42 :2-683:2015/02/10(火) 21:38:23 ID:f0bhMS82
香取は衝撃的だった 見た目と言動が
だからキャラ掴みやすいんだろうけど、書くの早いよ……
こちらは非エロだけど投下させてくれ
43 :2-683 比叡:2015/02/10(火) 21:39:10 ID:f0bhMS82
「……ぁ、ひ、ひえー!! 射撃できないと思ったら、間違えてチョコ装填してました! 司令、あげます!」
自分は反応の仕方に悩んだ。
演習を行ったところ、旗艦であり秘書である戦艦比叡が、一度も発砲できなかったのだ。
自分の目で見た訳ではないから、そもそも発砲しようとしなかったのでは、と疑った。
そこで帰投する艦隊の比叡を問い質すべく岸壁で迎撃態勢でいたのだが、
艦隊解散命令してここにいるのが自分らだけになったその時。
比叡は主砲装填口から茶色の徹甲弾を取り出して私に差し出したのだ。
こら、そっぽ向いてないで此方の顔を見なさい。
そして比叡が放った科白が冒頭のそれである。
だから自分は悩んだ。
それを取り上げて叱咤すべきか、謝礼を通達すべきか。
昼食はあ号定食にすべきか、い号定食にすべきか、と言う程度の選択である。
要するに、下らない選択だ。
「あの、そう冷めた目で見られるのはつらいです」
「自業自得だ馬鹿者」
自分は下らない事で悩む為に静止しているうち、比叡は恐る恐る此方を伺った。
自分は比叡の言葉で我に返り、取り上げる選択を取った。
やはりと言うかまさかと言うか、これは茶系統に着色した徹甲弾ではなく本物のチョコレートのようだった。
「演習と言えどふざけるんじゃない。実戦なら死んでいるぞ」
「ふざけたんじゃないんですよ! 本当に間違えたんです!」
「尚更いかん!」
全く。
朝からどの艦もバレンタインだのチョコだの騒ぐし、秘書はこのような成りだし、
この鎮守府の規律は一体全体どうなっているのだ。
指揮する提督の顔が見てみたい。
「顔ですか。冗談の通じない仏頂面です」
ゴッ!!
「ったあ!」
「それ以上言うと叩くぞ」
「叩いてから言わないで下さいよぉ……」
手刀を叩き込んでやった。
元々こういう顔だし、時と場合を弁えない冗談等冗談にならない。
全く、全く、全く……。
44 :2-683 比叡:2015/02/10(火) 21:40:48 ID:f0bhMS82
「で、姉妹にはやったのか?」
「え?」
頭を擦る比叡は、私の問いに惚けた。
此奴の艦橋は的外れと言うか阿呆な電報を打つ設計のようだが、もしや受信する事さえ困難になってしまったか。
自分の中ではずっと前から"残念"と言う一言に印象が集約していたが、それは今や"無念"に変わってしまった。
比叡よ。御召艦を務めた貫禄は風化しているが、ごく一部の人は、これから先も覚えてくれる筈さ。
私は自信がない。
「なんで憐れむような目を向けられているか分かりませんけど、怒ってないんですか?」
「む、まだ説教され足りないのか」
「いえもう充分です! 姉妹で交換しましたよ。特に、お姉さまには気合もばっちり込めました!」
そうかそうか。
その場に居合わせていないから姉妹の反応が果たして喜びのものだったかは分かりかねるが、殊勝な事だ。
あげるだけでなく貰うこともできたとは嬉しかったろう。
姉妹の仲が円満なようで微笑ましい。
個性的な艦が多種多様にあるが、此奴らは皆を照らす太陽のような輝きがある。
此奴の個性を表すように弾を模ったこのチョコを姉妹に渡す場面は、此奴の笑顔と共に眩しくも想像できる。
只最低限、アルミ箔で包む等はしたほうが良いと思うのだがな。
普通は包装にも入念に気を遣う筈なのだが、どこかずれた設計である此奴にそれを求めるのは諦めた方が良さそうだ。
「よかったじゃないか。で、私へのこれには気合は入っているのかな」
「あ、はい。それなりに」
反応の仕方に悩む事なく即座に苦笑を返した。
姉への贈り物について語った先とは随分な温度差だが、これも何時もの事なので今更である。
それでも、少し、ほんの少し妬ける。ここまで慕われている此奴の姉がだ。
だから少しの悪戯心ができた。
「ふうん。気合が入りすぎて徹甲弾と間違えたか、それなり程度の気合だから間違えたか、どちらだ?」
「そ、その話はもうやめてくださいよ……」
気まずそうな顔に一変した。
此奴はこう弄くると面白い電報を打ってくれるのだ。
だからやめろと言われてもまだやめない。
「演習を疎かにしてまで砲に仕込んでおく辺り、実は入念に気合を入れたのだろう?
お前は不器用に愛を告白するヒロインか」
「っ! ぁ、愛って……」
45 :2-683 比叡:2015/02/10(火) 21:41:19 ID:f0bhMS82
比叡は熱暴走を起こしたように顔を朱色に染めてそう呟いた。
なんだなんだ。本当にヒロインのようだ。比叡にしては上手く演じているな。
居眠りを隠蔽する普段の垢抜けなさを海に投棄してきたか。
な訳がない。これも隠すことすらできていない、しようともしていない本性だろう。
少しからかわれた程度でこう恥じるところこそ垢抜けない。
比叡は顔を染めながらもずいと顔を近付け訴えかけてきた。
近い。私は肩より上を後方に引く。
「それは義理ですよ! 司令には一応お世話になってますから、一応! 変な勘違いはやめてくださいよ!?」
勘違いも何もしていないから安心しろ。
只二度言う程大事か。その"一応"と言う添加物は。
逆に言えば貰えるだけ蔑ろにはされていない見方もできるので、素直に感謝しておこう。
ここで謝礼を述べずそれが仇となって蔑ろにされては目も当てられない。
「ありがとう。気持ちだけ受け取っておく」
「はい! ……はい? 今なんと」
しまった! 余計な一言まで……。
「司令、今"気持ちだけ"って言った? "気持ちだけ"って! 私が作ったチョコが食べられないんですか!?」
何故上から目線なんだ。
今時そんな常套句を使う人間は軍令部でも見た事はない。
比叡よ。お前が御召艦を務めた経歴があろうがな、他人に物を贈る時でも偉そうにするものではないぞ。
英国ではそういうものなのかもしれないが、そもそもここは日本だ。
「そんなことはどうでもいいんですよ! せっかく気合入れたのに! 特別な材料も入れたのに!」
その"特別な材料"と言うのが心配なんだ!
気合を入れるのはいいが道外れた物体まで入れていないかどうか!
見ろ。先程比叡から取り上げたままずっと手に持っているのに全く溶けていないじゃないか。普通のチョコレートか?
他に入れた材料が"愛情"とかであれば文句どころか謝礼を積み重ねるのだが、
此奴の艦橋の辞書に"愛情"という語句が書かれている等想像できないのでその可能性は視野に入らん!
然し此奴の言い分を信じるとして気合は込めて作ってくれた事に対してそのようにボロクソ言う等自分にはできない。
並に良心は備わっているからだ。
46 :2-683 比叡:2015/02/10(火) 21:41:53 ID:f0bhMS82
「い、今は昼時前だからな? 今食べたら昼食が入らないから、その後でな……」
「本当ですか? 本当ですよ!? せっかくあ……っ!」
比叡は突然口を両手で噤んだ。
どうした。"せっかく"何を入れた。
「なんでもないです! 司令、早くお昼食べましょう!」
強引に手を引っ張るな。
そんな慌てなくてもこのチョコは恐らく原型を保ち続ける。
そのチョコは姉の主砲にこっそり潜ませておく事も考えたが、
引っ付いてくる比叡と良心を前に挫折した。
覚悟して口にした徹甲弾チョコだが、造形に反して攻撃的な味と言う事はなかった。
只、甘すぎるようだ。
比叡の私への愛情が込められすぎている、と言う事にしておこう。
秘書艦の奇行も程々に、デザート付の食事を終え自分らは執務に戻った。
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後書き |
47 :2-683:2015/02/10(火) 21:42:24 ID:f0bhMS82
以上である!
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最終更新:2015年06月18日 09:38