モバマスロワ書き手の一人、最高の友達Pこと◆j1Wv59wPk2氏は民家の部屋の隅っこで震えていた。

(怖い。怖い。怖い怖い怖い怖い怖い怖い――)

その音が殺人者を招き寄せるのではないか、そんな妄想に取り付かれて歯をかみ締める。
だが体の奥から来る震えはどうやっても止まらなかった。

何でこんなことになってしまったのだろう。
ついさっきまで楽しくロワを書き続けていただけなのに
こんな殺し合いにつれてこられて殺し合えだなんて――。ああ、何て不条理だろうか。
しかも体内に良くわからない爆弾めいたものを埋め込まれるというおまけ付だ。

(は、はは……私の書いたキャラクターたちもこんな気持ちだったのかな……)

窓ガラスに映った姿。
その姿は見慣れた自分ではない。
自分の知るソーシャルゲームのキャラクター、北条加蓮の姿をしている。

コレが殺し合いという場所でなければこの状況を楽しんでいたかもしれない。
だがここは殺し合いの場所で、日常に帰れるという保証もないのだ。
パロロワとはそういうものだ――それは書き手である自分が何よりも知っている。

だが恐怖に飲み込まれる中で書き手として別の思考が生まれてくる。
つまり自分はどういうスタンスでこれから活動するのか、ということだ。
対主催なのか、マーダーなのか、それとも第三の道をとるのか。

色々選択肢はあるだろうが、最後には心に従う以外に道はない。
そして友達Pの思考は、結局のところ一つの結論に行き着くのだ。

(こんな所で終わりたくない……私にはもっと書きたい物があるんだ……!)

そう、まだ書きたい展開がある。読みたい話がある。
何より終わりまで見届けたい……自分の繋いだものが次々と別の光景になるというあの行き着く先が見たい。
他のものでは味わえない興奮。
作っている自分たちですら予想の付かない最後を見たい、そして自分もそれに関わりたいという願いが彼女の心を決めた。

「やるしか……ないのかな……
 ううん、違う……やって見せるんだ……やるしか、ないんだ!」

そう言って彼女が手にしたのは支給品の軍用トマホーク。
これもまた自分に縁のある得物だ。
状況も支給品も――言うなれば運命が、自分の背中を押している。だからきっと大丈夫。
そう自分に言い聞かせながら、トマホークを握り締める。
そのときだった。

(足音……!?)

ほとんど音のないこの世界ではかすかな物音でさえも大きく響く。
その中で隠す気のない大きな足音が壁の向こうから聞こえてくる。

細心の注意を払い忍び足で民家を後にする。
そして音のほうを追って裏路地に足を進める。

そして、来た。
路地の向こう側――T字路の角の向こうから足音が聞こえてくる。

早鐘を打つ心臓の音。
震えはまだ止まらない。だけど心は決まっていた。

(や、やってみせる……!)

顔は見ない。見てしまえばきっと決意が鈍るから。
響く足音と電灯に照らされた影で距離を測り、物陰から大上段から斧を振り下ろす。

「う、うわああああああああ!!」

絶叫と共に大上段から振り下ろされるトマホーク。
直撃すれば頭蓋骨を砕き、無残な死体が一つ出来上がっていただろう。

だがその光景が現実になることはなかった。
一体何が起こったのか、攻撃は空を切り、アスファルトに突き刺さったのだ。

「!?」

かわしようのないタイミングだったはずだ。
けど呆然としている暇はない。
急いで斧を引き抜き、反撃を受ける前に第二撃を加えようとして、

「――え」

――彼女は全ての思考を放棄した。

そこに、"人"はいなかった。
頭があるべき場所には何もなく、その一つ上の箇所に頭がある。
自分を"見下ろしている"のは、2mほどの体躯を持った巨大な毛の生えたトカゲ。
そこまで詳しい知識"は持っていないが、それでもそれがどんな存在であるかは知っている。
遥か一億年前に絶滅した――恐竜と呼ばれている存在だ。

「はじめましてお嬢さん。
 私は古生物ロワの書き手"賢者竜トロオドン"こと"◆JUJ3JcJgbI"だ。
 君は何という名前の書き手だ?」

恐竜の大きく裂けた口からは流暢な言葉が飛び出している。
その非現実的な光景に最高の友達Pの思考はオーバーフローしてしまっていた。

「あ、あ――」

表情が伺えない爬虫類の顔。
自分よりもはるかに巨大な体躯。
そして口を開くたびに見え隠れする鋭い歯列。

目の前にいる人と異なる存在に対して、ただ圧倒的な恐怖しか湧き上がってこなかった。
全身は再度震えに飲み込まれ、トマホークは手から落ち、友達Pはその場所にへたり込んだ。
そして自分はあの鋭い牙の餌食になるのだ、とどこか諦観めいた気持ちになった。
だがそんな友達Pの様子を見たトロオドンは表情一つ変えず(変えることが出来るのかは不明だが)言葉を発する。

「今の私の姿が人に恐怖を喚起させる、というのは十分理解しているので慌てなくても結構だ。
 いわゆるロワにおける"オープニング"であんなことがあった後であるし、な」

そう言って、ただ友達Pの言葉を待っている。
その紳士的な態度に釣られ、友達Pはゆっくりと口を開いた。

「え、あ……最高の友達P……◆j1Wv59wPk2といいます」
「ああ、名前から察するにモバマスロワの方だな。
 同じトキワ荘出身の方と出会えるとは私は運がいい」

相手も同じ書き手である――そう理解し始めた頭がゆっくりとながら再度回転し始める。
古生物ロワ、そしてオープニング……

「こ、古生物ロワって……あ、あの!」
「ああ、謎の主催者に協力していたのは自ロワの>>1さんだ」

こともなげにそう伝える。

「まぁ、あの人のことだから何らかの考えがあると思うのだがね……
 それを探すのがまずはしなければならないことだと思っている」
「……信頼しているんですね。何の理由もなくこんなことをしないって」
「? 当然だろう。少なくともいわゆる"俺ロワ"と呼ばれる場所において、>>1を信用せずに書く書き手などいるのか?」

そう言ってその長い首を器用にかしげた。
その言葉に友達Pの肩の力は抜けた。
そう、自分だって自ロワの>>1のことを信じている。
姿は違うがそのことに付いた私たちは同類だと、そう感じてしまったのだ。

「さて、では行くとしようか。移動の準備をしたまえ」
「え?」
「何もおかしいことはないだろう?
 群れを作るのは生物として生き抜くために有効な方法のひとつだ」
「で、でも私はあなたを――」
「何、気にすることなどない」

『殺しかけたのに』という言葉を遮って、トロオドンは口を開く。

「縄張りに踏み込んだものを警戒するのは至極当然のこと。
 そして運よく私は怪我もなかった。ならばどうでもいいことだ。
 それよりも先にとりあえず移動するとしよう」
「は、はい――痛っ!」

立ち上がろうとした友達P。
だが足首を押さえて再びうずくまる。
先程攻撃を加えたとき、足をひねってしまったらしい。

「ふむ」

それを見たトロオドンは首を落とし、足を屈める。
これが意味するのはつまるところ『背中に乗れ』というのは明白だった。

「え……?」
「乗るといい。この体格ならば軽い女性一人運べないことはない」
「いや、でもこれ以上ご迷惑をおかけするわけには……」
「群れとは相互扶助を行う集団のことだ。そこに迷惑という概念は存在しない。
 君がもし迷惑をかけたと考えるならいつか返してくれれば良い。
 今はそれが私の番なだけだ」

こともなげに言ってのける。
恐らく心遣いとかそういうものでなく、心の底からそう考えているのだろう。
その言葉に甘えるようにして友達Pはトロオドンの背中にたどり着き、
何とかその背中にまたがることに成功した。

「さて、では出発するとしようか。
 ――ん、どうしたかね?」
「く、くふふっ……その、羽毛がお尻に当たってくすぐったいんですけど……」
「……それは仕方ないことだ。まぁ、我慢してくれたまえ」

【一日目・深夜/F-3】

【賢者竜トロオドン(◆JUJ3JcJgbI)@古生物ロワ】
【状態】健康
【装備】特になし
【持物】基本支給品、不明支給品1~3
【思考】
基本:主催者側の思惑を調べる
1:◆sOMmvl0ujoの思惑を調べる。
※外見はトロオドンです。

【最高の友達P(◆j1Wv59wPk2)@モバマスロワ】
【状態】足を少しひねっている
【装備】トマホーク
【持物】基本支給品、不明支給品0~2
【思考】
基本:どりあえず◆JUJ3JcJgbIについていく
※ 外見は北条加蓮@アイドルマスターシンデレラガールズです。

014:参戦 ◆時系列順に読む 016:彼女たちの叶わなかったエクストラワン
014:参戦 ◆投下順に読む 016:彼女たちの叶わなかったエクストラワン
賢者竜トロオドン 063:G-2遊園地 書き手式庭球決戦!!
最高の友達P 063:G-2遊園地 書き手式庭球決戦!!

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最終更新:2013年04月26日 19:40