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ひとりじゃなくて




「・・・・・やっぱり。気のせいじゃないんだろうなぁ」




ぽつりと呟き、頭をかきながら重たい腰をあげる。
ただ、気ままに一人でダンジョンにきていたのだけど。



彼の辺りにあるものといえば、暗くじめじめとした湿った空気と。
身体にまとわりつく、目に見えない位置で機会を伺うモンスター達の殺気と。


「リン姉~っ! そっちはさっき通った道だよっ」

「え?! そそそ、そうだっけ??!」


それと――聞き覚えのある明るい声だった。





休んでいた位置から視線を巡らせれば、自分が歩いてきた方向、
階段のある辺りから声が響いている気がする。

身じろぎせずじっとその場から見ていると、声は段々と近くなり、そして――



「――っ?! あっ! ジル兄はっけ~~~~~ん!!!」


勢い込んで階段を上がってきたのは、よく見知った二つの顔。
明るい赤毛の少女の嬉しそうな声が自分の耳に届き、
次いで一緒にいる銀髪の女性の笑顔が目に飛び込んできた。


「やっと見つけたよ~ジル兄~?!!」

「誰も探してくれなんて言ってない」

「あわわっど~してそう言うかなジル兄は~」


自分の事を何故か兄と慕う、同じギルドのメンバー。
リンファとマルーが駆け寄ってくる。

実際誰も探してくれなどとは言ってないのだが。


「大体、どうしてリンファとマルーがここにいるんだよっ!?」


もっともな疑問を口に出す。
しかし二人はしれっとしたもので、


「いや、だってジル兄ここって聞いたから・・」

「ここ来た事なかったし、暇だったし?」

もっともな答えを返してくれた。
どうせマルーが言い出したのだろうと推測する。
この少女は後先考えずに行動するから――


「・・・・・・・・・・・・。」

「な、なんでそんな顔するかな」

「ここが何処か、わかってて言ってるなら何も言わない」


赤毛の少女――マルーがばつが悪そうに少しだけ狼狽えた。
自分の力量以上の狩場でも、楽しければ随分と無茶をしてくれる。
長い髪を止めていたバレッタは、最早壊れて意味をなさず、
ぼさぼさになった髪に擦り傷だらけの手や足や顔。


(リンファいなかったら途中で死んでたんじゃないか?)


自分ひとりでも手に余る場所なのに、
余計な荷物も増えてどうしようかと唸っていると。


「まぁほら、ジル兄はかよわい乙女を守ってくれるから♪」

「あ、なるほど」


「こらこら! そこは『なるほど』じゃないだろ~っ?!」


リンファの台詞に納得顔でポンと手をうつマルーの口を
思い切り両手でひっぱった。


「い、いひゃい~~~~っ」

「あやや、ジル兄は短気だね~」

「あのなぁリンファ、何処の世界に・・・・」


間の抜けた声をだすマルーの口をひっぱりながら、
視線は彼女が軽々ともっている剣にうつす。


「何処の世界に、だ。こんなクソ重たい両手剣をぶんまわす『かよわい』乙女
ってのがいるのか聞かせてもらいたいんだが?」


剣だけでなく着ている鎧もどれだけ重量があるのか見当もつかない。
歩くたびにガチャガチャと音をたてて、
モンスターの格好の標的になったのも想像にかたくない。


その台詞に怪力娘が微笑んだ。




「ここにいるれひょ♪」



予想していた答えとはいえ・・・・


「・・・この口か? この口が言うのか??」

「ふぇぇぇぇぇ~らったらりんえぇは~??」


にっこりと笑顔をはりつけながら、つまんだ手に力をこめる。
それから質問に答えてやった。


「あのなぁ、マルー」


軽く首をかしげて、優しく肩に手などおきながら。


「リンファはそもそも女じゃないだろ?」

「ななな?! なんですと?!!!」


横でリンファがショックを受けた顔をしているが気づかないふりをする。
「ひどいわ!」とかなんとか、表面上は色々言っているが――

マルーとは別の意味で『かよわい』とは思えないのは、
職業からだろうか?


暗殺者ゆえか、隙のない体捌きや殺気に
時々、恐怖すら感じる時がある。

まぁ、それはモンスター相手にだし、


「うわあぁぁぁん~ジル兄あとで泣かせちゃる~!!」

「ふっ。返り討ちにしますが何か?」


普段は全く、からかいがいのある友人としか思えないけれど。




最終更新:2009年01月25日 21:21