圧倒的だった。

空中に放り出されたモンスターボールは、中からポケモンを出すこともなく一瞬の早撃ちで破壊され。

黒板消しも盥もトラバサミも地雷もタンスの角も、その用途を果たすことなく銃弾の嵐によって塵と化し。

亜空間より突如出現する孔明の罠も、奈落の底へ叩き込むはずの落とし穴も、数多の戦いで鍛えられた戦術眼で見切られ、突破され。

愛くるしいアイドルの衣装を身に付けた男の娘はスルーされ、今なら会員費無料!の広告はそもそも何の役にも立っていなかった。

「赤目に獣耳獣尾、北条沙都子の容姿」

『捕える者』として少女が無から作り出したありとあらゆる『罠』は。

「ゴーキュー・ザ・キャラマスターだな」

「パニッシャーにラディカルグッドスピード脚部限定、リヴィオ・ザ・ダブルファングの御姿」

『化する者』として常に予想の先へ『進化』を遂げる男によって、ひとつ残らず無と帰していた。

「ウォット・ザ・エクスピード様で、相違ありませんね」

二人のマルチジャンルロワ書き手の出会いは、互いに全力を尽くした闘争に始まり。
同じ釜を食らった仲間同士の殺し合いは、勝者と敗者の会話劇にて終わりを告げていた。

「俺、皆殺し路線で決めたわ」

傷一つ負うことなく勝利を収めた男、ウォットは世間話をするかのように敗北者たる少女に己が指針を語る。

「どうしてか、教えてくださっても?」

右足は炭化し左足は砕け両手は火傷と銃痕でボロボロになっている敗者、ゴーキューは勝者たる男に故を問う。

「対主催って首輪解除やら主催の目的考察やら時間かかるじゃねえか。
それにあいつは殺すなこいつは助けろフラグはすべて回収しろってうるせえし」

そんなわがままな理由で殺し合いに乗る、と返された答えに対して
男よりもずっと小さな少女の姿をした書き手は、困った子供を見るような瞳で苦笑を漏らした。

「最速熱血を愛する貴方らしいですわ」

「おうよ。俺はやっぱり後腐れねえバトルが、一番筆が進む」

手加減はしない。出し惜しみもしない。ただ、胸に灯った炎を筆に乗せ燃やし尽くすのみ。
自分の生き方を貫いている男は、あたかもスポーツに勝利した子供のように破顔する。

だから、とウォットは言葉を続け。



「バトルの結果として、悔いなく遠慮なく躊躇なく、ここで俺に殺されろ」



男は、ギラギラとした生気を漲らせ、笑い。



「ええ、喜んで」



少女も、何もかもを奉げんとする破滅的な顔をして、笑う。



「最期に、お聞きしてもよろしいですか?」

「言ってみろ」

今にも殺されそうな状況だと知ってなお、はっきりとした声でゴーキューは問う。
死ぬのは怖くない。むしろ、彼の手にかかって死ねるなど自分が考える中で最も理想的な死に様だ。
ただ、こうして出会ったからには、死に別れる前に一人の書き手として聞いておきたいこともある。

「あの日、私が用意したウルフウッドとリヴィオ、そしてラズロという食材は、貴方の食指を動かせる料理へと昇華出来ていたでしょうか」

「ああ……アレはなかなか、喰い出があった」

当時のことを思い出したのか、ウォットは獲物を咀嚼せんとする肉食獣の如き舌なめずりを一つ鳴らす。

ウォットがリヴィオ&ラズロを得意とすると言われるきっかけの一つにもなったSS。
「あの忘れえぬ日々に」
登場人物は復讐に滾ったリヴィオとラズロ、そんな彼らを生かし/殺し、止めようとするウルフウッド。
筋書きは、三匹の『獣』たちが織り成す熱い戦いの物語。
それでいて、原作を知っていればこそ彼らのやり取りに一抹のやりきれなさを孕む名作だ。
また、そのクオリティにも関わらず、前話投下から一週間以内という短い期間で予約を入れて書き上げたという、彼の筆の速さを表している作品でもある。

そのパスを寄越したのが目の前のガキだったということを思い出したウォットは。
普通の人間なら「ヤバい」「恐い」「気が狂っとる」などと感じるラズロの凶貌をゴーキューの眼前にぐいっと近づけ。

「褒めてやる」

古傷だらけの固い掌で、ぐわしぐわしと彼女の頭を荒っぽく撫でた。

北条沙都子の姿をした書き手に、男が今出来る最大の賛辞。
「なでなで」を一身に受けた、ゴーキュー・ザ・キャラマスターは。
読み手の心を「捕える者」であると同時に、ウォットの作品の魅力に「捕わる者」でもある書き手は。

「あぁん……っ」

盲目に恋する少女のごとく熱い吐息を漏らし、臀部から生えた尾を子犬のように振るい。
頂に達した女さながらに身体を震わせ、吸血鬼を連想させる赤い瞳を潤ませて。

「恐悦至極に、存じますわ」

蕩けた笑みを、浮かべたのだった。



◇ ◇ ◇



「んじゃ、俺はもう行くぜ」

「最速で、この書き手ロワを終わらせて来て下さいませ」

「たりめェよ、言われるまでもねえ」

「地図は確認しましたか?」

「テキトーに駆ければ誰にだって会えるさ」

「私の分も合わせて、支給品は全て確認しましたか?」

「めんどい。運が良けりゃその場その場でいいモン引けるだろ」

「不意打ち、狙撃、謀殺には気を付けるんですよ?危なかったらちゃんと撤退も視野に入れて……」

「テメエは俺の母ちゃんかよ!」



「……それじゃ、本当にお別れですね」

「地獄の底で俺の○ロワ最終回を待ってな」

「はい、ずっと。でも、私のこと忘れないでくださいね」

「何言ってんだ?とっくの昔に『刻んでる』っつーの」

「……ありがとう、ございます」


ウォット・ザ・エクスピードは流れるような動きで『ヴァッシュ・ザ・スタンピードの銃』を構える。


「一つ、言い忘れていました。○ロワ復活、おめでとうございます」


狙いはこめかみ。死を免れぬ、絶対の急所。


「小さな希望と果てなき絶望が同居する殺し合いの舞台に、おかえりなさいませ」


そのまま、平和を愛する男が不殺(ころさず)を誓って引き続けていた引き金を。


「そして、今宵も熱き闘争へ―――――――――いってらっしゃいませ、我らがエース」


まずは『一人目』を脱落させるがために、これからやって来る熱い戦いを望むがままに、引いた。



【ゴーキュー・ザ・キャラマスター@○ロワ 死亡】



「ただいま。
―――――――――いってくる」



【一日目・深夜/D-4】
【ウォット・ザ・エクスピード @○ロワ】
【状態】無傷
【装備】パニッシャー@○ロワ ヴァッシュ・ザ・スタンピードの銃@○ロワ
【持物】基本支給品×2不明支給品0~4
【思考】
  基本:最速で皆殺し。熱いバトルが出来ればなお良し。
  1:どっかに骨の有るやつぁいねえかね。

※見た目はラディカルグッドスピード脚部限定を装備したリヴィオ・ザ・ダブルファング/ラズロ・ザ・トリップ・オブ・デスです。


002:鉄の悪魔を叩いて砕け 時系列順に読む 004:遊園地でとあるテニスプレイヤーととある銀河皇帝は観覧車の外をチラ見しながら思った。 『頂きに立つものただ一人である』と。しかし、そうなると上下関係をはっきりさせないとな。 この近くにテニスコートがあったし、試合用のテニスラケットもあった…………テニスの時間だああああああああwwwwww
002:鉄の悪魔を叩いて砕け 投下順に読む 004:遊園地でとあるテニスプレイヤーととある銀河皇帝は観覧車の外をチラ見しながら思った。 『頂きに立つものただ一人である』と。しかし、そうなると上下関係をはっきりさせないとな。 この近くにテニスコートがあったし、試合用のテニスラケットもあった…………テニスの時間だああああああああwwwwww
ウォット・ザ・エクスピード 097:命の価値なんてそんなもん
010:諸君、私は○ロワと漫画ロワが大好きだ ゴーキュー・ザ・キャラマスター 死亡

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2013年12月11日 11:37