?
 ……やはりエンターテイメント。パヤパヤしかあるまい。

「さしあたっては女の子よ」

 パヤロワ断章は言い切った。女の子が二人いなければパヤパヤは成立しない。自分プラス誰かでもいいのだがそれでは妄想が膨らまない。

「なに? パロロワ書き手なんて野郎ばっかですって? その幻想をぶち壊す!」

 パヤロワ断章はまたも言い切った。書き手ロワのコンセプトに書き手本来の性別を尊重、などという記述は見当たらない。

「なるべくキャラの被らない二人がいいわ! 好みはやよいおりです!」

 パヤロワ断章はお着替え用の服が満載になったバッグを抱え、窓から飛び降りた。ここへは衣装調達のために立ち寄ったのである。

「とぅ!」

 空中で三回転ほど。ヒールであるにも関わらず、ビルの二階から見事に着地してみせた。
 全身の感覚をフルに研ぎ澄ませ、パヤパヤ要員に値する女の子がいそうな方角に突っ走る。
 その道中、なにかを思い出したように立ち止まり、

「そうそう、言い忘れたわ。主催の◆ANI2to4ndEさん、最終回のまいゆたは見事でした。これは称賛です」

 また、虚空に向かって声を放つ。
 返答は無だった。



【1日目 深夜/東京 某アイドルプロダクションビル周辺】

【パヤロワ断章@ギャルゲロワ2nd】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】支給品一式、不明支給品1~3、765プロ所属アイドル候補生用・ステージ衣装セット@THEIDOLM@STER
【思考】
1:パヤパヤ要員(キャラの被らない女の子二人)を見繕ってパヤパヤさせる。
【備考】
※外見は音無小鳥@THEIDOLM@STERです。

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パヤロワ断章 絶対運命交差点

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最終更新:2009年03月21日 11:52
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