+ | 召喚詠唱 |
たちまち黒ぐろとした雷雲が太陽に覆いかぶさった。地平線にならぶ雲は化け物じみた姿
を取り、その頭部と四肢はどことなく種馬の姿に似ていた。恐ろしくも後脚で立ちあがると、
消えた燠のような太陽を踏みにじり、ティーターン族の曲馬場にいるかのように走りまわっ
て、その姿を大きくしながらウッマオスのほうにやってきた。
「ゾトゥッラよ、わたしが深淵の王タモゴルゴスの狩りたてる馬を招喚したことを知るがよ
い。かつておまえの乗用馬がナルトスという物乞いの少年を踏みつぶしたように、狩りたて
る馬はおまえの帝国を踏みつぶすであろう。わたし、ナミッラが、その少年であったことを
知るがよい」