宇宙戦艦のとある部屋の中に、霧が出ていた。
極々局地的。4㎡程度の、それはもう不自然な程に狭い範囲のみに、薄っすらと霧が発生していた。
その中で頭を抱えるのは、夏服の学生服に身を包んだ1人の少年。
「いや、おかしいから。この姿だけは絶対ありえないから」
ホラーゲームバトルロワイアルの書き手の1人、◆WYGPiuknm2だ。
彼は先程から困惑を隠せず、ブツブツと呟いていた。
「風間だったらまあ分かるよ。風間の全5話中2話は僕が書いたんだから。
日野とか荒井とかも、なりたくはないけど書いたことは書いたんだし、なっても不思議じゃなかった。
そういうのならまだ抵抗ないのにさ……」
頭をその手で撫で回す。
出来る事なら向き合いたくない現実が確かにそこにはあった。
……プニプニしている、緑色の現実が。
「何で! よりにもよって! ス ン バ ラ リ ア 星 人 になってるんですか!」
スンバラリア星人とは……年に一度、エイプリルフールの日のみにホラゲロワWikiを侵略しに現れるオウムガイのような頭部を持つ地球外生命体の事だ。
本編には一応、かろうじて、ギリギリで一度も出てきてはいないが、ある意味ホラゲロワの象徴と言えない事もない特別なキャラクターである。
今年(2013年)は、日を間違えたのか三年連続は芸がないと考えたのか、とにかく殆ど登場していなかったのだが、よもやこんなところでその姿を確認出来ようとは。
「そりゃホラゲロワに関わってるキャラだけどさ。
エイプリルフールやホラゲ用語編纂室には確かに登場するんだけどさ。
参加者じゃないキャラなんてありなんですか? ねえ? 何か言われるんじゃないの?
しかもスンバラリア星人なんて顔の触手引っ張られたら簡単に死ぬから。これ本当に。
『俺は顔を引っ張られただけで死ぬぞぉぉぉぉ!』ってソードマスター落ちが本気でシャレになってない――」
「あんたホラゲロワの人だろう?」
ビクゥと痙攣したように身を震わせ、スンバラリア星人は振り返る。
いつの間にかそこには一人の男が立っていた。
つい最近ホラゲロワのエイプリルフールで見たばかりの伝説の傭兵……ソリッド・スネークが。
「え!? いやえーっと」
「その格好では違うとは言えないだろう。安心しろ、俺だ。◆TPKO6O3QOMだ」
それは、同じくホラゲロワの書き手のようだった。
しかも◆WYGPiuknm2同様、本編に参加すらしていないキャラクターに変身している。
同ロワの書き手。しかし彼の言葉を鵜呑みにして安心は出来ない。
何故ならば彼はホラゲロワで最も参加者を減らしている男。
特にたったの1話で日野を5回も無残に殺戮した話は正に伝説級だ。
油断すれば何をされるか分かったものじゃない。
「尤もここで割り当てられた名前は『3年目の傭兵』らしいがな」
「あー……僕◆WYGPiuknm2です。名前は……『1、2年目の宇宙人』だそうです」
「1人か?」
「……いえ。もう1人ここに……」
スンバラリア星人はそういって空間を指さした。
そこには誰の姿も無い。
「何処だって?」
「ここです。この霧なんですけど」
「霧?」
スネークが訪ね返した直後、その場には2人とは別の声が響く。
「俺俺。◆cAkzNuGcZQ」
現在のホラゲロワの投下数トップ書き手、◆cAkzNuGcZQの声だった。
「まあ最初からいたんだけど。驚いた? これで3人だな」
「お前……霧なのか?」
「そう。気が付いたら霧になってたよ。とは言ってもまあそんな広範囲に広がれないんだけども」
「3人が3人とも本編参加者じゃないのか。何だ? ホラゲロワはVIP扱いなのか?」
「とてもそうは思えないんですけど……」
スンバラリア星人。
ソリッド・スネーク。
そして霧。
今この宇宙戦艦内部に、3人のホラゲロワ書き手が集う。
「霧だから外見描写がないってのは楽でいいんだけど。名前が『ザ・フォッグ』だったのは少々やっつけすぎじゃなかろうか」
「僕オウムガイ……てか外見が用語集編纂室ネタとかキャラクターですらない霧だとか良いんですかね?」
「主催者は『このパロロワメモリには、君達が参加していた、それぞれのロワの記憶が詰め込まれている』って言っていたからな。
エイプリルフールネタや霧が記憶という事でも間違いとは言い切れないんじゃないか?」
「正直編纂室ネタは色んな意味で怖いんですけどね……」
「まあそんな事より、これからどうする? 殺し合いと言われても今一ピンと来ないんだが」
ホラゲロワは、所謂パロロワから若干ずれてしまっているロワである。
当初はサイレントヒルというクリーチャーの跳梁跋扈する街を舞台としたパロロワ企画だったはずが、
クリーチャーいるからマーダーいらなくね?
クリーチャーいるのに殺し合うわけなくね?
企画が進行していくにつれて徐々にそんな空気が蔓延し始め、
遂にはロワらしさの一切がなくなるという事態に陥ったのだ。
という理由もあるので、この殺し合いの舞台に放り込まれた彼等が微妙に緊張感を持てないのも仕方がない事なのであった。
「とりあえず支給品確認とかやってみる?」
「その手があったか!!!」
「斬新ですね!!!」
そんなロワの書き手が故に、本来のテンプレですら新鮮に映る。ある意味では羨ましい限りだ。
しかし……。
「でも僕支給品ありませんでしたよ」
「あ、俺も」
「お前らもか……。俺もだ」
ホラゲロワでは支給品というものがない。
そんなロワの書き手が故に、彼等には支給品が配られなかったのだ。
少しの間残念そうな沈黙が漂うが、気を取り直して次に進む。
「それじゃあ……能力の確認とか? スンバラリアはどうだった?」
「僕の能力……『侵略が出来ます』だったんですけど、意味が分からないんです」
「うーん。ごめん、俺にも分からない。スネークは?」
「『現地調達が出来る』だった。この体らしいと言えばそうだが。お前は?」
「俺は…………」
霧が何かを考え込むように口を閉ざすと、その薄い色を先の見通せない程に濃い乳白色に変える。
次の瞬間、霧の中から奇妙な唸り声が聞こえ始める。スンバラリア星人とスネークは反射的に霧から距離を取った。
「『相手の精神を反映してクリーチャーを召喚する』だった」
それはロワ本編にも採用されているサイレントヒル2での設定。
サイレントヒル2主人公ジェイムス・サンダーランドの精神を反映して異界化したサイレントヒルの街では、
ジェイムスの様々な苦悩がクリーチャーとして具現化して襲いかかってきた。
その街の力が、『ザ・フォッグ』の能力として割り当てられていたのだ。
霧は再び薄く変化していく。中から現れたのは――――。
園崎魅音@ひぐらし『が』なく頃に@ホラゲ用語編纂室
僕 ら の ト ラ ウ マ !
彼女のAAが見つからなかったのが非常に悔やまれる。
園崎魅音が何故クリーチャーなのか。詳しくは「ひぐらし『が』なく頃に」でググってみれば分かる事だろう。
ただしググるのは自己責任で。そして18歳未満はググらない方が懸命だとここで忠告しておく。
「こんなものわざわざ召喚しなくていいだろう!」
「実演した方が分かりやすいかと思って」
「バブルヘッド魅音とか編纂室ネタから一番出しちゃいけないやつじゃないですかー!」
「アグネスの可能性もあったんだけどね。まあこの魅音僕らのトラウマだったしね。順当といえば順当」
「いいから早く消せ!」
「あ、ごめん。召喚するだけで消せないらしい」
「圭ちゃぁぁぁぁぁぁぁん」
「圭一いないから! つかお前魅音じゃないから! 喋るな! 消えろ!」
必死に叫ぶスンバラリア星人とスネークに向かい、バブルヘッド魅音は満面の笑みで襲いかかってきた。
唐突に、前触れ無く、殺し合いそっちのけで始まったクリーチャーとの戦闘。
これもまたホラゲロワ書き手故の宿命なのだろうか――――。
【1日目・深夜/B-1 宇宙戦艦内部】
【1、2年目の宇宙人(◆WYGPiuknm2)@ホラゲロワ】
【状態】健康
【外見】スンバラリア星人@ホラゲ用語編纂室・エイプリルフールの惨劇
【装備】無し
【持物】無し
【思考】基本:まだ不明
1:お前魅音じゃないから!
※侵略が出来ます(詳細不明)
【3年目の傭兵(◆TPKO6O3QOM)@ホラゲロワ】
【状態】健康
【外見】ソリッド・スネーク@ホラゲ用語編纂室・エイプリルフールの惨劇 たぶん三期目
【装備】無し
【持物】無し
【思考】基本:まだ不明
1:バブルヘッド魅音を倒す。
※現地調達が出来ます(詳細不明)
【ザ・フォッグ(◆cAkzNuGcZQ)@ホラゲロワ】
【状態】健康
【外見】霧@サイレントヒル
【装備】無し
【持物】無し
【思考】基本:まだ不明
1:戦闘を見守る。
※相手の精神を反映してクリーチャーを召喚する
最終更新:2013年04月24日 23:53