非エロ:提督×大鯨「に・ね・ん・め 幼妻大鯨ちゃん」17-74

『不束者ですが、よろしくお願いします』

「明日で一年……か…」
「提督ー、今日は何の日ー?」
「今日か……ああ、そうだ、そろそろだな」

俺は一年前の事を思い出しながらも子日に急かされながら
これから行われる如月の誕生日のパーティーへと向かった。


「如月ちゃん、14歳のお誕生日おめでとうございます」
「大鯨ちゃんったら…ありがとう…」
「ひっどーい!私たちも忘れないでよ!」
「みんな…ありがとう…好きよ……」

如月が照れながらも俺達みんなに感謝した。

「そういえば睦月型駆逐艦二番艦如月の進水日は90年前の今日だったな」
「あと10年で百周年なのです」
「10年後の私は24歳。大鯨ちゃんが結婚した年齢になるわね。私は結婚できるかしら……」
「如月ちゃんほどの子だったら引く手数多だよ!」
「ううん、そうじゃないの。結婚する前に戦いで沈んじゃうんじゃないかって思ってね」
「あ……」

間違った発言をしたと思ったのか睦月の顔が暗くなる。すかさず

「大丈夫…司令官を信じて…」
「そうだ。それに私たちもいる……」
「そ、そう、私たちで助け合うのです!」
「ふふっ、ありがとう」

他の睦月型達のフォローが入った。
彼女達には不思議な絆がある。それは彼女達がそれぞれ艦の力を宿していて
(もしくは前世がその艦だった可能性もあるが
そこはわからないので今はあまり考えないでおく)
彼女達の絆はそこから来るものが大きいだろう。
しかし、戦いの中で彼女達に宿る艦の関係だけではなく、
彼女達自身の間でも絆を深めていたのだった。

「ところでこのケーキ、ロウソクの並びが独特ですわね」
「蠍座の形にしました。如月ちゃんは14歳ですから蝋燭は14本。
 そしてアンタレスの位置にあたる部分に苺を置きました。
 確か如月ちゃんは月の星座が蠍座でしたし」
「もう…司令官じゃあるまいし……」
「今までずっと提督と一緒にいましたから影響されちゃったんでしょうね」
「俺が色々と影響を与えたってねえ……
 いいことばかりじゃなくて悪い事もたくさんありそうだな」
「だったら悪いことはいいことにしてしまえばいいのデース。
 Positive Thinkingのココロネー」

金剛は相変わらず明るい。彼女の前向きさには俺だけじゃなく他の子達も救われているだろう。

「ところで提督、さっき明日で一年って言っていたけど明日は何の日ー?」
「UFOがあっち行ってこっち行って落っこちた日だったわね」
「かわいいコックさんの日よ」

ビスマルクとローマが割り込みながら自信満々に答える。
間違っちゃあいないが少々マニアックだ。
二人とも元々サブカルチャーの方面には興味があったみたいだが
日本へ来てからますますその思いが強くなったらしい。
いいことか悪いことかはわからないか、
ビスマルクとローマが旧世紀の戦いからくる因縁、
特にドイツによって沈められた艦の艦娘のローマのドイツ艦娘への無意識での苦手意識は
ビスマルクと隠れた趣味が共通したからか蟠りがなくなっていたようだ。

「明日は司令官と大鯨ちゃんが出会って一年ですわ」
「やっぱりかわいいコックさんの日だったわね」
「リューホー(になれる艦娘)がアトミラールの所に落っこちてきたからね」

彼女達もある意味前向きといえば前向きである。

「でも、出会ってから半年も経たずに結婚って早かったですよね」
「組織が再編されてから提督の所に来た鳥海は知らないかもしれないけど、
 提督は出会ってすぐに恋に落っこちたんだよ」
「でもでも、司令官さんはともかくとしても、
 大鯨さんもすぐに司令官さんを好きになっちゃったんでしょう」
「提督みたいに出会ってすぐに、ってわけじゃありませんでしたけど、
 提督と一緒に暮らしているうちに…」
「ねえ……如月のこと…忘れないでね……」
「あ…ごめんなさい…」

しまった。今日の主役の如月をほったらかしにして話に華を咲かせてしまった。

「まああの時の大鯨ちゃんは穢れを知らない天使だったからね。
 話に華が咲いても仕方ありませんわ」
「もう!」
「ああわかったわかった、その話はまた今度にするから」
「そうですわ…あんまり長話していたら野球観戦の時間になっちゃいますわ」
「そうですね。確か今日は来場者全員にレプリカユニフォームが配られる試合でしたね」
「ああ……誘っておいてあれだけど、なんだかそれ目当てに野球観戦するみたいで…」
「気にしないでいいですわ。鳥海さんの誕生日の時もそうでしたけど、
 誕生日の日にたまたまそういうイベントがあったって考えるべきですわ」
「そうそう、Leisureも大事デース」
「どうせ見に行くなら何か特別なことがある日の方がお得ですしね。
 お買い物だって同じ物を買うのなら安いほうがいいですし」
「大鯨ちゃん……なんか……」

如月は途中で言葉を濁したが、主婦じみている、って言いたそうな眼だった。

「ま、話はこれくらいにしてお料理食べましょ。
 私のために作ったお料理が冷めちゃったらいけないしね」

如月の言葉と共にみんな料理を食べ始めたのだった。


6月6日、午前0時30分過ぎ…………

「魚座……何回も死んでいたとはいえあれで死亡だなんて……」
「でもとっておきの姿は見せてないじゃないですか。だからまだ活躍の機会はあるはずです。
 それと比べて蠍座はとっておきの姿を見せちゃったからもう活躍が望めません……」
「まあ必殺技の性質的に活躍させにくいからなあ。原作からそうだったしな」
「そうですね……それにしてもあなた…元気ですね……」
「いやあ、先が気になってめっちゃ楽しみで仕方ないよ」

みんなで見ていたアニメの感想を言い合っていた。
星座とギリシア神話を中心に様々な神話もモチーフになっているアニメだ。
こう聞くと一見女の子向けそうだが男の子向けの作品だ。
まあ一部の女の人向けの感じはしなくもないが……ちなみに秋雲も普通に好きらしい。

「でもふと思うけどこうしてのんきにアニメなんて見ていていいのかなって思うときがあるわ。
 深夜にアニメばかり見ている私が言っても説得力はないけど……」
「個人としての気持ちと艦娘としての気持ちがせめぎ合っているみたいですね」
「大鯨さんは戦闘艦じゃないからそういう気持ちにはなりにくいでしょうけど……
 私なんかは結構そんな気持ちになるのよ。
 提督は立場的な理由で似たような気持ちになるでしょうけど…」
「まあそうだが、そういう時は『今は業務外だから気にする必要はない』って思うことにしているさ。
 それに緊急の時に備えて準備はしてあるからな。
 …しかしさ、今この世界は深海棲艦の脅威にさらされているわけだけど、
 それでもまだ平和といえば平和って言えるよな。
 平和だからこそこうして呑気にアニメが流れていて、それを俺達も見られるからさ」
「確かにそうね。少なくとも私達が住んでいる所には
 去年の夏以来深海棲艦の攻撃を受けていないからね」
「俺達が頑張って守っているって証さ」
「ちょっと強引ですけど…でもそう思うと私達が頑張っているんだって気持ちになれて更に頑張れますね」
「ところでさっきからあえて触れないようにしていたんだけどさ……」
「うん……」

俺はディスプレイの近くで座りながら眠っている少女を見た。
可愛らしい寝顔を見せている少女は暁。こう見えても駆逐艦の艦娘である。

「暁ちゃんったら『一人前のレディーなんだから夜も平気』って言っていたのに……」
「夜戦の時はちゃんと起きているのに……どんな艦娘も戦いの場で眠るなんてことをした子は一人もいないわよ」
「どんな艦娘でもねえ……戦いの場では決して眠ることはないというのは艦娘の性質なのかもしれないな」
「そうかもしれないわね。で、暁ちゃんはどうするの?」
「部屋に連れていくしかないだろう」

そう言って俺は暁を起こさないように背負った。

「中々手がかかるな」
「でもだからこそ愛おしいって気持ちになるのかもしれませんね。
 まだ子供を持った事がない私達にはわかりかねる事ですけど…」
「そういえばさ、あなた達三人を見ていると何だか親子みたいに見えるわね」
「夕張もそう言うか」
「私と暁ちゃんはどことなく似ているって結構みんな言いますよね」
「大鯨ちゃんならどんな子にだって優しく平等に愛情を注げるわ」
「そうだよな…さて、夜も遅いしそろそろお開きにするか」

俺はこれ以上起きていると今後の活動に影響が出ると思い、眠ることにした。


「暁ちゃんもですけど響ちゃんも雷ちゃんも電ちゃんも、みんなよく寝てますね」

俺達は寝ている暁を第六駆逐隊の部屋に連れていった。
先に寝ていた三人を起こさないように静かに部屋に入り、
暁を静かにベッドに寝かせて布団をかけた。
少しだけ不安だったが何とか誰も起こさずに済んだみたいだ。

「だけどみんな戦いとなると幼さを感じさせない顔になりますよ」
「それが彼女達にとっていいことなのか悪いことなのか、俺にはわからない。
 だけど、俺達が頑張らなきゃ沢山の子供達から無邪気な顔が消えてしまう。
 その為には何としても…」
「う…ん……」
「しまった!?」

つい熱くなって声を大きくしてしまい起こしそうになった。
俺達は起こさぬようそそくさと部屋から出ていった。


「危なかったですね」
「あの子達の部屋で喋る必要なかったな」
「でもあの子達の安らかな寝顔がとってもかわいくて……
 それを見ていたら…子供がほしくなっちゃいました……
 でも今は子供なんて作っていられない……
 あ、いえ、別に作ってもいいんでしょうけど、
 でも艦隊司令官であるあなたの重荷になりそうな気がしてしまって……」
「子供の存在が足枷となるか、それとも未来を守る為の活力となるか……
 子供を欲しいという気持ちが司令官としての生き方を惑わせるか、
 あるいは未来を切り開こうとする意思となるのか……俺にはわからない。
 なら!そうやって迷わないようにすればいい。
 安心して子供を産める世界、それを作る為に頑張るんだ」
「頑張ってくださいね。私も全力で支えます。
 そう、一年前のあの時思ったように…いえ、それ以上に!」

一年前のこの日、俺と彼女は提督と大鯨として出会ったのだ。

「……あの時はまさかこうなるなんて全く思わなかったよ」
「それが出会って半年も経たずに結婚したなんて……
 でも私は少しも後悔していませんよ。
 あなたがいたから楽しかった……あなたがいたからこそ頑張れたんですから」
「俺も同じ気持ちだ。これからもよろしくな」
「ええ、これからも…」

これからも幸せな日々は続くだろう。互いが互いを想い合うから。

「不束者ですが、よろしくお願いします」

―終―


+ 後書き
以上です
彼女は見てすぐに心に物凄く響いたくらいの存在でした
それはもうしばらくの間仕事中でも忘れることができないくらいでした
それでは


これが気に入ったら……\(`・ω・´)ゞビシッ!! と/

最終更新:2017年02月26日 23:22