「書き手ロワ4thか……」
仮面ツナイダー1号の名を持つ男は、ハットに手をかけながら呟いた。
彼は変身ロワイアルで「繋ぎ」となる作品を書いた書き手である。
序盤から分割話のドカ盛ばかりで、最悪の場合、四分割で五人死ぬSSや、単品で分割話が出るほど、読むのがしんどい変身ロワにおいては、繋ぎは確実に必要な要素である。
他の主要書き手がいずれも四分割を書いたのに対し、彼はそれをしようとはしなかった。
彼の最大は二分割。
すなわち、他の書き手の半分────ハーフ・ボイルドと呼ぶのは失礼だが、彼が最も登場話を書いた「左翔太郎」にちなんでそう呼ぶのが相応しいだろうか。
「……ここでも俺は繋ぎくらいが丁度よさそうだな。分割話には出ずに、繋ぎだけを担当する────」
この初登場SSにおいても、あくまで一人。
そう、他の書き手との合流さえ描かれることなく、あくまで一人。
とりあえず話を進ませるのだ。
「とりあえず、変身アイテムは支給されてるみたいだな」
彼の手にはダブルドライバーが握られている。
「変身」がコンセプトのロワなのだから、やはり変身ができないとまずい。
いまどき、多ジャンルロワもオーズロワも仮面ライダーが参戦していて、その変身者がいるのだ。
それらのロワの書き手には変身道具が支給される確率も高い。だが、変身ロワである自分の手に変身道具が無ければ、変身ロワ書き手の名が廃る。
……ただ。
ダブルドライバーで一人で変身できるんだろうか?
ダブルドライバーは本来、フィリップとともに使用する道具。……変身ロワでは、フィリップは主催者が監禁している状態での変身という特殊ルールが設けられていたが、このロワもそうなのだろうか?
もしいるとするなら、もう一人の繋ぎである仮面ツナイダー2号ことF3/75Tw8mw氏あたりか。
だが────
(そういえば、俺も最初にSSを書いたとき──)
彼が書いた翔太郎の初登場話では、変身することでフィリップの現状を確認するという作業をしていないのである。
それに倣うならば、今ここで変身するのは避けるべきだ。
あくまで、自分の繋ぎ方は、すべてを書かない繋ぎだ。あまり迂闊に情報を開示しすぎて後続の書き手が書ける領域を狭めてはならない。ささやかに生きていくのが丁度いいのだ。
だから、今現在はあえてこのベルトを使わない。
「まあいいか……俺はあくまで繋ぎ書き手。あまり前に出すぎずに、ロワを支える……それが俺の書き手としての在り方だ。今はまだ、これに関するルールを詳しく明かしてしまう段階じゃない」
彼が、そう呟きながら、歩き出したその時────
『あたしは…対主催として行動しようと思ってます!』
近くから、デカい声が聞こえた。
女の子の声だ。
馬鹿だろうか。
(対主催、だって……?)
ツナイダー1号は自分の耳を疑う。
対主催が拡声器を使って呼びかけたら、どうなるのかなんて書き手の間では周知の事実ではないか。
拡声器は死亡フラグ。これは原作の時点で知られる拡声器のジンクスだ。
何故、ロワに精通する書き手がいきなりそんなことをするのだろう?
ツナギはその少女の言葉に疑念を感じながらも、もう一つの可能性を考えた。
「……もしや、変身ロワの書き手か?」
説明しよう。
変身ロワイアルで拡声器を使ったキャラは二名いた。
そのいずれも、拡声器に寄って集まった参加者をブチのめすという行動に出ているのだ。
つまり、変身ロワにおいては、拡声器とは死亡フラグなどではなく、俺TUEEEEEEEフラグなのだ。
原作や他のロワではテッカマセランスと呼ばれたモロトフですら、変身ロワでは拡声器のお蔭で大活躍の女子中学生キラーだった。
つまり、他ロワの書き手ならば絶対に避ける支給品である拡声器も、変身ロワの書き手ならば、この状況下で拡声器を使う可能性が高い。
変身ロワにおいては、マーダーばっかり使ってたが、彼女の場合は対主催だと宣言している。その言葉を信じるか信じないかはともかく、一応、原作の設定では左翔太郎は女性に弱いハーフボイルド。この状況下で行かないわけがない。
(となると、行動は決まったな……とりあえず、分割話に出ないようにプリンセスのもとに向かうか)
────仮面ライダーツナギは、この時、自分の外見設定に捕らわれたせいで忘れていた。
彼が唯一書いた死亡話では、知り合いを信用して共闘した後、その知り合いに殺されるSSだったということを……。
【一日目・深夜/E-5 街】
【仮面ツナイダー1号(◆OmtW54r7Tc)@変身ロワイアル】
【状態】健康
【装備】ダブルドライバー+ジョーカーメモリ@変身ロワ
【持物】基本支給品、不明支給品0~2
【思考】
基本:あまり前に出すぎず、繋ぎを担当する
0:放送の声のほうに向かう
1:繋ぎを担当する
2:ダブルドライバーについては後続の書き手にお任せする
※外見設定は左翔太郎です。
※ダブルドライバーのソウルサイドにあたるキャラは不明。そもそも、そんな人物がいるのか不明。
最終更新:2013年05月11日 06:15